表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/58

【朗報】ひと夏の思い出、作っちゃう件・1

 わたし、華亥ムラクモ♡ カラカラ~、カラカラ~。わーいわーい回し車だよ! ダッシュダッシュ! 気分はまるでハムスター!

 ……ん? 燃えてる! でも一度走り出した滑車は止められないぜ! これがホントの……火の車。ぐにゃぐにゃあ〜。借金しちゃった系女の子♡ 



 夏だーっ! 海だーっ! 太陽だーっ! サマーバケーション in ムラクモちゃん♡ ギンギラギンに燃え盛る太陽くんがいつもの五割増しにまばゆくムラクモちゃんをスポッツライトしてくれちゃう!

 けれど……ふっ。お疲れ様と……言うべきかな?

 キサマの役目は終わったぜ、大陽! ムラクモちゃんが真夏のビーチへ現れてしまった以上、これより人類を照らし出す役目は拙者がいただいたぁ! くらえ! サンシャインムラクモちゃんスマイル! ニコニコー。

 見て! 見よ! 太陽光線よりホットで有害なプリティ・スマイルが浜辺のオーディエンスの理性を焼き尽くしちゃうんだから♡ なんつって。

 

 さておきさておき。

 今回来てるのはね、いかにも南国って感じのところだよ。なんだかとっても風光明媚♡

 海があって、砂浜があって、ポツンポツンって質素なお家が立ってるのん。木組みで葉っぱが屋根のやつ。……ムラクモタワーといい勝負しそうなデザインですねえ。──いいや。ギリギリ……ムラクモタワーの判定勝ちだ。それってどんな判定? お黙りひだまり! 拙僧のジャッジに物言いをするでないよ! ムラクモちゃんの勝ちったら勝ちなんだい! 私情マシマシ判定員わたし。

 ところで、ムラクモちゃんってばびっくらこいちゃったケド、ここってヤシの木みたいなの立ってんだよぉ。なぁんてトロピカルなんざましょ。南国強度高いよね。

 ……でも木になってる実ってココナッツっぽいやつじゃなくて、なんか……なんだろ。調子が悪い時のメロンみたいなやつ。アミアミシナシナしとる。偏見で言うけど、絶対すっぱい。不健康な味しそう。⋯⋯あとで食べてみよ。


 じょーちゃんに教えてもらったんだけど、この辺ってめっちゃ由緒ある土地らしいよ。勇者伝説とかあるんだってぇ。精霊信仰とかリアルにあるみたい。ロマンですねぇ。……トロピカル出身の勇者とは? 偏見やめてね。

 ……ちょっと思ったんだけど、勇者ゆかりの地ってことはさぁ、封印されし聖なる剣とか隠されてたりするのん? 海のさぁ、底のところにいかにも怪しい穴とかあったり? んで、その奥には聖剣の守護者とかいたりしてぇ、やっつけると次代の勇者として認められちゃったりするんでしょ。知ってる知ってる。

 その聖剣……引っこ抜いて売ったらムラクモちゃんの借金帳消しになるかしら? 聞いたぞ! 浅まし屋ムラクモ! 落とし物をネコババしようなんて言語道断! 魔法少女的コンプライアンス違反罪で逮捕だ! がちゃーん。ひーん、すみません。

 

 

 おっといけにゃい。話逸れちゃった。

 ともかくともかく、海だよぉ。ムラクモちゃんたちは泳ぎに来てんですぅ。

 つーことでね、お宿に荷物を置いたら、いざゆかん! 天下分け目のサンシャイン・ビーチへ! つってねぇ。

 この日のためにじょーちゃんに見繕ってもらった勝負水着なんかフリフリしてるやつを着用して、ビーチの視線を独り占め! あふれんばかりのプリティさでどいつもこいつも悩殺しちゃうゾ♡ 



 ───



 あろーはー! いきなり矢が飛んできてコンニチハ! あろーはろー! なんつって。

 青く輝くマリン・パラダイスにムラクモちゃんがログイン、ログイン!

 異世界の海ってさぁ、遠目に見ても綺麗だなって思ったけど、近くでじっと見るともっともっときれい。……変な臭いしないし。 

 

 いいね!

 景色を堪能したら、さっそく突入、突入! ムラクモ・マーメイドが参上だよ♡ 思うさま泳ぎまくってやるぜ! 

 なんて思ったんだケド、「ちょっと“暴君”! アンタ準備運動しなさいよね! ちょっとした油断が大怪我に繋がんだから!」ってれっちんに叱られちゃった。イテテ、正論パンチだぁ。

 わかりましたよってね、準備運動とやらをやって、今度こそ……! って思ったら次はじょーちゃんがね、「日焼け止めしなきゃ、めっ! ですわよ、ちゃーちゃん。せっかくの白いお肌が日焼けしてしまったらもったいないですもの」って。ムラクモちゃんは最強だから日焼けなんかしないと思いますケド(無根拠)。

 ……まあいいけどね。ってことでぬりぬりー。


 ず、随分と出鼻をくじかれちまったが……やることはやったぜ。

 んだもんで、気を取り直して……。念願の大海原へ、俺の冒険心は漕ぎだすんだーっ! 次回、ムラクモ死す!

 はい。

 ところで……ここでね、ムラクモちゃんってば気付いちゃったんだよね。大事なこと忘れてたって。


 ──わたし、泳ぎ方とか知らないやんけ! ズガビーン!

 この無能! 拍子抜け大王! ムラクモ! 

 す、すみません。でもムラクモちゃんは最強だから……。

 深海に取り残されたってどうってことないし、魔力をロケットみたいに噴射したらすんごいスピードで動き回れちゃう! いかがです? 奥様! お買い得ですよ! でも……お高いんでしょう?

 ご安心ください! 今ならほんのちょろっち魔法を使うだけ! まー、お得! さっそく試してみましょう。ドカーン! 世界は滅んだ。

 ムラクモ! キサマみたいに泳げないやつは、おとなしく砂のお城でもこさえてろ! うえーんしくしく(白々しい嘘泣き)。せっかく海に来たのにぃ。



 しょうがないからね、お砂遊びしてたの。

 お城なんか作ったって面白くないから、ここはプリティ全振り、ラブリー美少女ムラクモちゃん像でも作ってみようかなって。ポーズはねえ、せっかくの海だし、あざいとい感じにしたらいいかも。そんで完成したら魔力圧縮でギュウギュウに固めてぇ、地域に進呈してあげちゃお。

 ……やったね! こんなにもプリティな観光名所が増えちゃうなんて! ……え? 迷惑行為はやめろって? Q.ムラクモちゃん像の何が不満なんですか? A.単純に邪魔。……あ、すみません。


「……ん? アンタ何作ってんの?」

「ん。これ」

「……あら、火炎ブレスを発射する直前のドラゴン像? 悪くない出来ね。……前から思ってたけど、アンタ芸術家としての才能……けっこうある感じじゃない?」

「……ちがう」


 あざとポーズムラクモちゃん像ですケド。

 れっちんキサマ、ムラクモちゃん創作物をことごとくドラゴン扱いしおって! 

 よく見て! ちゃんと見て! お目々かっぴらいてホラ! 三百六十度どこから見てもラブリームラクモちゃん像にしか見えないでしょ? トカゲ要素なんてどこにもなくない? ないよね? ……え?

 ま……まあいいけどね、どう見えたって。ムラクモちゃんは気にしないよ。うん、ぜんぜん気にしない。好きに解釈したらいいよ。ホント気にしてないけどね。



  ───



 砂場系クリエイティブ活動に飽きたら、適当にその辺散策しちゃう。お腹も空いてきたしぃ。

 なんかおいしい屋台とかあったらいいよね。今のムラクモちゃんの気分的にはお肉食べたいかも。……うーんでも、お魚も捨てがたい。

 …………あ、そうだ(天才的発想)。

 どっちか選べないなら、両方やったらいいんだよぉ。ムラクモちゃんってば編み出しちゃったんだケド、お魚をさぁ、こう……。ずばーってやって、真っ二つに開いたお腹の中にこれでもかってお肉詰め込んだらよさげじゃない? そうでもない? そうでもなくない? なくなくなくもない。

 こんなにも閃きに満ちた発想だったからね。独り占めすんのもよくないよねって、見つけた屋台のおばさんに教えたげたの。そしたらすんごい馬鹿を見る目されちゃった。……まったくもう! 失敬だな!


 しょうがないから、その串焼きお魚買うよ。……ん? なあにこのグニグニしてるやつ。……え? スライム饅頭? なぁにそれぇ。

 ……うーん。

 海とゼリーもどきくんの組み合わせって、ムラクモちゃん的にあんまりいい思い出ないっていうか……うん。せ、青春的いい思い出もあるっていうか……。やっぱやめよ。今のなし。

 と、とにかくそのスライム饅頭とかってのも買うねぇ。なんか味気になるしぃ。


「……お魚のやつとスライムのやつ、十個ずつちょうだい」

「アンタそんなちっちゃい身体でよく食うんだねえ。……本当に食べきれるのかい?」

「……独り占めしないよ。分けてあげるの」


 ……言っておきますケド、ちゃんとじょーちゃんとれっちんにも分けてあげるんだからね! 決してムラクモちゃんが大食いってワケじゃないよ!

 ま、まぁ……。二人の分は一個ずつって想定だから……実質ムラクモちゃんがほとんど食べちゃうケド。

 


 ───



「あら。おかえりなさい、ちゃーちゃん。お散歩してましたの?」

「ううん。ご飯買ってた。……あげる」

「まぁうれしい。大事にいただきますわね」

「ん」


 はいどうぞーってねぇ、スラ饅と魚串を一個ずつ進呈。光栄に思ってくれていいよぉ。ムラクモちゃんが手ずから購入してきた神聖なるご飯だからね! ……偉そう! すみません。

 ちなみにスラ饅ね、つまみ食いしちゃったケド……けっこうおいしかったよ。グニョグニョの内側にグニグニの固い奴が入ってる感じで。……味? ……うーん、しょっぱいような辛いような……。わかんにゃい!

 でも87点くらいの味かなって。毒はないし、頭おかしくなるくらい味が強いわけでもないし。普通においしいのん。


 そう教えてあげたらね、じょーちゃんったら「あらそうですの? じゃあ、いただいてみますわね」って食べてくれたの。

 どう、どう? おいしい? っつってお顔見てみたらねえ……なんか今にも吐きそう。……え?

 もしかして……マズかったの? ごごご、ごめんねぇ! ムラクモちゃんってば、自分の味の守備範囲が広いこと忘れちゃってたのん! ゆ、ゆるちてー!


「だ、大丈夫。覚悟の上ですわ。……ちょーっぴり個性的なお味ですけれど、珍味だって思えば意外といけますもの」

「ほ、ほんとう? 無理してない?」

「ちゃーちゃんがおいしいって言うんですもの。わたくし、愛犬家としてちゃんと理解を示せる度量を手に入れたいんですの」


 そっかぁ。……ん?

 ……あ、愛犬家とはいったい? じょーちゃん犬飼ってたの? え?


 ……。

 ま、まあいいや(震え声)。


 

 その後ね、れっちんが合流して来たからお魚串あげたの。いちおうスラ饅も食べる? って聞いてみたケド、「どう見たってマズそうじゃない! アンタこんなの人に勧めるなんて正気じゃないわよ!」って怒られちゃった。すみません。

 ……ムラクモちゃん的にはおいしいけどなぁ。……ふっ。誰にも理解されない味覚という名のカルマ……。ムラクモちゃんはひたすらに孤高……。なんちゃって。


「人に勧めんのも正気じゃないけど、自分で完食してんのも正気じゃないわね……」


 ちょっとれっちん! そのボソって言ったやつ聞こえてるからね! どんな些細なうわさ話も決して聞き逃さない地獄のムラクモ・イヤーからは逃れられないんだからね!



 ───



 ご飯を食べたらね、またれっちん泳ぎに行っちゃった。

 海で動くと筋肉を鍛える効率がいいんだって。「アンタこんなことも知らんの?」って言われたケド、しょうがないでしょ! ムラクモちゃんは生まれついての最強! ゆえに自らを鍛えるという発想そのものが存在しないのだ! ……言っとくケドこれ、負け惜しみじゃないからね!

 チクショウ、チクショウ! れっちんめ! 知識マウント取りやがって許せねぇ!


 じょーちゃんはどうするの? って聞いたの。

 そしたら「どうしましょうかしら」だって。まだ決めてないのん?

 ムラクモちゃんはねえ、お散歩がてら貝殻でも拾ってこようかなって。記念品に。持って帰ってムラクモタワーに飾るんだぁ。

 そんなお話したらね、じょーちゃん「わたくしもご一緒しますわ」って。一緒に来ることになったのん。



 じょーちゃんとおしゃべりしながら砂浜歩いてたの。

 そしたらさ、地元の人かしら。モヒカン頭のおじさんがね、話しかけてきたの。……きゃんっ、ナンパ!? ダメよダメ。アイドルムラクモちゃんといえど今はプライベート! おしゃべり厳禁なんだから♡


「ようあんたら。観光かい? それとも……お宝探し?」

「お宝……ですの?」

「知らねえのか? 勇者伝説のさ、勇者様がその冒険で手にした財宝ってのがこの辺りにあるんだってよ。で。

 アンタらにとっちゃ幸いなんだが……。俺はその財宝が隠された場所の一つってのに心当たりがある。どうだい? 銀貨五枚で売ってやるぜ、その場所を」


 お宝だってぇ。

 でもムラクモちゃん知ってんだ。こういう浜辺で財宝の話してくるやつって、だいたい海賊の一味なんだよ。そんでさぁ、こっちがその情報ってマジなの? デマカセじゃない? とかって疑ってると、マジなんだぜー! って証拠出してくんの。

 でねぇ、「お宝が欲しけりゃ、俺の船に乗るんだな」って偉そうになって、大冒険して、ついに宝物を見つけた時──「悪ぃが、お前の分の財宝はねぇ」っつって後ろからバキューンってやってくるんでしょ。知ってる知ってる。


 つまり──この世紀末ヘアーおじさんは不意打ち海賊おじさんだってことだ! 賢いムラクモちゃんの心眼が看破しちゃったぞ!

 怪しい奴め! ええーい! 出会え出会えー! くせ者ぞ! ひっとらえーい!


 ってムラクモちゃん脳内で冤罪吹っ掛けてたらね、じょーちゃん、「生憎ですけれど、間に合ってますの。もうよろしいかしら?」だって。

 おじさんもくじけない人みたいで、「本当にいいのかい? たった銀貨の五枚で金銀財宝が得られるのに?」って。


「……そんなにお金が欲しいなら、その財宝が隠された場所とやらにご自分で向かわれたらいいじゃありませんの。……銀貨五枚よりずっとたくさんのお金が手に入りますわよ」

「い、いや……。ど、洞窟には……そ、そうだ! モンスター! デケェ虫モンスターが住み着いててよ。俺みたいな一般人じゃとても手が出ねえんだわ」

「……虫? 虫いるの?」

「ちゃ、ちゃーちゃん……」


 それはちょっと聞き捨てなんないかも。

 ……や、さすがのムラクモちゃんもねえ、節足野郎が嫌いだからって、巣穴にまで乗り込んで根絶やしにしてやるなんて理不尽かもしんないって思いはするよぉ。

 うん。思うだけで滅ぼすけどね。哀れ虫くん。ムラクモちゃんに存在を知られてしまった不幸を呪ってねえ。

 ……ってことで。


「買う。教えて」

「ちょ、ちゃーちゃん! 詐欺ですわよ! あの人の言うことなんかウソなんだからお金払うことないですわ!」

「ん」

「へへ……毎度。これが場所を記した地図だぜ」

 

 じょーちゃんは注意してくれるけど、ごめんねぇ。

 ウソならウソで別にいいの。

 でも、ムラクモちゃんの目が黒い内は、ゲボヘドロキモ虫は一匹たりとも生かしてはおかないよ。なぜって? それはムラクモちゃんが節足動物が大っ嫌いであり……傲慢で邪悪な“暴君”だからなのだーっ!

 ということで、新たな冒険へれっつごー、だよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ