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超ゾンビバスター  作者: ぺんぺん草
東京第5コロニー
40/64

戦闘開始

 キングから受ける威圧感はジャックの比ではない。対峙しているだけで自然と額から冷や汗が垂れてくる。ともすれば強烈なプレッシャーに負けて足が後ろに下がろうとしてしまう。だが絶対に下がれない。もし俺が逃げてしまったならば、このコロニーは今以上の地獄と化すだろう。そばで倒れている佐藤さんはもちろんのこと……仇討ちを俺に託した少女、庇ってくれた楓さん、大神子、小杉さん……誰も彼もが惨殺されてしまう。


 知り合ったばかりの人らだが……死なせはしない。俺が来たからには、思い通りにはならんってことを、この狂った化物に叩き込んでやる。


 キングは黄色い目でジロリと俺を一瞥する。

 

 

「ククク。こんな野郎にアイツら負けたんかよ。全くだらしねぇ奴らだな」



 俺はムッときた。赤髪ジャックの名誉なんぞ今更知ったことではないが、超絶厄介な敵だったことには間違いはない。全く……舐めてくれやがって。


 だいたいなんでコイツが連中のことを気にしてるんだろうか。スーパーゾンビ同士には同族意識でもあるっていうのか?

 

 そんなバカな話はないと思うが……奴らは妙に互いを意識しているのは確かだ。そこで少し探りを入れるために会話に乗ることにした。



「ケッ。赤髪のチンピラ野郎なら、俺が木っ端微塵にぶっ飛ばしてやったけどな。だが白髭のじじいを消したのは俺じゃねえよ。妙な怪物だ。人間でもゾンビでもない謎の怪物ってやつだ」



 キングの顔から笑みが消えた。



「そ……それじゃあ芽衣めいの言ってたことはマジだってのかよ……!」



 こいつは予想外の反応だった。まさかこの状況でこの巨大なゾンビの口から女性の名前が出てくるとは。急にどうしたんだコイツは?



 うつむき加減で、その筋骨隆々の巨体をワナワナと震わせるキング。どうも奴は怒っている様子だ。



「くそっ。天原あまはらの野郎めぇ。ふざけた真似しやがって……」


 

 一体誰のことか知らんが、天原って奴はこの化物にとっても一筋縄ではいかない相手のようだ。だが……心なしか俺も、その名を聞いたことがあるような気がする。一体は何故だろうか?もちろん同じ名の人間などたくさんいるだろうが……。


 怒りの表情をむき出しにしたキングだったが、それは一瞬のことだった。すぐに顔を上げて元のニヤケ面に戻る。



「よ〜し。それだけ答えられれば上出来だぁ。テメェはもう用済みだから死ね」



 勝手に1人で納得しやがって。まあいい……ずいぶん舐めちゃってくれてるようだが、思い上がってたことをキングの野郎に後悔させてくれる。


 俺は構えた。



「へっ。そりゃ頭を叩き割れた野郎の言うセリフじゃねえだろ。死ぬのはお前だよ。まあ……ゾンビだからもう死んでるか」



 キングもゆっくり接近しながら構えはじめる。



「覚えとけよ〜小僧。今からお前の四肢を引き裂いて食らってやるのは、この海王ディエス様だからなぁ。地獄に落ちても俺様の名前を忘れるんじゃねえ」



 脅しじゃなくてマジだからヤバい。このバカ野郎はそもそもの発想が狂ってやがる……。



 軽口を叩いた俺だったが、胸の中は緊張感で満ちている。想像していたよりもキングに隙がないのだ。迂闊に奴のリーチに入ってしまえば……本当に体を引き裂かれるかもしれん。



「あ……あれは……!?」



東京第5コロニー(南部区域崩壊後)

挿絵(By みてみん)



 東の壁が破壊され、そこからゾンビ達がどんどん侵入している様子が目に入った。キングとは悠長にやってる場合じゃないらしい……。



 だが壁際のゾンビどもに気を取られてしまった一瞬の隙をキングは見逃さない。



「死ねぇぇ!」



 腰をかがめて右のストレートパンチを放つキング。


 その突きは想像を超えたスピードと腕の伸びを見せる!まるで艦砲射撃のように強烈だった。だが俺は上体を左に移動させ、これを簡単にかわした。


 しかし俺の反応を読み切っていたキングはニヤリと笑う。


 不意に伸び切った腕を曲げ、肘打ちの態勢に入ってみせる。すぐさまエルボーに変化した巨大な肘が俺の胸部を打ち砕こうと迫った。


 だが奴の肘打ちも空振りに終わる。



「おっ!?」



 キングは自身の巨大な右肘の上に、俺が立っていることにやっと気づいた。俺は奴の肘打ちを飛んでかわしていたのだ。



「へっ!そんなノロマじゃ俺に勝てねえぞ」


「こ……こいつ!」


「吹っ飛べぇぇぇぇっ!」



 奴の腕に乗ったまま思い切り右足を後ろにあげ、全力で奴の顔面に蹴りをブチこんだ。


 

 ふっとばされたキングの巨体は地上を滑るように転がっていく。だが(庁舎前の)瓦礫の山の上に激突する直前で、後転してクルリと起き上がって着地した。


 しかし奴は相変わらずニヤケ面だ。しかも拍手までしている。



「お〜っ!いいねぇお前!さっきの背広よりは全然イジメ甲斐がありそうだよ。じっくり痛ぶって殺してやるから感謝しろよ〜?」


「あんな動きじゃ俺には勝てんと思うがな……」


「そうかな?」



 瓦礫の上に倒れていた佐藤さんは、血だらけの上半身を少しだけ起こして様子を見守っている。



───あ……あれを軽くかわしやがった。やっぱり石見君の反射神経……ちょっとオカシイぜ───



 突然、数人の男達が現れ倒れている佐藤さんを取り囲んだ。



「な……なんだテメーら……?」



 長銃を抱えた坊主頭の男が、一歩前に出る。そして片膝を突いて佐藤さんの肩に手を置いた。



「安心してくれ。助けにきただけだ」


「その声、アンタはさっきの……白いシュマグの男か……」


 

 彼に声をかけた坊主頭の男は守備隊長の小杉さんだった。


 小杉さんの率いる総勢13人の守備隊がようやく前線に到達していたのである。(地上を覆う瓦礫を超えるのに手間取って到着が遅れていた)守備隊は手際よく担架を広げると、動けなくなっていた佐藤さんをその上に乗せる。


 隊員の1人が小杉さんに報告する。



「腕にゾンビの破片を確認!住民に感染の恐れがでます」


「やむを得ん。体育館ではなく誠心寮の方に運べ。しかしこれは重傷だな……」


 

 佐藤さんは首を横に振った。



「ゲホッ。お……お前らキングと戦う気なのか……?ならばやめとけ……。無駄な犠牲が増えるぞ……」


「喋るなもう。我々に任せておくんだ」



 小杉さんは部下達に指示を飛ばす。



「片岡!先に体育館に向かってかえで様に事情を伝えるんだ。もし楓様が誠心寮に戻られると仰られたら、寮まで護衛してさしあげろ。コロニー内はゾンビだらけだから油断するな」


「はい!」


「遠藤!斉木!お前らは担架を護衛しろ」



 13人いた隊員のうち、担架を運ぶ2人、護衛の2人、楓さんに連絡する1人、計5人が離脱することとなった。


 キングと睨み合いながら、俺は後方での動きにも意識を集中させていた。

 

 

「ちっ……。守備隊まで来ちまったのか」

 


 佐藤さんを運んでくれたのはありがたいが……。彼らがいると戦いにくい。



「邪魔だ小杉さん!気になって戦えねえから帰ってくれ!」


「我々の心配はいらん!石見殿は戦いに集中してくれ。我々は君の邪魔はしない」




 くそ……。知らねえぞどうなっても!

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