面倒くさいので、アイデア出します
(あぁ。これは・・・)
目の前の惨状とも言えるべき光景に、最初に私が思ったのは「め、面倒くさい・・・」だった。
飲食店で勤務している私の日常茶飯事。食べ終えたテーブルの片付け。特に、アルコールを提供している店だと、宴会後の散らかし具合はお察しだ。食べ残し、飲み残し、散乱しているゴミの数々。あるいは飲み切った酒瓶。人数が多いと、どうしても散らかり具合がひどくなる。
ある程度、食べ終えたお皿やグラスを片付けたりはするものの、お箸やお手拭きなどのゴミはそのまま。焼肉店だと、さらにトングやハサミまであるのだ。焼肉のタレの残った取り皿が十以上あると、タレをどこか一ヶ所にまとめないと、積み重ねる時に溢れてしまう。その一動作を繰り返さなくてはならないので、面倒くささは・・・以下略。
(お客様が悪いわけじゃないこともわかってるし、これが仕事ということもわかってる)
だが、私の中に面倒くさいという感情が一切湧いてこないかというと、それはない。
片付けが大好きなら、きれいにすることにやりがいを持つだろう。だが、私は特にきれい好きというわけでもない。
(お客様が喜んで片付けてくれる仕組み、つくったら良いのに)
私の中にそんな思いが芽生えた。
(あ、そっか。つくればいいんだ。お客様にも店側にもメリットのある仕組み)
意外と、私はそういうことを考えるのが好きだ。上手くいけば儲けもの。上手くいかなくても
、別に現状と変わらないのだから構わないだろう。
きちんとした店は、小さなことであろうが、ちゃんと無駄を省くシステムを構築しているところが多い。
様々な飲食店で勤務をしてきているから、それがわかる。というより、本職で小さな工夫を積み重ねてきたから、お客様にも店側にもメリットのある工夫というものを考えることは得意だ。
仕事は小さな無駄を省き、小さなストレスを減らしていくことで、効率が上がっていく。
ゲームでいうところの最初は0.5%上がるといった具合でも、積み重なれば2〜3%、さらに積み重ねれば5〜10%といった、大きな成果に繋がるのだ。
(考える価値、ありそう)
私はテーブルを片付けながら、そう思った。
仕事が終わり、帰宅した私は、疲れていたのですぐに就寝した。明日のシフトは昼からなので、朝からゆっくり考えればいい。
明けて、翌日。朝からであれば、頭を使った仕事の効率は上がる。私はテーブルにルーズリーフを置いて、アイデアを巡らせる。
さてさて。店側にもお客様側にもメリットのある工夫。見たことのある光景。
まず、頭に浮かんだのは、とある飲食店の掲示だった。チェーン店であるその店は、食べ残しを減らすため、お客様の責任で、タッパーなどに入れて持ち帰ることができる、と張り紙がしてある。
(これを宴会時にOKにすれば、焼かれず、そのまま廃棄するしかないお肉も浮かばれる)
ただ、焼肉店の場合は野菜やキムチは食べ放題といったところもある。焼肉店ではないが、知ってる店では、キャベツ食べ放題というのがあった。
あくまで、食べ残しということで、ここは持ち帰りOKのものは焼いた肉など、と制限をかけてもいい。そもそも持ち帰る人間がいるかも不明だが、元々持ち帰るという発想がないだけで、内心持ち帰りたいなぁと思う人間がゼロとは考えにくい。人は人からどう見られるかを非常に気にする生き物だから、店側がOKを出していると、お客様の言い出しの難易度は下がる。
それを卑しい、貧乏人のすることと笑う人間がいるのであれば、きっと心が貧しく、現実的ではない思考の持ち主なので、近寄らないのが吉である。
人の価値観はそれぞれ違い、感性もそれぞれ違う。大食な人間が、少食な人間を笑うようなもの、と考えられないのであれば、正直私は、付き合うのはごめん被るタイプである。
他人がどう思うかは関係ない。私が良いと思ったからやっているまで。それを笑うのであれば感性が違い、話が合わないと判断する。
(まぁ、この思考のおかげで、私、友達一人しかいないんだけどね)
ただ今、適応障害で仕事を休職中の友人。早く元気になればいいなと思う。
(さて、次は・・・)
まず、ルーズリーフに何が面倒くさいのかを私は書き出した。
・食べ残し、飲み残しがある
・使い終えたお手拭きや割り箸のゴミが大量に散らばっている
・鉄板に肉がこびりついている
•お皿やグラスが多い
(で、まとめると・・・)
↓
・食べ残し・飲み残しがある食器やグラスが多いと、片付ける時にまとめにくい。
・使い終えたお手拭きや割り箸のゴミが大量に散らばっている。
・鉄板に肉がこびりついている(お客様に動いてもらう範囲外)
(つまり、お客様に動いてほしいのは、食べ残しや飲み残しを少なく、かつ使い終えたゴミをまとめてもらうか、捨ててもらうこと、か)
食べ残しは、ひとまず焼いたお肉やテーブルに残ったものを持ち帰りOKとすることで、減らすことはできそうだ。
(飲み残しと、ゴミは、と)
思いつくのは、各テーブルにゴミをまとめるお皿か、入れ物を置いておくか、用意することだ。
(ゲーム形式にして、それにメリットを感じれば人は動く)
アルコールが入ると、人の脳の機能は低下するので、説明するなら一番最初に。
「各テーブルのゴミをこちらのバケツにまとめて入れて頂きましたら、無期限で使えます、〇〇円のクーポンを差し上げています。こちらは各テーブル毎に差し上げておりますので、良かったらチャレンジしてみてください。また、できましたら、お近くのスタッフにお声がけください」
(簡潔にこれだけでいいな)
まぁ、狭い店内では現実的ではないが。コロナ禍で使われるようになった、料理提供のためのロボット。あれらをグラス運びに使えば楽になりそうだな、とも考えつく。ただ、こちらはテーブルの間が広くなければ使えないので、飲み屋などでは、保留だろう。
(まぁ、アイデアがあっても、多分言わないだろうなぁ)
ただ、自分の仕事が楽になり、お客様にもメリットのあることを考えるだけ。実行するかどうかは不明だが、役職が上の誰かに聞かれない限りは答えないだろう。
(機会があれば、出しても良いんだろうけどね)
なにせ、働いてるのは自分の店ではない。自分の店なら、このアイデアをすぐに取り入れて、仕事を楽にしていただろう。なにせ、やってもやらなくてもデメリットがないのだから。
(ま、いいや)
書いたルーズリーフをファイルにまとめて、私は朝ごはんの準備に取り掛かった。




