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10 リーシャ 視点

 芽衣が三人と話している頃、リーシャは王城へとやって来た。

 昨日城からの使いが来たということで、今日は雑用をさせられるのか…と落ち込んでいる。どうせだったら外で魔法の練習をしたい。新しい魔法陣の開発もしてみたい。それなのに色々と問題は山積みのようだ。

 落ち込みながら城の中に入り、そそくさと執務室で書類整理をする。


「はぁ…」


 山積みになっている書類を少しずつ処理し、途中で休憩をいれる。さっさと山積み書類を処理して、芽衣のことを王に報告しなければと思う。


「どう報告するか…」


 異世界から来た芽衣は、今までの人たちと同じように何らかの特殊スキルでその適性の職に就くのだと思っていた。

 だが芽衣のスキルは異世界の物を取り寄せるという、今まで見たことも聞いたこともない変わったものだった。今後そのことを知った者が芽衣を利用したり、悪意ある者に狙われたりする可能性もある。


「もしメイちゃんのスキルが各国に知られたら、厄介ごとが増えそうだ」


 今はリーシャが保護している状況だが、いずれ芽衣は自立するだろう。その時はここぞとばかりに芽衣が狙われる可能性は高くなる。芽衣のことを気に入っているソマリのためにも、何か起こる前に手を打たなくては…と思うが、いい案が浮かんでこない。

 思わず悩んでいると、部屋のドアが何の前触れもなくバンッと開いた。


「リーシャ、今日は相談があって呼んだはずなんだが何故来ない!」


 部屋に入ってきたのは、この国の王であるギストル・ユイオンだった。幼い頃からの友人ということで、度々王自ら休憩も兼ねてリーシャを訪ねてくる。

 突然の王の訪問にリーシャは溜め息を吐く。


「先に書類整理をしようと思ったんですよ。それに僕もあなたに話しておきたいことがあって…」


「うむ。では、ここで話すとするか」


 そう云ってギストルはドアを閉めると、ドカッとソファーに座った。その姿にリーシャは苦笑しつつも書類整理を止めてソファーに移動し、ギストルと向かい合う。


「まず俺の話からだ。隣国のポスラタが今年は不作らしく、もしかしたら難民が流れてくるかもしれない。そのため国境に探知の魔法陣を書いて欲しい」


「分かった」


 難民に混じって盗賊や犯罪者がユイオンに入ってくるのは避けたい。リーシャは頷く。


「出来れば早いうちにやってもらいたい」


「そうだね、明日にでも向かうよ」


「頼んだぞ」


 いつ難民が流れてきてもいいように、ユイオンの民を守るために早急に対処することにした。


「それで? そっちの話とは?」


 いずれは知られてしまうのだから…と思い、リーシャは芽衣のことを話す。


「実は昨日、森で異世界人に会った」


「!」


「その子は今僕の家で保護しているけど、どうやら今までの異世界人とは少し違うようなんだ」


「どう違うんだ?」


 ギストルは異世界人と聞いて、真剣な表情になった。

 異世界人はラスターニャに革命と恩恵をくれる。例えば痩せた大地に現れた異世界人は独自の方法で作物を育て、その結果多くの人々を飢えから救った。トイレに関しても知識をかりて作られたという。


「その特殊スキルで異世界の商品を取り寄せ出来るそうだ」


 リーシャの言葉にギストルは驚きのあまり大きな声を上げる。


「何と! それはまた珍しい」


「制限はあるそうだけど、今までとは違う珍しいスキルで、もしその子がうちから独立したらすぐに狙われるだろう」


「そんな珍しい品が簡単に手に入るのならそうなるな」


「今は僕がすぐ近くにいるから手を出す輩なんていない。けれど僕の家を出たら…」


 宮廷魔術師のリーシャに敵う者はこの国にはいない。だから滅多なことでリーシャの屋敷に攻撃を仕掛けるだなんてことはしないが、もし芽衣が独立したらすぐ駆けつけることが出来なくなる。


「その子はそのスキルでどうすると云っている?」


「彼女は…そのスキルを使って商売をしたいそうだ」


「むぅ…」


 ギストルが唸る。


「きっとその子は今までの異世界人たちのようにラスターニャに革命と恩恵をくれるのだろう。だったら好きにさせてやるのがこの世界の望みなのかもしれないな」


「…そうだね」


「それに悪人が手出しできないようにお前が陣を書くのだろう?」


 もし芽衣が独立するのなら、その家に防犯やらの魔法陣を書くつもりだ。


「勿論!」


「お前の陣は強力だからな。誰も手出しできまい」


 ククッと面白そうにギストルが笑う。この城にもリーシャの強力な魔法陣が書かれているおかげで、悪意のある者たちが一歩城内に踏み込むと焦げるようにしてある。それに懲りた者たちは決して城に近づいて来ない。


「あとは…俺から牽制の印でも渡しておけば、少しは安全だろう」


 王と繋がりがあると知れば、この国の民なら手を出すことはしないだろう。


「ありがとう。その時はよろしく頼む」


 リーシャが頭を下げると、ギストルは笑っていた。


「お前がそれ程気にしている子に直接会ってみたいものだ」


 ギストルはニヤリと笑っていた。

 そして何故かその日のうちにギストルがリーシャの屋敷を訪問し、王という身分を隠して芽衣と接した。別れ間際にギストルが王様だと伝えると随分驚いていた。




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