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 明日は久しぶりにリーシャと魔法の練習をすることになっている。

 思いっきり魔法が使えるように街の外に出ると聞いているので、せっせとお弁当を作っている。


「おにぎりとサンドイッチ、あとは味付けしたお肉を焼いたのと卵焼き。海苔の佃煮とポテトを和えた物と…」


 メニューを決めて、芽衣はどんどん料理を作っていく。


「作りすぎたら後日食べてもいいし」


 沢山作っても、どれがリーシャの口に合うかどうか分からないので、ひたすら料理をし、食べやすい量をシリコンカップに入れたりして、どんどんタッパー型保存容器に入れていく。


「ふぅ…なんとか出来た」


 全ての料理を保存容器に入れ終え、一息吐く。

 あとはレジャーシートを用意して、飲み物と料理と共にマジックバッグにしまう。


「これで準備万端」


 そんなに遠くへ行くわけではないので、これだけあれば何とかなるだろう。


「リーシャさんも気に入ってくれるといいけど」


 普段から良い物を食べているであろう貴族のリーシャの口に合うかドキドキする。


「よし。明日に備えて、今日は少し早く寝よう」


 芽衣は風呂に入り、いつもより早めにベッドに潜り込んだ。




 朝は簡単にインスタントスープとパンとサラダで食事をし、リーシャとの待ち合わせ場所である門付近へと移動する。

 相変わらず王都へ出入りする人は多く、今も沢山の人が並んでいる。


「ここら辺で待っていれば分かるかな?」


 人は多いが、リーシャは目立つのですぐ分かると思う。

 そうやってリーシャが来るのを待っていると、芽衣の近くに一台の馬車が止まった。


「ん?」


 もしかしてこの馬車の人も待ち合わせをしているのかもしれない。


(邪魔にならないように…)


 そっと場所を変えようとしていると、突然馬車のドアが開き、中からリーシャが出てきた。


「おはようメイちゃん」


「お、おはようございます」


 まさか馬車で登場するとは思わなくて、芽衣は驚いてしまう。

 芽衣が驚いていることを感じたのか、リーシャは事情を説明してくれた。


「今日はソマリも一緒に行きたいって云うから、急遽馬車を用意したんだ。ささ、乗って」


「はい。お邪魔します」


 知りたかったことを教えてもらい、リーシャに促されて馬車へと乗り込むと、早速ソマリに声をかけられた。


「おはようメイちゃん」


「おはようございます、ソマリさん」


「今日はリーシャがメイちゃんと外で魔法の練習をするって云うじゃない? 私もメイちゃんに会いたいから付いてきちゃった」


 芽衣と会えて嬉しいらしく、ニコニコと笑っているソマリの隣にはメイドが一人座っていた。


「おはようございますメイ様」


「イルナさんもおはようございます」


 屋敷でお世話になったメイドのイルナとも挨拶を交わす。


「それじゃ出発しよう」


 挨拶を済ませて全員が座ったところで、リーシャが御者に声をかけると馬車がゆっくりと動き出す。

 手続きをして無事門の外に出ると少しスピードが上がり、その車内でリーシャが今日の予定を話してくる。


「今日は魔物と遭遇したら、魔物相手に攻撃魔法の実践もしたいと思っているんだ」


「魔物ですか?」


 街の外に行けば魔物と遭遇することもあると聞いてはいるが、実際にまだ魔物と会ったことも戦ったこともない。

 魔物と遭遇した時にちゃんと戦えるのか不安になる芽衣に、リーシャは「大丈夫だよ」と声をかけてきた。


「今日行くところは弱い魔物しか居ない草原だし、何かあれば僕が倒すから」


 魔法が得意なリーシャがいるのだから大丈夫。そう云い聞かせて芽衣は頷いた。


「はい。よろしくお願いします」




 王都を出て馬車で20分。

 街道から充分逸れた目的地の草原に着くと、イルナは早速場所を確保するため土魔法を使って地面を平にする。固めた地面の上に敷物もなしに座ると聞いたので、ソマリたちの服が汚れないためにもレジャーシートを取り出し、イルナに「良かったらこのシートを使って下さい」と声をかけた。


「これは?」


「これはレジャーシートといって、敷物として使います。このシートは汚れても水で洗ったりして繰り返し使えるんです」


「便利ですね」


「はい。けれど弱点があって…ペラペラなので、四隅に重石をしないと風で飛ばされちゃうので気をつけて下さい」


 芽衣が云うとイルナは頷いた。


「分かりました。飛ばされないよう気をつけます」


 真剣に頷いたイルナは、早速大きめの石を用意していた。

 ソマリたちの待機スペースが出来たところで、リーシャと共に待機スペースからかなり離れた場所へ移動する。


「ここら辺でいいかな」


 草しか生えていない辺りを見回してリーシャが云う。


「それじゃ今日は魔力の持続力を見るのと、攻撃魔法の練習をやってみよう」


「はい」


 まずは魔力を身体に纏い、その状態を維持する。少しでも気を抜くと纏っている魔力が弱くなっていくので、維持するにはそれなりの気力が必要になる。

 暫らく芽衣の様子を見ていたリーシャは頷く。


「うん。だいぶ魔力を維持することが出来るようになったね」


 リーシャに褒められ、芽衣は笑う。


「それじゃそのまま攻撃魔法の練習をしよう」


「はい」


 必要最低限だと思われる生活魔法は覚えたが、攻撃魔法を使う必要はなさそうなので後回しにしていた。


「今メイちゃんが使えるのは火と水だよね? じゃあ威力のある火を強化していこう」


「はい」


 教えられたとおりに火をイメージして集中する。


(攻撃をするんだから、その場で相手を燃やすか、ボールみたいなのを飛ばして攻撃するか…)


 ゲームで使われているような魔法をイメージし、魔力が高まったところで何もないところへ魔法を放つ。


「えいっ!」


 芽衣がイメージしたのはその場にいる相手を燃やすことで、魔法を放った場所が焚き火のようにボッと燃えた。けれどその火はすぐに消えてしまう。


「初めてでこれっていうのは凄いね」


 しっかりと燃えた場所も確認したリーシャは、うんうんと頷いている。


「それじゃ次はもう少し長く燃やせるようにイメージして」


「はい」


 云われた通りにもう少し長く燃えるイメージをし、もう一度魔法を放つ。

 先程よりほんの少し長く燃えたので、成功と云えるだろう。


「いい調子だよ。次は火力を上げて…火を大きくするイメージで」


「はい」


 リーシャからどんどん次の指示が来る。時々失敗もするが、それでも短時間で魔法が成長していると思う。


「よしっ。それじゃここでお昼休憩をしよう」


 一生懸命云われたことをやり続け、気付いたら昼を少し過ぎていた。


「と、その前に…ポーションを飲んでおいた方がいいね」


 かなり魔法を放ったからか、身体も少し疲れているような気がする。リーシャに云われた通り、昼食の前だが魔力回復ポーションをしっかりと飲んだ。




7/19

タッパー型保存容器に変更

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