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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第二章 試験編
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第十九話 ―響く悲鳴―

第十九話目です。


引き続き魔物の森でのサバイバルの話です。

二日目以降は一日目の最後に決めたように、深い場所へ行って中級の魔物と戦い、暗くなったら浅い場所に戻って来て休むを繰り返した。


それを続けて現在は六日目の昼間、特に怪我をすることもなく魔物を倒せている。

今日は五日目までに言っていたところよりも少し奥に行ってみることにする。

もちろんこれまで以上に警戒しながら。


「奥に行く度に暗くなってくなぁ…

 それに、なんとなくヤバい感じが――!?」


ガサッ――と音がした。

音がした方を見てみると中級の魔猪が出てくるところだった。

とはいえ動きは下級の魔猪とは変わらない。


「ふっ!」


魔猪の突進を避けて、すれ違いざまに短剣を抜き魔猪の首を切り上げる。

魔猪はそのまま絶命して、地面を力なく滑っていく。


「うん、最低限の動きで避けて同時に倒す、っていうやり方が良いかもしれないなぁ」


ガサガサガサッ――

今度は頭上から魔猿(まえん)が遅いかかってくるところだった。


「3匹、しかも全部中級か…!」


魔猿は魔猪程力はないが、前足を起用に使う猿の魔物。

正直魔猪に比べて戦いづらい――が、何度も戦っているのでさすがに対処も慣れたものだ。


「【結界・中】!」


まずは先に近づいてくる魔猿の爪を、一体目は短剣で、二体目は【結界・中】で防ぐ。

爪を弾かれて体勢の崩れた二体の魔猿の腹を蹴って、強制的に距離をとらせる。


「はっ!」


最後の一体の爪も右手の短剣で弾き、左手の短剣で首を斬りつける。

魔猿はそのまま力なく地面に落下する。


「【結界・中】――ふっ!せいっ!」


先ほど蹴り飛ばした二体の魔猿の爪を同じように、短剣と結界で防ぐ。

魔物は階級が上がる程知能は上がるが、中級では一旦見た技に対処できるほどの知能はない。

先ほどの魔猿を倒した時と同じように短剣で確実に仕留める。


「昨日までより奥に来てるのに、数が少ない…?」


もしかしたら上級の魔物が近くいるのかもしれない。

今は近づいてくる魔物はいないので、警戒はしながらも一息つける。

と思ったところで――


『きゃあぁぁぁぁぁ!誰か助けてぇぇぇぇぇ!!!!』


――どこからか女性、というか少女のような声が聞こえてきた。


「なんでこんなところに人が…!?」


あたしは真っ先に声のする方向に駆けだした。

声の主は魔物に襲われているところだろう、間に合えば良いけど、間に合わなければ…

そんな考えがぐるぐると頭を巡った。



声のする場所にたどり着くと、そこには木を倒そうとしている巨大な魔熊(まぐ)が目に入った。


『ちょっ、ゆ、揺らさないでぇ!!!』


(良かったまだ無事だ…!)


例の声は魔熊が倒そうとしている木の上から聞こえ、声の主はどうやらあの木の上にいるようだ。

声を聞く限り怪我とかもなさそうだ。

怪我をしていたらあんなに騒げるはずないだろうしね。


「――フッ」


身体中の筋肉や関節を同時に動かし、最速最短距離で魔熊に接近した。

あたしの3~4倍はある巨大な魔熊はただ蹴るだけでは吹き飛ばせない。


「こんな巨体でもこれなら少しは距離を取れるでしょ…!

 っらぁ…!!」


身体中の筋肉や関節を同時に動かすことで、攻撃に乗る力は増幅させることができる。

もちろん、本人の筋力や技量にもよるけど。

常にできれば良いのだがあたしは余裕のある時にしかできない。

上手くできれば力を増幅させられるけど、少しでもタイミングを間違えると腕が爆散――とまではいかないが肉離れや、酷いと骨折する可能性がある。


「兄ちゃんは常にできるらしいけど…

 まあ、要は慣れだとか言ってたし、あたしもそのうちできるようになるかな…」


そんなことは置いておいて、全力で蹴ったおかげで巨体の魔熊も数メートルは吹き飛んだようだ。

この隙にあたしは鉄糸を使って、木の上に飛びあがる。


「えっ…?」


あたしが木の上に行くと、そこに人はいなかった。

そこにいたのは――


「小さい白蛇…?」

「ちょっちょっと!あいつが戻って早くしないとあいつが戻ってくるわよ!」

「は…?」


白蛇が喋った…先ほど聞いた悲鳴と同じ声だ。

蛇は喋らないはず…なんで蛇が喋ってるの?もしかして幻覚でも見てる…?

いやでも、魔物は魔力を持っているけど魔法は使えない。じゃあこれは現実?


「何ぼーっとしてるの!早く私を連れて逃げてぇ!」

「はっ…!?」


白蛇の叫びを聞いてあたしは我にかえった。

何故この白蛇が喋ってるかは後だ。

まずは魔熊から離れて安全を確保しないと…!


あたしが呆然としているうちに先ほど蹴り飛ばした魔熊が木の下に戻ってきていた。

今いる木は折れかけていて、次の魔熊の一撃で折れるだろう。

あたしはとりあえず白蛇を首に巻き、鉄糸を他の木の枝に伸ばした。

シ、シロヘビガシャベッター!?

そらアーシスじゃなくても思考停止するわ。


アーシスの身長は155くらいでその3、4倍の大きさです。

さてこの魔熊の階級は殿レベルなのか。


★次話は07/01投稿予定です。

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