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【朗報】ひと夏の思い出、作っちゃう件・2

 わたし、華亥ムラクモ♡ お家の柱をハミハミしちゃう白アリくんから、人類を踊り食いする宇宙ドデカゲジゲジまで駆除はお任せ! くらえっ、一撃殺虫ムラクモジェット! ぷしゅー。殺虫業者女の子♡



 ってことでね。

 海賊おじさんから教えてもらったところ、行ってきたの。

 結論から言って──ジャカジャカジャーン! 特に虫モンスターくんはおりませんでしたー! なな、なんだってーっ!

 うん。

 なぁんて肩透かしなんざましょ。……別に期待してたわけじゃないケド、財宝だって見つかんなかったしぃ。

 密着! ただの洞穴ドキドキツアーって感じ。

 ……え? それってただの無駄足なんじゃないかって?

 ──ふっ。収穫はあったさ。得難い経験と愉快な思い出って……収穫がね。なんつって。

 それはそれとして。


 ──がおーっ!

 ……って感じなの、今の気持ち。出たな情緒不安定ムラクモ! プリティ怪獣よ~、気を鎮めたまえ~! かしこみ~、かしこみ~。わかりましたぁ。──スン。メンタル・ジェットコースターわたし。


 虫との戦いあるかもしんないからってさぁ、デストロイ気分になってたからね。そんでちょろっちフラストレーション感じちゃうってワケ。……ま。何もないに越したことってないしぃ。よかったって思うとこよね、ここ。

 時代はラブ&ピース! 平和が一番! 教師経験者でもあるムラクモちゃんはなお一層コンプライアンスに気を付けて生きてかなきゃなりませんよぉ。うわーん! 堅っ苦しい!


 お話戻すねえ。

 虫くんはいなかったんだケド、代わりって言っていいのかしら。……いいや、お前の代わりなんかいないぜ。唯一無二のラブリーマイハニー・ムラクモ……。いやんっ、照れちゃう♡

 ……洞窟の中ね。ところどころ水に沈んでたんだけど……その沈んだところでおっきいお魚見つけちゃったんだぁ。

 せっかくだからって捕まえてきたんだケド……。なな、なんと! そいつったら銀貨十枚で売れたんだよぉ。チャリーン! も、儲けを得ちまったぜ……。 

 くっ……。銀貨出費五枚を収入十枚にしてしまうなんて……。もしかしてムラクモちゃんって……商才あるのでは? ぶっぶー! 商売の才能がある奴はそもそも借金しませーん! はい論破ぁ! ぐぬぬぅ……。


 もちろん、儲かった分のお金は借金返済にあてさせていただきますのん。間違ってお小遣いにしちゃわないように、「使っちゃダメなお金」袋にそそくさーって投げ込んどこ。

 チャリチャリー、ジャラジャラー。なぁんて大金なんだ。目がくらむぜ……。



 ───



 お宿に帰ってぐっすりおやすみしたら、グッドモーニング! 朝だよ。

 この日はねぇ……うん。ちょっと名前思い出せないから、勇者村でいいや。

 勇者村に観光に行くことになったんだよ。……んで、灼熱の浜辺から精霊の森(仮)へごー、ごー!

 ──まあ素敵!

 妙に整備されてる神秘の森を抜けたなら……そこには集落がハローハロー。おお! って感じ。この世界で見てきたどの町より異世界してますよ、ここ。

 ここでならムラクモちゃんも内政チート……できるのでは? ──残念! 知能が致命的に足りなかった! うえーん、しくしく~。


 ちっちゃい感じの村なんだけど、けっこう観光客ってくるみたい。……今はそんなでもないケド、大通りとか、めっちゃ露店あるし。

 質素な村の真ん中にあんまり質素じゃない露店通りがドーン! 勇者ジュースとか売っちょる。

 ……ところでその、勇者ジュースってなあに? 勇者の体液でも丸絞りしてるの? 吸血鬼向け商品? ……そ、そんなわけないよねぇ。

 買ってみるとねえ、普通にフルーツ汁みたい。

 勇者商品だからって、おまけで勇者ステッカーもらえたよ。……シルエットのやつ。……えぇ(困惑)? ま、まあいいや。ありがたくいただきますねぇ。……帰ったらお部屋に飾ろ。

 ちなみにジュースね、ヤシの木もどきになっとるアミアミシナシナフルーツ絞ったやつなんだって。

 味はね、めっさ甘い。どんくらい甘いかっていうと……うん。ちょっと比較対象もってないから比べらんないけど、すんごく甘い。おいちい、おいちい。

 血糖値が上がってムラクモちゃんの天才的脳細胞がさらに活性化しちゃいますねぇ。いやー困っちゃうなー(棒読み)。ただでさえムシケラ知能界の神童って有名なのにー。


 露店巡りしたら、何でもご存じって評判の長老おばあちゃんのストリート昔話を聞きに広場へ。勇者伝説の語り聞かせだってぇ。面白そうだよね。

 けっこうお客さんいてねえ、すんごい人気コンテンツって感じ。これは期待が高まりますねぇ。ワクワクしてきちゃった。


 ……。

 うん。ちょい長かったから要約しちゃうね。

 『むかーしむかし、あるところにめっちゃ悪いおっさんがおりました。しかもそいつ、あくどい上にずる賢くって誰も手が付けられません。もーホントに、マジ邪知暴虐。もはや魔王と呼ぶほかないアウトローでした。 人々は絶望し、口々に言いました。『魔王は悪だ!』 『なんかもう、魔人とかモンスターとか不景気とか腐敗とか戦争とか、この世の不幸のすべては魔王が原因!』 『あいつを何とかしてくれる救世主来てよ!』 

 希望の降臨を願うその声に応えるかのように、ある時、一人の少年が現れました。心ある王様が異世界より召喚した勇者です。『マジで迷惑なおっさんが暴れまわってヤバすぎ! この世界終わっちゃうかも。……ちょっと聞きたいんだけど、君なんとかできそう?』 光り輝く鎧を纏うその少年は、王様の懇願に頷くと、旅に出ました。その道のりは長く、苦難に満ちたものでしたが……やがて。彼はついに魔王を仕留めました。そして世界に正義の輝きをもたらしましたとさ! めでたしめでたし』って感じらしいよ。……それでもなお長いまんまだぁ。


 うーん……。な、なるほどなー。

 た、たいへん興味深いお話だったぜぇ、うむむん。

 ……あ、おひねり渡しますね、銅貨二枚。お話、とっても面白かったの。……途中からちょろーっちウトウトしちゃったケド。い、いちおう最後まで聞いたから!

 うん。……ゆるちてゆるちて。

 

 ……それにしても。

 異世界出身系の勇者かぁ。

 この辺、勇者縁の地~っていうから、ムラクモちゃんってばてっきり南国出身・トロピカルブレイバー! って感じの想像してたよぉ。ムキムキーっって感じのマッチョでねえ、でっかい丸太ブンブン振り回すの。めっちゃつよい。必殺技は岩鉄割りパンチ。つよい(確信)。


 ……。

 光り輝く鎧。


 変な話するね。

 言いがかりになっちゃうかもだけど……。

 そこ、ムラクモちゃんちょっぴり引っかかっちゃったの。

 

 どういうことなの? っていうとね、ヒーローとか魔法少女も出せんだよね、光り輝く鎧。……や、デザインって個人差あるから鎧っていうか、外装っていった方がいいかもしんないけど……。

 わかりやすい風に言うと、変身だよね。お約束~って感じの。

 いちおう、ムラクモちゃんも出せるよ。特に必要ないし、デザインも好きじゃないからやんないけど。

 でも、“協命機関”じゃわりと一般技能だったんだよね、外装展開。防御力とか回復力って生存率に直結するもん。……まあ、そんな外装くんも宇宙ドデカインセクトにかかったら紙みたいなもんだったけどねぇ。……うーん世知辛い。


 何が言いたいかっていうとね、その勇者くんってもしかして……ヒーロー・魔法少女なんじゃないのって。

 思ったんだけど。

 ……でも勇者だもんね。

 ──キュピーン! 「ブレイブアーマーだーっ! 展開!」グワシャーン! 『説明しよう! ブレイブアーマーとは、勇者の怒りと勇気が臨界点を超えた時に自動装着される無敵のアーマーなのだ!』……とかありそうだしぃ。似たような特徴あるからって、さすがに考え過ぎかしら?


 …………。

 それによくよく考えてみると、その勇者とかってのがこの世界に来たのって、今よりずっと昔だもんね。魔法少女もヒーローも、地球じゃけっこう最近のブラック・アルバイトだもの。

 ほな関係ないかぁ。……まったくムラクモは! 思わせぶりな推理を披露してこの体たらくだなんて! キサマ風情にこれ以上、名探偵の名を渡してはおけないぜ! 今日から名探偵ムラクモから思わせぶり勘違い女ムラクモを名乗れ! わかったな! ひーん。

 


 ───



 その後ね、れっちんは古跡めぐりとかって変なお骨董品屋さん見に行ったし、じょーちゃんは「せっかくですから、この辺りの特産品でも見てきますわ」ってどっか行っちゃった。

 ムラクモちゃんはねぇ、どうしよっかなって。勇者物語はもう聞いちゃったし、ジュースも飲んじゃったしぃ。やることなくなっちゃった。

 し、しまった! ここにきて無趣味の弊害が出ている!


 ……。

 ……むむむーん。ムーン。……突然なんだけど、今ちょっとかっこいい必殺技閃いちゃった。ラブリィムーン・クラッシャー(ただのチョップ)ってどうかな? いい感じじゃない? 今度使ってみよ。

 

 

 つってね。

 お暇を持て余しつつ、持て余しつつ。しょうもないこと考えてたのん。そしたらね、グラグラ~って来たんだよ、いきなり。

 キャッ! 何が起きたの!? 襲撃? ──許せない! 影でひっそり泣く人の涙背負って巨悪を成敗! 魔法少女アルティメットジャスティス・ムラクモ見参! ……なんつって。

 地震だよぉ。震度は……わかんにゃい。でもなんか倒壊してる家とかあるから──あ。……ん、うん。けっこう危ない感じ。

 今も家の下敷きになりそうな人いたしねぇ。……ん? 「お礼させてほしい」って? 別にいらないよぉ。でも普通に危ないから建物から離れてた方がいいんじゃない?

 ってな感じに義理堅い被災者さんを薄情ムラクモは適当にあしらいつつ、あしらいつつ。揺れが収まるのを待ってたの。


 待ってたんだケド……ちょろっち変だなって。

 何が変って、地元の人ね。ちょっと尋常じゃない様子で慌てとるの。

 なんだろ。なんていうか……こう、半狂乱。……どうもねぇ、地震そのものを恐れてるってより、もっと違うものを怖がってるみたい。

 その辺でワーワーやってる悲鳴を盗み聞きしてみた感じ……「オー! 神の祟りじゃぁ! みんな死んでしまうんじゃあ!」とか、「神の怒りが大地を震わせておるんじゃあ!」って大騒ぎしとる。神様の祟りですって!? そんなバナナ! し、しかし……。

 その神の祟りって、断罪の雷とか降ってくる? よもや、

 ──“暴君”ムラクモ! 理不尽女罪で焼き尽くします! くらえ! ゴッドファイヤー! メラメラー! あちーっ!

 ってなっちゃうのん? うえーん、ごめんなさい! これからは悔い改めて生きますぅ。……忘れるまでは。


 ところでムラクモちゃん、すんごいことに気が付いちゃった。こういうシチュエーションってさぁ、あるよね。ファンタジーとかで。

 『ワレワレハ神様ダ』とかってさぁ、原住民にイケニエ捧げさせるの。んで、その正体って実はモンスターなんだよ。ありがちだよねぇ。


 名探偵ムラクモ改め、思わせぶり勘違い女ムラクモちゃんってば、気になっちゃったからね。地元民さんに聞いてみたの。

 そしたらねぇ、「安易に関わるでない!」って怒られちゃった。えぇ……(困惑)? あんな大声で神の祟りじゃーって騒いでたのに? ……まあ、教えたくないならいいよぉ。無理に聞くのって良くないもんねぇ。

 別の人に聞いてみるの。

 そんで他にも何人かもしもし~、教えてたもれーってやってみたんだけど、だぁれもオッケー! セキララタイム! ってやってくんない。

 お話好きならお口軽いかなって思ってストリート昔話長老おばあちゃんにも聞いてみたの。そしたら、「いずれ治まるだろうから、お前の出る幕じゃない」だってぇ。……や、出る幕じゃないのはその通りなんですケドぉ。


 ……うーん。

 不思議だなって思うのは、地元の人達、洗脳されてるようには見えないってこと。洗脳されてるわけでもないのに神様とかってのかばってる。こんな地震起こされて、死ぬかもしんない目にあってんのに。

 まぁ……神様ってのがムラクモちゃんよりハイスペックな精神魔法使いで、ムラクモちゃんにも気付けないレベルの洗脳やってるって可能性あるけど……。そんなわかんないことは考えても仕方ないので、いったん置いときましょう。

 

 実を言うとねえ。神様とやらの居場所自体はわかるの。

 魔力感知にね、大きな魔力の気配、引っかかっとる。特に地震が起こってからはすんごい勢いで膨れ上がってるもんだから、向こうもたぶん隠れる気とかなさそう。

 ……そいつがいる場所ね、かなり近いよ。精霊の森(仮)のね、奥の方にいるっぽい。


 人外だよ。

 この魔力の質、間違いなく人外。そんで、人外が人間に対して攻撃してるの。これってムラクモちゃん的にギルティなんだよね。すぐにでも向かって問答無用で千切り潰しちゃいたいけど……。

 でも事情も知らないよそ者わたしが好き勝手やっていいもんなのかなって。……いちおうね。いちおうだけ、考慮しとこうってね。


 だって、もしかしたらカミサマって名前のペット系モンスター飼ってるって可能性あるかもしんないし。

 地元民さんの様子おかしいのも、──うちのかわいいペットに手を出すな! 人外理不尽駆除女! って警戒されちゃってるとかさぁ。……ほら、ムラクモちゃんってば有名人だしぃ。

 だからね、そう聞いてみたの。ペット殺されそうでビビってんの? ムラクモちゃんってば理解ある駆除業者だよって。そしたらもっと怒られちゃった。「ふざけんじゃないよ」って。すいません。


 ……。

 …………。


「聞きたい。その、祟りっていうの……いつ治まるの?」

「! ……いずれじゃ。ワシらは信じて待つことしかできん」

「そう」

「待て! どこへ行くつもりじゃ?」

「……害虫駆除」


 腐っても鯛、くたばり損なったって魔法少女。

 ごめんねぇ。今からムラクモちゃんってば、誰にも望まれてない迷惑行為しちゃうよぉ。

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