108話 再会のお化け
朝。
駐輪場。
「……行くぞ、イングラム。」
小声。
誰も聞いてない。
聞かれてはいけない。
ペダル踏む。
ギィ、と鳴る。
白い愛車。
いつもの道。
ホールへ向かう道。
ふと思う。
いつまでこんな風にいられるかと。
振り払うようにペダルを漕ぐ。
ーーーーーーー
ホール。
お気に入りの台に向かう。
見慣れてしまった姿。
セイコ。
既に台に座って台の上にいるユウトを
目を細めてみている。
ユウトは居心地悪そうに頭を掻いている。
「おう。」
「どうも。」
「おじさん、助けて。セイコがずっと見てくるんだ。」
「ねぇ、おじさん。あのザラザラしたのっておじさんに憑いてるわけじゃないんだね。」
ザラザラしたの?
ユウトのことか。
「さあな。」
席に座る。
1000円入れる。
「おじさんの実家から帰って来て、なんかコツがわかった気がするんだけど、このザラザラは、まだ見えないの。」
「そうか。」
「ただ、前より、なんかこうぼんやり?輪郭はわかる気がする。男の人?」
「ああ。」
「ヤバイよ。バレるよ。どうしよう。」
「あ!なんか今喋った!?」
レバーオン。
リールが回転する。
「うーん、もうちょっとだと思うんだけどなぁ。」
止める。
外れる。
「……何でそんなに気にするんだ?」
少し間。
「なんかね、このザラザラ。他のやつみたいな嫌な感じしないの。むしろ懐かしいっていうか。」
「……。」
「おじさん、これ。名前あるの?」
「ああ、それはユウトだ。」
「「!!!!」」
二人とも、目を見開いて、フリーズ。
ん?
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
ーーーー当たり。
「お!」
「おじさーーん!何してくれてやがんの!」
「何がだ?」
増えるメダル。
至福の時。
横を見るとセイコは俯いている。
なんだ?コイツら。
レバーオン。
リールが回転する。
「……ねえ?ユウトって私が知ってるユウト?」
「……。」
ちらりとユウトを見る。
「……ああ。」
「何言ってるか聞こえないよ。」
止める。
外れる。
レバーオ「「よく続けられるね!!!」」
ハモんな。
リールが回転する。
「あ、今聞こえた気がした。」
セイコ。
「そっか。ずっと……。ずっと、そこにいたんだ?ユウト。」
「ごめん。」
「ああ、やっぱりなんか聞こえるけどよく聞き取れない。」
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
外れ。
俺を挟んでやめてくれないかな。
俺はリールを回し続けた。
外れる。
外れる。
当たる。
外れる。
当たる。
……そんなもんだ。




