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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第二章 試験編
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第二十一話 ―VS魔熊―

第二十一話目です。


今話はアーシス&白蛇 VS 魔熊のお話です。

――グルァ!


「左側!次は上から来るわよ!」

「了っ解…!」


白蛇の声を聞いてあたしは左側に意識を向ける。

魔熊から振り下ろしてくる爪を棍で受け流す。

左からの爪の振り下ろしの対処をしたことで、魔熊に対して横を向いている状態になってしまった。


「次は背中から来るわよ!」

「了解!――【結界・強】!」


背中から迫る魔熊の爪を強の強度の結界で防ぐ。

念のため振り向いて棍で防御をしていたが、上級の魔熊でも【結界・強】でなら問題ないみたいだ。

あたしが言うのはおかしいかもしれないけど、二人とも命がかかっているだけあって、即興でも連携がなかなか上手くいっている。


というかこの白蛇の反応速度が速い、それで助かってるから文句とかは何もないんだけどね。

魔熊は今度は、あたしの足元を狙って爪を横薙ぎに振るってくる。


「ふっ!」


あたしは棍を地面に突き立てて飛び上がり、身体を支える。

棍は魔熊の横に振るわれた爪で弾かれ、あたしの身体は支えを失う。


「せぇい…!」


魔熊の爪に弾かれた勢いで棍だけでなく、あたしの身体も少し回転する。

あたしは身体をひねって、その回転の力を強める。


「右の爪来るわよ!!」

「想定内!――【結界・強】!」


魔熊の爪が向かう先に結界を張り、爪を防ぐ。

それと同時に結界に脚をかけて、身体の回転を強める。


「ふっ――っらぁ!!!」


あたしは回転の力を乗せて、上から魔熊の頭に棍を叩き落す。

脳天への一撃に一瞬ひるんだ隙に、今度は棍を回転させて下から魔熊の顎に叩きこむ。


――グルァァァァ!!!


「流石に打撃じゃ対して効いてないみたいだね…!」


来るか!と思ったが何故か魔熊は後ろに飛び退いた。

と思ったら木の間を通り抜けて素早く走り始めた。

逃げた――とは考えられない。

あたしは魔熊の攻撃を防げているが、魔熊も棍での打撃では大したダメージにはなっていないんだから。


「やばい…見失った!」


魔熊が素早くあたしの死角に入り込んだことで、あたしは魔熊の姿を見失ってしまった。

音で何となくの方向は分かるが、音だけでは反応しきれない…


「後ろよ!」


後ろを振り返ると、魔熊は爪を振り下ろそうとしているところだった。


「――っぶな!?」


ギリギリのところで棍で防ぐが、真正面から受け止めてしまったことで身体中に衝撃が走る。

弾いた勢いのまま棍を回転させて胴体に棍での打撃を叩き込む。

しかしやはり魔熊に効いた様子はない。


(やっぱり打撃じゃダメか…

 かなり危険だけど、やるしかないな…)


あたしは全力で魔熊の胴を蹴りつけ、後ろに飛び退き距離をとる。

そして棍を地面に突き刺して、腰に挿した二本の短剣を抜く。


(落ち着け、集中しろ…)


棍では爪を弾くことができたが、刃の短い短剣ではそうもいかない。

棍よりも殺傷性は高いが、受け止めたり受け流そうとしようものなら、逆に短剣ごとこっちの腕が持っていかれる。

つまり、正確に全て避けて切りつけるしかない。


(捨て身とまではいかないけど、我ながら危険なことしようとしてるなぁ…)


あたしが短剣を抜いたところで、魔熊は素早く接近してくる。

魔熊が上から振り下ろす爪を身体を反らして避け――


(痛っ…!)


ギリギリで避けようとしすぎて、魔熊の爪が頬を掠った…!

掠ったとはいえ傷は浅い。痛みを無視して腕を短剣で斬りつける。


「かったいなぁ…」


しかし魔熊は中級の魔猪とは比べ物にならない程に頑丈な皮膚で、何とか切り傷を与えられる程度だった。

しかし、一撃では大して効かなくても傷をつけていけば、魔熊とはいえどダメージは蓄積されるはずだ。


(さすがにちょっとキツイなぁ…)


魔熊はひるむことなく、次々と爪を振り下ろしてくる。

白蛇が逐一魔熊の動きを教えてくれるから、何とか避けられる。

反応しきれず、体中に傷が増えていくが、少しずつ確実に斬りつけていく。


(この白蛇がいなかったら何度死んでることか…!)


白蛇のアシストのおかげで、軽い切り傷になる程度で済んでいる状態だ。

顔に腕にお腹に脚――致命傷にはならないけど、微妙に深いから傷跡残りそうだなぁ…

相当数の切り傷を魔熊に負わせたが、あちらもまだまだ元気そうだ。


「っ――またぁ!?」


魔熊は再び後ろに飛び退き、あたしから距離をとった。

そして先ほどと同じように、木々の間を通り抜けながらあたしの周りを走りだした。


「あぁ、やっぱり追えない…!」


一度見た動きなのでなんとか目で追おうとしたが、やはり見失ってしまった。

素早いうえに、木々を使って視界を遮るのが上手すぎる。

あたしが思っている以上に知能が高いのか、本能的な動きなのか…


(仕方無い、魔熊の動きは白蛇に任せてあたしは落ち着こう…

 魔熊を仕留めるならああするしかないかなぁ…)


あたしも見える範囲で警戒をしているが、死角は白蛇に任せるしかない。

先ほどまでの動きを見ての予想だけど、また後ろから来ると思うんだよね。

上級の魔物なだけに知能は高いが、フェイントとかを入れる知能は無いようだ。

フェイントなんて入れられたら流石にただの魔物の枠に収まらないレベルになるし、とっくに死んでる…


「後ろよ!」

「やっぱりね!」


あたしは直ぐに振り返り、魔熊を倒すための行動を始める。


(これでダメだったら正直もう後がないな…!)

決着つかんかった...

お互いに体中傷がついてますが、お互いに致命傷にはなっていない状態です。

いや、巨体の熊の爪でちょっと切り傷つく程度でもおかしいけどね!?


さて、アーシスはなにやら魔熊を倒す方法を思いついたようですが、うまくいくのでしょうか。


★次話は07/10投稿予定です。

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