第六十九話 マイホームカスタマイズ(2)
「コケェッ、ニオさま、こちらが集めた資材ですぉ」
「あ、コッコちゃんの口癖は気にしないでください~。このニワトリの被り物が呪われてて~、勝手に出ちゃうみたいなんです~」
「そ、そうか……」
ミーちゃんのほんわかした喋りではいまいち伝わらないけど、それはバッドステータスやデバフが付いたり装備そのものが外せなかったりと、実際はもっと危機感を持ってもいいはずのものだ。
だからあのやばい外見なんだろうけど、それもどうも当の本人は気にしている様子がないので、個性のひとつとして捉えればいいか……。
「とりあえず、ヒワとツキウミは物件を確認していて構わんぞ」
「あ、ツキちゃんお願いねぇ」
「うん、先に入ってるよぉ」
「ツキウミしゃんにはアイリーンが付き添うのよ」
「ああ、頼む。ヒワはよいのか?」
「ヒワはぁ、同席して攻略サイトの情報をまとめることにしますぅ。個人個人にぃ、いちいちニオさまが教えるのも大変だと思うのでぇ」
「それは助かる。何か……」
「打算なんてないですよぉ、ただの親切心ですぅ。くふふ♪」
ほ、本当にそれだけならいいんですが……!
引き渡す物件に入っていくツキウミとアイリーンを見送り、俺とヒワはまだ更地でしかない隣家の敷地内に移動する。
「さて本題に入ろうか。建築の際、どこでつまずいておるのだ?」
「えっと、まずはマイホームカスタマイズを開いて~、資材を配置しようとするとエラーが出てしまって~、何もできないんです~」
つ、つまり、一番最初でつまずいていた……。
だけど、これなら問題を細かく精査しなくて済む……。
「そなたら、チュートリアルをすっ飛ばしたであろう……?」
「え、えへへ~」
「笑うて誤魔化すでない」
「コケッ、システムは実践あるのみでふ」
「それもひとつのやり方ではあるのだが……。まあよい、工程がひとつ抜けておるだけだからな。まずは部材合成タブに切り替えよ」
「こうですか~?」
「所持する資材に応じて作れるモジュールが選択できるであろう?」
「あ、ほんとだ~。いろいろ選べるみたいです~」
「マイホームカスタマイズで配置するには、資材をそのままでなく、まずはそうしてモジュール化しなければならないのだ」
「コケェッ! ニオさまに手取り足取り、くんずほぐれつ教えてもらってる状況は、このまま昇天してもやむをえないですなぁっ! ハァッハァッ!」
「……」
こ、こいつは何が見えているんだ……?
説明は口頭でしかしていないんだけど……!?
もしや、≪幻覚≫のデバフにでもかかっているのでは……。
「えっと、もじゅーる?がひとつできました~」
「よし、マイホームカスタマイズに戻り、敷地内の好きな場所に配置してみよ。再配置はあとでいくらでもできるため、細かいことは気にせずともよい」
「はい~。えっと、こうして~、とりあえずここかな~」
ミーちゃんはマイホームカスタマイズを弄り、作ったばかりの“家屋モジュール”を配置すると、敷地内にも実サイズの建物がどこからともなく現れた。
「わ、できた~。うれし~」
「コケェッ! 念願が叶ったですな~」
キャッキャと手を取り合って喜ぶ美少女神官とガチムチニワトリ頭……。
絵面はやばいけど、仕草はしっかりと女性だから不思議な光景だ……。
「そなたらの念願はマイホームか。よかったではないか」
「はい~。みんなでお金を出し合って、狭くても土地を購入できたので、一生懸命にがんばったかいがありました~。えへへ~」
正式サービスの開始から現実ではまだ半月と経っていないいま、個人では限界があるところを皆で手分けしたというわけか。
稼いでいるだろう和牛さんでさえ店舗はまだにもかかわらず、彼女たちはよほどがんばったのか、俺が把握する限り土地所有の第一号だ。
「あ、でもこれ、たぶん資材が足りませんね~。集めないと~」
「コケェッ! そのためのコッコですので、がんばりますぉ」
「コッコちゃん、いつも頼りにしてる~」
その外見はどこからどう見てもやばいけど、仲間たちと共に念願を叶えるためにあの姿なのだとしたら、その心意気はなんとも尊いな……。
外見でも初期ステータスが増減するから、インベントリ重量増、運搬系能力の拡充などなど、彼女のガチムチ姿だからこそこなせることは多い。
最初こそやべー奴だなんて思ってごめん……。
「デュフゥッ! それで、ニオさまグッズで埋め尽くす部屋はどこにしますぉ? 早く朝から晩まで埋もれて堪能したいですコケェッ!」
「……」
前言てっかーーーーーーいっ!!
そっちが本来の目的ならやっぱりやべー奴だ!!
「えへへ~、地下なら誰にもバレないかな~? とりあえず、ニオさまが踏んだ所の土を集めてニオさまフィギュアでも作ろっか~」
「コケェッ!? さっすがミーたそ、名案ですな~! コケ~ッ!」
お ま え も か。
本人たちはコソコソ内緒話をしているつもりらしいけど、聴覚まで拡張しているニオの体では、しっかりと聞こえていた。
どうして、俺のもとへと集まる人材は変態ばかりなんだ……。
***
「くっふふっ♪ あ~おもしろかったぁ~」
「他人ごとだと思ってからに……」
「だって他人ごとですからぁ」
「ぐぅっ!?」
ミーちゃんたちが一階部分を構築したのを見届けたあと、資材を集めに行くという彼女たちと別れてヒワとツキウミの家に入った。
とりあえず置かれたダイニングテーブルの椅子に座り、お茶をご馳走になっているも、やはり室内は単身者用の物件と言えるほどに狭い。
姉弟だけなら十分と言われれば、まあそうなのかもしれないけど……。
「ニオさまはぁ、まだここを選んだ理由が気になるみたいですねぇ」
「えっ、い、いや、狭いなと思うただけで……特には……」
「くふふっ♪ 実はここぉ、狭いのに浴室付きなんですよぉ」
「なん……だと……!?」
「ねぇ、大事でしょう? ギルドにはなぜか入浴施設がありますけどぉ、ゆっくりしたいときはやっぱり家でないとぉ」
「そ、それはそうだが……な、なぜ、詰め寄ってくるのだ?」
「それはぁ、ニオさまをおもてなしするのならぁ、しっかりとぉ、しっぽりとぉ、この体で直接ご奉仕をしませんとねぇ」
「ひぃっ!?」
「いまツキちゃんが浴室を整えてるのでぇ、もう少しこのままぁ……」
「よっ、よよよっ、余は急用を思い出したっ! ここっ、ここいらでお暇させてもらうっ! アイリーンッ、いっ、行くぞーーーーっ!」
そんなわけで、俺は女豹に食われる前に脱兎のごとく逃げ出した……。
「くふふっ♪ ニオさまってぇ、ほーんとおもしろいっ♪」




