表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/111

10話 端玉お化け

「……。雨、か。」


にわか雨ではなくどしゃ降りの雨。 こんな日にまでスロットを打ちに行くほど俺は酔狂ではない。


「優雅に二度寝でも決め込むかな。」


手元でスマホが震える。 液晶に映るのは元取引先の名前。 すごくよくしてくれた人だ。


「……。もしもし。」


「おーー、久しぶり。元気にしてたか。」


「あぁ、はい。それなりに。」


「はは、相変わらず愛想のないやつだな。聞いたよ、前の会社辞めたんだって?よかったらうちで働かないか?」


ーーーーーーーーーーー


「で?おじさん。どうすんの?働くの?」


「……。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。


「どっちでもいいけどさー、万枚は出してよね。」


「うるさいよ。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

当たり。


「お。」


「お。」


ハモんな。


なんかスロットの調子、最近いいな。

前までは微負けが続いてたのに。

最近勝ち越してねぇか?これ。


「……。煙草でも吸いに行くか。」


席を立ち、喫煙所へ向かう。

先日までの雨はすっかりやんでいた。


火をつける。

一口吸う。


「……。」


「で?」


「なんだよ。」


「働くの。」


「しつこいな。」


煙を吐く。


「別に、どっちでもいいだろ。」


「よくないよ。」


「なんでだよ。」


「働かないとお金減るじゃん。」


「減るな。」


「じゃあ働くじゃん。」


「そうでもない。」


「なんで?」


「めんどくさい。」


「理由が弱い。」


「強いだろ。」


もう一口。


「……いい人なんでしょ?」


「まあな。」


「じゃあやればいいじゃん。」


「そうかもな。」


「じゃあやるの?」


「いや。」


「なんでだよ。」


「めんどくさい。」


「ループしてる。」


「そうだな。」


煙が上にのぼっていく。


「……断るのも、めんどくさい。」


「あー。」


「連絡返さないのも、めんどくさい。」


「あー。」


「会うのもめんどくさいし、会わないのもめんどくさい。」


「詰んでるじゃん。」


「そうだな。」


少しだけ間。


「……じゃあさ。」


「なんだよ。」


「何もしなければ?」


「してるだろ。今。」


「いや、そうじゃなくて。」


少しだけ考える気配。


「仕事のこと。」


「あー。」


「決めない。」


「もうやってる。」


「じゃあそれでいいじゃん。」


「いいのか?」


「いいんじゃない?」


「責任とかは。」


「知らない。」


「だよな。」


煙草が短くなる。


「……でもさ。」


「なんだよ。」


「たぶん、また電話くるよ。」


「来るだろうな。」


「どうすんの?」


「出る。」


「出るんだ。」


「出ないのもめんどくさい。」


「またループしてる。」


「してるな。」


少しだけ笑う。


「……でさ。」


「なんだよ。」


「もしやることになったらさ。」


「おう。」


「スロット打てなくなるじゃん。」


「それは困るな。」


「だよね。」


「まあ、仕事中に考えればいいか。」


「何を。」


「期待値。」


「怒られるよ。」


「怒らせとけ。」


「ひどい。」


「そうか?」


「うん。」


煙草を消す。


「……まあ。」


「おう。」


「やりたくなったらやる。」


「出た。」


「やりたくなかったらやらない。」


「シンプル。」


「シンプルだろ。」


ーーーーーーーーーー


「今日はもう帰るかな。」


「まだ夕方だよ?」


「何か気が乗らない。」


「そっか。」


こいつ幽霊の癖に表情が豊か過ぎるんだよな。


「また明日来るよね?」


「気が乗ればなー。」


手をヒラヒラさせて駐輪場に向かう。




愛車に跨がって家を向かう途中、泣いてる子供を見つけた。


「……。」


こんな時間に、一人。

自転車を少しだけ減速する。

別に、関わる理由はない。

そのまま通り過ぎてもいい。


「……。」


通り過ぎる。

少しだけ進んで、止まる。


「……。」


そんな気分じゃないんだけどな。

引き返す。


「……迷子か?」


声をかける。

子供は顔を上げる。

小学生くらい。


「……違う。」


「どうしたよ。」


「チョコレート食べたい。」


「ちょこ?」


ポケットをまさぐる。

あった。

端玉でもらったチョコ。


「……これやるよ。」


「え?」


「いらないか?」


「……いる!」


放り投げてやると、

チョコは子供をすり抜ける。


「あ。」


「おじさん!」


満面の笑み。


「ありがとう!」


少しだけ風が吹いて、子供は消えた。


なんとなくスマホを開くと、着信あり。

液晶には恩人の名前。


通話ボタンを押す。


「もしもし。はい、この間の件ですが。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ