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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第三章 初任務編
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第五十六話 ―情報共有も修羅の時間―

第五十六話目です。


盗賊達の捕縛と騎士への引き渡しを終えた一同のお話です。

情報共有も仕事のうちです!

 捕らえた盗賊達を騎士達に受け渡した後、その後もガーナの説教が続き、結局あたしは"羅刹(おっちゃん)"から男の使った薬のことを聞くこともできないまま、家に戻って来ていた。

 今は家の居間にいて、ここにはあたしとガーナ、チアーラさん、モルガナ姉ちゃん、カイナート兄ちゃん、ブラッドのおっちゃん、そしてロザリアさんが集まっている。

 理由は情報の共有のため。


「まずはアーシスとブラッドの報告からお願い」

「わかった」「おう」


 チアーラさんにそう言われ、あたしとおっちゃんは倉庫で起こったことを報告した。

 ひとりを除いて全ての盗賊は捕えて騎士に渡したこと、盗賊のひとりが何かの薬物によって筋肉が人型になったような姿になり力も速度も尋常じゃない程に上がった事、おっちゃんが首を切り落として殺したこと。


「それで、あの男が使った薬って何だったの?

おっちゃんは知ってるみたいだったけど……」


 ようやく薬のことが聞けると思ってそう言うと、急に――シンッ――と皆黙った。

 え、あたし何か変な事言った……?

 ――と思ったら、チアーラさんから物凄い殺気を感じた。


「ねぇブラッド……私はアーシスに、あなたから伝えるように言っていたと思うんだけど……?」

「そ、それは……」


 いつも浮かべている笑顔と変わらないぶん威圧感が半端ない、ガーナなんて一瞬であたしの首の後ろに隠れてるし。

 倉庫で半端ない程の殺気を放っていたおっちゃんが怯んでる……。


「忘れてたのね……?

明日、覚えてなさい」


 チアーラさんがそう言うと、ブラッドのおっちゃんは無言で首を縦に振っていた。

 多分明日チアーラさんにぶっ飛ばされるんだろうなぁ、おっちゃん生きて……


「はぁ、ブラッドに任せて説明していなかった私も悪かったわね……」


 チアーラさんはため息をついてそう言うと、話を続けた。


「今回の本来の目的は盗賊達の確保だったのだけど、それとは別に調べていることがあったのよ」

「調べてること?」

「まずはあなた達が見た薬」


 薬の方はあたしも実際にこの目で見たから、皆が調べるのも分かる。

 あたしやおっちゃんじゃなくて普通の人だったら、軽く殴られただけで死んでる程の力だったし。


「実はその薬の詳しいことは今のところ分かっていないの。その薬が回収されたことが無いから何も分析ができていないのよ。分かっているのは、あなたが見たように筋肉が膨張して自我を失って暴れ回るようになる、危険な薬ということだけ」


 あの男が使ったのは、チアーラさん達でも詳細を知らない、凶悪な薬物だったらしい。今回も回収できなかったから、情報は増えなかったっていう結果になる。なんでそんなことを話し忘れるかなこのオヤジは……。

 ん、そういえばチアーラさんは「まず」って言ってたけど、あの薬以外にも何かあるんだろう。


「そしてもう一つは"キマイラ"という、複数の魔物の特徴を持った魔物よ」

「複数の……それって――」

「ええ、本来なら存在しないはずの魔物だけれど、それが現れ始めたのよ。

突然変異か上位の個体が他の魔物を取り込んで発生したか……色々可能性は考えられるけれど、"キマイラ"の発生の原因が全く分かっていないわ……」


 そこまで話してチアーラさんは「まぁ、よくて上級程度なのが救いね……」と付け加えた。

 まさかそんな魔物が存在してたなんて知らなかった――あれ、それだとあたしが魔物の森に行ったのって結構危なかったんじゃ……?

 いや、さすがのチアーラさんでもそんな危険があるのに一人で行かせるわけはないはずだ、そうなると――


「あの薬は他国の犯罪組織や暴漢が持っていたもので、"キマイラ"も他国付近の森の中で確認されていた物よ。

この国周辺では確認されていなかったから油断していたわね、"狐"達に警戒を強めるように言わないと……特に薬はこの国に渡る前に調べておきたかったけれど、持ち込まれてしまったのは仕方ないわね……」


 ということらしい、これはあたしの予想通りだ。

 ここまで言われれば、皆が調べてる理由もあたしにも分かる。


「それで、皆はその薬の出所と、"キマイラ"の発生の原因を調べてるってことなんだね」

「そういうことよ」


 あたしがため息をつきながらおっちゃんを見ると、気まずそうな表情で目を泳がせていた。

 いや本当、何でこんな大事なこと教えるの忘るのかなこのオヤジ……過ぎたことはもういいや、結果的にとはいえあたしも殆ど無傷だし。


「それともうひとつ、厄介なものが見つかったわ。ロザリア」

「かしこまりましたわ」


 リザリアさんはチアーラさんに答えながら箱のようなものを机の上に置いた。

 すると、ガーナは身体を引いて「あれなんか嫌だわ、気持ち悪い……」と言いながら嫌がっている素振りを見せた――倉庫で薬を見た時とはまた違う。

 あの時は警戒っていう印象が大きかったけど、今回のはガーナの言葉からも分かるように嫌悪とか不快って感じがする。

 今はあたしの顔にくっつきながら顔を覗かせている――可愛い――ってそんな事考えている場合じゃなかった。


「これは多分だけれど、魔物を強制的に従わせる魔道具よ」

「「「「なっ……!?」」」」


 ロザリアさんとチアーラさん以外の皆は驚いたような声を上げた――もちろんあたしも。

 そりゃ驚きもする。だってそんな物、見たことも聞いたこともないんだから。

 そして、ガーナが「気持ち悪い」と言った意味も分かった――さっき可愛いと思ったのは内緒にしておこう。

驚いているあたし達を前にチアーラさんは言葉を続けた。

凶悪な薬にキマイラ、そして謎の魔道具。

一気に良く分からんものが三つも出てきてもう大変。

"修羅"は他国の情報も持っていますが、その実力を持ってしても詳細が分からないものです。


そしてカイナートの予想通り話すのを忘れていたブラッド。

アーシスもオヤジとか口が悪くなっております。

因みにこの口が悪くなるのはブラッドとの訓練の影響です。


★次話は01/05投稿予定です。

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