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地底800マイル  作者: 悟飯 粒
赤き血潮の大悪党
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むばたまの黒き石金払いて得たり

「ちょっとぉ!!あんたなんで勇者の重役と会う約束してたのに私達に教えなかったのさ!!」


バッゴォン!!

私は思いっきり机を叩いて壊した。

轍との面会を取り付け来て聞いてみれば………なんてこと隠してたんだこいつ!!あり得ないでしょ!!


「い、いや!!その………今まで接点がなかったんです!!」

「接点がないだぁ!?約束つけてた奴が言うもんじゃないよね!?」

「会ったことがないんです!あの日が初めて会う日だったんですよ!関係とか全然ないんです!」

「……じゃ、じゃあなんでそんな奴と会う約束なんて取り付けてんのさ!どういう経緯でそんなことになったんだよ!」

「仕事の関係で行った地方で知り合ったんです!だから喋る必要ないと判断して言わなかったんです!」


なにー!?てことはほとんどつまり関係ないじゃん今回のことに!!


「…………そ、そういうこと早く言って欲しいなー。」

「言う前に暴れたんじゃないですか!」


轍から送られる非難の目線。こんなダメな男からの避難でも今の私にはダメージだ。かわすように目線をそらした。


「まぁ、お互いに非があるってことは認めるよ。あんたに99%、私に1%ぐらいね。だからもう怒鳴るようなことはしない。それじゃあその、会おうとしていた奴の名前を教えてくれない?」

「……………そう言うことにしておきますか。今の私には発言権なんてそれを言うときぐらいしかないですから。」


よく分かってるじゃないか。


「そいつの名は[ヘ]」


ピンッ

轍の体が何かに弾かれたかのように右半身をべっこりと抉られながら吹き飛ばされた。

ボゴン!!

そして壁に激突した!


「な………!!」


私は急いで周りを確認した!

敵がいる!?………いや、あり得ない!!轍の部屋は個室で、一番近い独房まで100メートルは離れている。それにここは魔力を持たないチンピラ程度の罪人を監修する場所だ!魔力を持つ奴なんているわけがないし………いやそもそもここの牢獄は全域が魔力使用不可だ!!5人1組の6組ローテーション体制で魔力障壁を張っているんだから!!ここで、こんな、魔力を利用したような犯行を起こせるわけが!!


バチバチバチバチ!!!

私の体から雷が発生した!!

………まさか、魔力障壁を張ってる人間は既に敵の仲間なの?いやいや、あり得ないでしょ。5人だよ?5人全員が裏切るなんて………


「………へ…………」


虫に食われた葉っぱのように湾曲した轍が、私に何かを伝えようとして喉を振り絞っていた。


「へ!?頭文字は[へ]なんだね!?」

「…………」


コクリ

轍はなんとかして首を縦に動かした。


「へ……っ」

ピンッ

轍の体が地面ごと抉り飛ばされ、ふくらはぎぐらい以下の両足を残して消えた。


ガンガッシャァアンン!!!!

私はこの階全てを吹き飛ばすつもりで全力で壁を殴った!!!

魔力がどういうものかは分からないけれど、轍をピンポイントで攻撃したってことはこの近くにいる可能性が高いってことだ!!メンドくさいからここ全て吹っ飛ばすよ!!!


がシャン………

しかしこの階の崩壊は途中で止まっていた。

何人もの人間が集まって私の攻撃の衝撃を防いでいたのだ。


10……20………全員囚人服を着ている。でもここの囚人じゃないってことはわかる。階級が高すぎるからだ。それにあの先頭の男、どこかで見たことが…………っ大罪人じゃないか!


バチバチバチバチ!!!

私は雷を出して戦闘態勢になった。

こんなレベルの牢屋に収容される人間じゃない。それなのにここに収容されているということは………これは予想以上に根が深そうだ。


タタン!!

突っ込んできた囚人2人の顎を軽く撫で脳を揺さぶり意識を奪った。


ズガガガガガガン!!!

そのまま私は前へと走り出し、壁を削りながら見覚えのある人間の胴体に蹴りを叩き込む!!


グニン!!!

すると大罪人は体をくねらせ蹴りをかわしてきた!!


ダンダンダンダンダン!!!

私の攻撃の隙に後ろの敵が魔力弾を放つので距離を取りながらかわした!


私の攻撃をかわすか………かなり戦闘慣れしているなぁ。さすがは悪名高い奴だ。

敵は集団で来ていてメンドくさいが、こいつらは良い情報源だ。殺しちゃいけない。殺さないように体の自由を奪う……脚を全部切るか………


私は光剣を引き抜き敵の足に狙いを定めた。



「正直な話、裏切り者の根はどこまで深く張り巡らされているんですかね………」


資料室で古びた分厚い本を眺めながらカイが呟いた。


「裏切り者…………あのデブの話です?」

「そうです。ブラド………あの人はかなり優秀な人間でした。階級はそこそこでしたが、それを補い、いや、余りうるだけの知性があった。そんな人間が欲のためだけに動いたなんてとてもじゃないが思えない。」

「………お金はみんな好きだよ。」

「お金………確かにお金は大好きですよ。僕も大好きです。でもそれのためだけに、勇者領なんていう国に反逆するなんてバカだと思いません?たとえ魔族がいようと、魔物がいようと、勇者がいようと、僕達には第二類勇者と王様がいる。勇者の最高戦力全てが敵なんです。それをあのキレる男が理解できないわけがない。」

「「………つまり?」」


カルナーとマイトリーが声を合わせてカイに聞く。


「………つまり、欲のために離反して勇者領全てを敵に回しても勝てる!と、ブラドが判断したって可能性が出てくるってことです。」


ブラドは僕達に捕まってしまったが、もし調査に行くのが僕達じゃなければブラドは逃げ切れたはずだ。それに今行方不明な子供の数は62人。これ全てがもし最高幹部並みの力を持って敵になったら………勇者領は今人事でワチャワチャ苦労しているけれど、もしかしたらそっちの方が幾分かマシだって状況に本当は今すぐにでも陥ってしまっているんじゃないだろうか…………


「華麗なる女探偵森脇姫子!!ただいま戻りましたー!!」


バァアン!!!

森脇さんが資料室の扉を勢いよく開けて中に入って来た。

森脇さんには探偵事務所の調査結果を聞いて来てもらって見やすく資料をまとめてもらっていたのだ。


「いやーー五里霧中の一意専心って勢いで調べたらですね、ヤベーの出て来ちゃいました。」


バサッ

森脇さんは机の上に抱えていた資料を広げた。


「これは勇者領内部の人事の資料なんですがね………変なとこありません?」

「…………ここ3週間で急激に人数が増えてますね。全員聖騎士とし記入されていますが………」

「その中にはカルナーちゃんとマイトリーちゃんの名前も含まれていました。もちろん聖騎士としてですがね。」

「………合計数はいくらですか?」

「47人。」

「…………」


カイは口に指を添えて唸った。色々な可能性と、その打開策を必死で考えているのだろう。


「………その47人の現在位置はどこですか?カルナーさん達と同様ならどこかの施設に派遣されているはずですよね。」

「確かに言う通りです。全員各地方の参戦基地へと飛ばされています。………ですが、明日、全員が1箇所に集まることになっている。」


全員が1箇所に集まる!?………新人研修か!!まてまて、新人研修の担当者は誰だ!?えーっと…………


「[へ]から始まる人間だよきっと。」


ガチャ………

イリナさんが扉を開けて部屋に入って……


「………どうしましたイリナさん!?ボロボロですよ!?」

「あーーいや、ちょっと牢獄でいざこざがあってね。それを処理するのに少し無理した。」


ドサ


イリナは右手に掴んでいた男を地面に放り投げた。


「………こいつは大罪人ペリフェラルじゃないですか。かなりレベルの高い牢獄で捕まっていると聞いていたのですが………」

「こいつは轍と同じ階層の牢獄にいたのさ………囚人の投獄を無理矢理変えられる人間が轍を殺した。そしてその時に轍が言おうとしていた人間の名前は[へ]から始まる人間だよ。」


投獄を無理矢理変えられる人間?……そんなの、どれほどのパイプがあったらなし得るというのだろうか?10人なんてもんじゃないぞ…………


「………ヘカトン。」


姫子さんがポツリと呟いた。


「勇者領における英知と呼ばれる2人の柱。慶次と並ぶ人事権限、判断権を持つ勇者領の実績No.2の男です。」


グッッ

姫子さんが手を強く握りしめた。


「そして、私の家族を殺した男です。」

「そうそうこの人!!このデブ!!」


マイトリー達の可愛い声が、姫子さんの鬼気迫る声を後押しした。

難しい話は嫌いですね。世の中の物事全てがひらがなみたいに簡単になってほしいものです。

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