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スロプーおじさん、何もしてないのに幽霊が勝手に成仏する(旧題:スロプーおじさんは除霊なんてしたくない。)  作者: Samail
おじさんと日常

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11話 幸せお化け

翌日。


いつものホール。


自動ドアが開くと、いつもの匂いと音が流れ込んでくる。


BGMもいつもの。

なんか聞いたことあるようなないようなやつ。


「……。」


お気に入りの台に座る。


派手に負けない、派手に勝てない。

そんな台。


サンドに1000円札を入れる。

レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れ。


「……。」


もう一回。

レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れ。


「……ねえ。」


「なんだよ。」


「昨日のやつ、どうなったの。」


「昨日のやつって?」


レバーオン。

リールが回転する。

当たり。


「再就職の話。」


「ちょっと待て、今当たったから。」


ボーナス中。

隣の台の前に、人影が立つ。


「……。」


「……来たね。」


「来たな。」


男だ。

痩せていて、顔色が悪い。

年齢はよく分からない。若くも見えるし、そうでもない気もする。

その男は、誰もいない台の前で、レバーを叩く仕草をしている。


カコン。

リールは回らないのに音はする。

たぶん俺にしか聞こえてない。


「……触れてないな。」


「触れてないね。」


それでも男は、満足そうに頷いている。


「……当たった、のか?」


「いや、どうだろう。」


「本人は幸せそうだけど。」


「とてもね。」


「いいことだ。」


男はもう一度、レバーを叩く。

カコン。

やっぱり何も起きない。

それでも、


「……よし。」


と、小さく呟いた。


「何がよしなんだよ。」


「当たってるつもりなんじゃない?」


「つもりか。」


「つもり。」


「一番大事だよな。」


「そうなのかなぁ。」


「少なくとも、誰も不幸になってない。」


「確かに。」


しばらくそのまま眺める。

男はずっと、当たってない台で当たってるつもりで打ち続けている。

飽きないのかと思う。


「……ねえ。」


「なんだよ。」


「あれ、ずっとあのまま?」


「さあな。」


「止めてあげないの?」


「無理だろ。」


「え、なんで?」


「ほらみてみろよ。」


「うん。」


「別に困ってなさそうだろ。」


「……それもそっか。」


ふと目を離す。

自分の台に戻る。

既に通常時だ。

レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れ。


「……。」


もう一度、隣を見る。

いない。


「……。」


「消えたね。」


「だな。」


「満足したのかな。」


「さあな。」


「成仏?」


「だといいな。」


「してないの?」


「あれだけ幸せそうだったんだから成仏してんじゃないか。」


「雑だなぁ。」


「そんなもんだろ。」


しばらく回して、席を立つ。


「もうやめるの?」


「なんか、気が乗らない。」


「さっき来たばっかりじゃん。」


「そうだな。」


「もったいない。」


「別にいいだろ。」


「よくないよ。」


「万枚狙える機種でもない。」


「そうだけどさ。」


喫煙所。

人はまばらだ。

壁にもたれて、煙草に火をつける。

一口吸う。


「……。」


煙を吐く。


「……で?」


「なんだよ。」


「結局どうすんの。」


「何がだよ。」


「仕事。」


「……。」


少しだけ考える。

考えても、あまり意味はない気がする。

煙を吐く。


「やらない感じ。」


「ふわっとしてる。」


「してるな。」


「断ったの?」


「断ったような、流れたような。」


「一番よくないやつ。」


「そうかもな。」


「あんたさ。」


「なんだよ。」


「ほんとに大丈夫?」


「……。」


少しだけ間。

煙草が短くなる。


「大丈夫なわけないだろ。」


「うん。」


「幽霊なんか見えてんだから。」


「それは前からでしょ。」


「じゃあ前から大丈夫じゃなかったんだな。」


煙は、ゆっくり上にのぼってやがて消えた。

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