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地底800マイル  作者: 悟飯 粒
赤き血潮の大悪党
36/70

間違えない男

カッコつけようとして難しく説明しようとするのはダメですね。余計にわかりづらいし、何よりもつまらない。なので後書きに今回の話をザッとではありますが簡単にまとめておきました。「こんな面倒くさいの見てらんないぜ」って方は本編を飛ばして後書きだけ読んで下さい。

こういうところですよね、文章表現力のなさが露呈する場所は。

ヘカトン。第一類勇者であるが、幼少の頃の事故により脚を負傷した為に戦闘ではなく事務仕事に就くことになった。しかし彼の魔力は[精神コントロール]であった為に戦闘最前線の勇者の心理カウンセリングや王様ひいては要職の人間たちの精神安定に貢献し、[備品管理係]と[税徴収係]の長に就任する。これだけだとしょぼく見えるけれど、凄いのはここからだ。彼は自分の魔力を利用し自分の精神を常にベストな状態にすることで商いにおける交渉、緊急事態における判断、過労死するほどの多忙な時だろうと常にミスのない会計処理をし続けることによって周りから信頼を得ていき着実に出世していった。

そして彼は常に適切な判断を下し、[間違いない男]と評価されることとなり、勇者領各部門の判断における最終決定権を獲得。こうして彼は[全てがわかる男]と並び事務における最高責任者にのぼりつめた。


「うーーん………私と逆すぎてちょっと困るなぁ。」


カイと姫子さんの話を聞いて一番最初に思ったことが「敵に回したくないな」だった。

自分の感情をコントロール出来るのならば、彼には焦りも怒りも不安もない。あるのはただ、無のように悟りきった平静だけだ。

そういうやつはこれから先に起こることをきっちりと予測して、非常事態のときのことも常に頭の中にある。全てに対策を組めるっていうのは恐ろしいことだ。


「子供達が暴走しない理由が精神コントロールによるのだとしたら………彼らを助ける手段が一気に見えてきましたね。」


………確かに。私がいままで被害者を助ける時には結構な時間がかかっていた。相手の心に寄り添わなくちゃいけなかったからだ。でもそれをする必要がないというのなら、一気に大勢を助けることができる。それにカルナーやマイトリーみたいに力を持ったまま制御できるのなら………そこからちゃんと仕事に繋がることができる。これはいいね。


「勇者領から離れた場所に集まっているというのが気掛かりですね………多分勇者領から逃げるつもりなのでしょうが、この新人研修の計画は3ヶ月前に決められたものだと私の事務所の調査員が報告しています。」

「………つまり?」

「つまり、考え方が大きく分けて2通りあって、片方が最悪だってことです。」


姫子さんは地図を見ながら唇を噛み締めた。


「1つ目はヘカトンが1週間前にブラドが捕まった時に焦って、今回の新人研修を利用して逃げることを思いついたということです。これは準備期間がないので仲間との連絡疎通が起こりうるので僕達からすれば願ったり叶ったりといったところです。でも2つ目は……」


………私でも何となく分かってきた。


「3ヶ月前……もしかしたらそれ以上前から、この日に確実に逃げることを画策していた場合です。そうなると青ローブと勇者のつながりは想像以上に強く、また、明日に備えて色々なことを準備してきたはずです。」


3ヶ月かけて練り上げたかもしれない知略……それをこの1日考えただけの作戦で打ち崩せるだろうか?………無理でしょ。いや、相手が無警戒ならなんとかなったかもしれない。でもブラドが捕まったことはもう勇者領全域に知れ渡っている。相手はガッチガチに警戒しているはずで………うん、困るな。


「2つ目はさらに2つのパターンに分けられます。1つ目はブラドが捕まるのを想定していた場合。これをAと呼びましょうか。2つ目はブラドが捕まらないと想定していた場合。これを前に習ってBとしましょう。本当はもっと分けられるんですが、そんなことしたらイリナさんたちの頭が爆発しそうなので控えておきますね。」


カイと姫子さんの話を聞いて混乱気味に陥りかける私含めた3人。頭が痛くなってきた………


「Aの場合だと、捕まる原因は子供を雇用したことだろうとヘカトンは簡単に分かっていることになるわけです。……それでも子供をブラドに渡したということは、ブラドはほとんど捨て駒に過ぎず、裏切る前に2人を使って勇者を削る予定だったのでしょう。」


………まぁ、カルナーとマイトリーの能力は戦闘、特に長期決戦に向いている。そう考えるのは多分正しいのだろう。


「そしてブラドが捕まったとしても自分は捕まらないという自負が読み取れる。……こうなると相手の頭の中には完璧な作戦が頭の中にあると考えなければいけないでしょう。」

「……Bは?まだ救いあるの?」

「Bの場合だとヘカトンは僕達が子供の情報を得ていたとしても、勇者領内部の人事は見ないだろうと想定していたことになります。つまりブラドは勇者領内部の勇者を舐めきっていて、こんな奴ら相手なら簡単に逃げられるぜ。って思っていることになります。………実際、轍から情報を得るまで勇者領内部に敵がいるとは思っていませんでしたからね。」

「そうなると相手の作戦はかなりずさんだってこと?」

「いや、それはないでしょう。そこで詰めを甘くするようではあそこまでの地位は得ていないです。」

「………結局AもBも捕まえることが難しいってことでいいの?」


どっちも抜け目がないってことなら分ける必要なかったんじゃないの?


「いえ、Bの場合だとブラドが捕まったことはヘカトンからすれば想定外だったはずです。だからヘカトンは自分の情報を漏出させないように[急いで行動する必要があった]。だから牢獄の囚人を無理矢理移動させ、口から名前が出てくる可能性が低いであろう轍を口封じの為に殺したように、ブラドなどの捕まった奴を殺そうと動くはずです。」


………まぁ、轍を殺しちゃったからそうなるんだろうねぇ。


「ここから仮定できることは、[彼の作戦はほとんど完璧だが、どうしても埋めきれなかった穴があって、それは事前に自分の犯行が漏出することで露見する]ということです。」


………どんなに完璧な人間でも、完璧な計画は作れないのか………なんか悲しくなるなぁ。


「僕達は[そこ]を突かなくちゃいけない。なので僕はずっと[そこ]を考えていたのですが………やはり、[そこ]は[明日、子供達が集結する]というところではないでしょうか。」

「なんでさ。むしろそこはいいとこじゃないの?私達からすれば子供達が集結するまでの猶予が1日しかないんだからさ。プレッシャーを与えられるでしょ。」

「………馬鹿正直に情報を捉えすぎですよ。情報というのはいろんな角度から見るから意味が生まれるんですよ。」


おーー、バカにしてるね?私のことバカにしてるね?そんなに頭をシェイクして脳味噌を柔らかくされたいの?

と言っても馬鹿正直に捉えるなか………わからん。


「逆に捉えてください。1日もあるんですよ。どんなに緻密に計画しても、合流するまでは彼は子供達に手を出すことができないって彼自身の行動が言っているんです。唯一彼の手元に子供達がいない状態。[1日しか]じゃない、轍からすれば[1日も]なんです。これが何よりも重要なんです。」

「でもさぁ、バラバラになっててもどうせ対策してるんでしょ?子供達が対策している状態じゃやっぱり………」

「ヘカトンは子供達の精神を安定状態にして制御することができます。………それならば暴走状態にすることもヘカトンは出来ると考えるのが普通です。そこでカルナーさんとマイトリーさんの時を思い出してください。彼女達は彼の元から離れても精神を安定させることができていました。多分彼の魔力は一度かけたらほとんど永続的に働くものなんでしょう。でも勇者の魔力は魔族と違って欠点が多いものです。カルナーさん、マイトリーさん。定期的に彼の元に行くようにとか言われてませんでした?」

「うん!そう言えば1ヶ月に一回来いよ!って言われた!そんなに私達に会いたいのか!ってその時は反応しちゃったね!」


アイドル……なのかなぁその考え方。よくわからないや。


「1ヶ月、魔力をかけたらかけっぱなし。彼の近くにいないと再度魔力をかけられない。つまり彼の元に子供達が集まれば……」

「一斉に子供が暴走してもおかしくない………」

「逆を言えば彼の元にさえいなければ暴走はしないということです。暴走していない状態だと子供達は魔力がメインとなります。そうなると魔力無効の空間を作り出す人間を連れていけば制圧は簡単です。」


はえーー。そう言われると案外簡単に感じるね。


「ブラドがどれほど物事を予測して練り上げた、自然を装った脱出計画だろうと、この移動期間だけはどうしても隙ができてしまった。一応苦し紛れに上位聖騎士や聖騎士長を護衛につけるでしょうが………」

「オッケーわかった。つまり王様にかけあって目当ての人間引っこ抜いてヘカトンの元に集まっている子供達に奇襲かけて捕まえてヘカトンを1人にすればいいんだね。」

「そういう事です。それじゃあすぐに行動開始だ。僕は姫子さんと作戦を練るので、イリナさんは王様か慶次さん。……慶次さんの方が良いでしょう。彼に事の顛末を説明して魔力無効系の人間を寄こさせて下さい。」

「………わかりました。」

「オッケー。」

「「ねぇねぇ!私達は!?」」

「2人はそうですね………作戦を聞いていて下さい。」

「「分かった!!」」


こうして私達は各々の行動に移った。

空が夕闇へと溶けていく。これから長い夜が始まる。

ヘカトンの能力は精神コントロールだって!?どうりでカルナーとマイトリーが暴走しないわけだぜ!

でも奴は賢い……3ヶ月前から計画を練っていて隙がないに違いない!それに精神安定が出来るのならば逆に乱して暴走させることもできるはず!あいつのところに全員が集まったら終わりだ!

でも待てよ?キッズが集まるのにはまだ時間がある!ヘカトンと合流する前にさっさと無力化してヘカトンを孤立させようぜ!!

ざっとこんな感じです。

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