【配信】ダンジョン最下層を攻略しちゃう件・1
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わたし、華亥ムラクモ♡ のちの世に語られる……プリティアイドル三國志。異世界大陸東側・魔法メルヘン国家を徳と暴力で支配したラブリー・クラッシャーな魔法少女とは──そう、わたしです♡
今日はねえ、久しぶりに穴ボコもぐりをやってくよ。ムシケラ千切りはムラクモちゃんの重要な資金源だからね。
つーことで、場所はダンジョン最下層。目の前には筋肉ムキムキのドデカ二足歩行ウシくんと、取り巻きの普通サイズ二足歩行ウシくん。
見ろよ見ろよ、ムラクモ……。この俺の筋肉……どう思う? すごく……すごいです。でもごめんね、ムラクモちゃん筋肉に興味ないの。牛肉には興味あるけどね。
……牛肉。牛肉か。
いいね! 今日のご飯、牛肉ってのも悪くないかも。
そうと決まれば、美少女に筋肉マウントしたい系ビルダーウシくんには素敵な食肉に転生してもらっちゃお。
はいどーんっ!
愛と平和への祈りが込められたパンチが、特に罪のないモンスターくんを襲う! どかーん!
……あ、また力加減ミスって爆散させちゃった。しゃーない、切り替えて取り巻きくんを食肉にしたげよ。
【【悲報】伝説級のモンスター、マッスルキング・ミノタウロスさん、出会って五秒で爆散する】
【マッスルキング(笑)さん、自慢の筋肉見てもらおうとポーズ決めてたのに、速攻でパンチされてかわいそうwww】
【↑ で、でも、半裸のマッチョがロリの前でポーズするのは事案だからね。これは仕方ないことなんだ……。……本当に仕方ないかな?】
【久しぶりのタイラント虐殺たすかる】
あ、ちょっと逃げないでよ。
追いかけ回してぱんちぱんち! どかばきー! ほっほっほっ! この老骨が長年鍛え上げた拳法を見よ! 必殺の……テレフォンパンチだーっ! ……しまった技もクソもない!
くっ、ムラクモ貴様、この外道め! 背を見せて命乞いする者にも容赦なしか! はい。だって人外は人間じゃないもん。人権は認められてませーん! 許せん、死ねーっ! ギャース! メスガキ系下郎配信者わたしの人生は短かった。これに懲りたらお前、人外にも優しくしろよな。
それは……えー。多角的に物事を見て、慎重に判断したいと思います。
うん。
ところで、ウシくん達をお肉にした後で気が付いたんだけど、これ、ムラクモちゃんナップザックには入りきりませんわね。
む、無駄な殺生をまたやったというのか……ムラクモ。
……もうっ! 何度おんなじ間違いを犯したら気が済むんざますの、ムラクモちゃんは! ひーん、ごめんちゃい。
【ムラクモちゃん、袋片手に立ち尽くしてて草。明らかに困っとるやんけ!】
【バーバリアンロリの考えなしもダンジョン風物詩になってきたな……】
【今のパンチ、さらっととんでもない密度の魔力纏ってたんだけど……なんで暴発しないんだ? あんな雑な魔力の練り方で振り回したらどう考えたって逆流するだろ】
【↑ 新参か? タイラントロリは“暴君”の二つ名を持つタイラント探索者であり、バーバリアン配信者な頭トロールロリだぞ。ヤツのやることをまともに考察するだけ無駄だぞ】
【こんなにリスナーから舐め腐られてる探索系配信者初めて見た】
……仕方ないから持てるやつだけ持ってこうかな。
ごめんだけど、持ちきれないやつは魔力圧縮してサラサラお砂に転生させちゃお。そーれべきべきー。
ごめんなさいね、牛肉くん、罪深いムラクモちゃんを許して。でも、ちゃんと肥料にしてその辺にバラまいてあげるからね。……これがフードロス問題の現実か。なんつって。
【クイーン・インセクトを圧殺した魔法、ミノタウロスくんの死体処理に使ってて草】
【ムラクモちゃんって、けっこう魔法使えるっぽいのに、基本しょうもないことにしか使わないよな】
【今使ってる奴、闘技場でも使ってたぞ。ギガクネたん捕まえるのにバトルリングもろともやってたわ】
【↑ 闘技場配信マウントやめてね】
【↑↑ うわぁ……。いかにもタイラントロリって感じの雑さだぁ……】
処理が済んだら探索再開。
黒紫に囲まれた、素敵な閉鎖を空間をあなたに──。
外界の喧騒から離れて、薄暗くて湿っぽい地下の世界に住みませんか? 今なら敷金・礼金無料! 何なら家賃もいりません! あらまあ素敵! こんな好条件、逃すだけ損、損、SONGだわ! 今すぐ引っ越します! ちなみにモンスターくんと相部屋です(めっちゃ小文字)。……ハメられた! 酷い物件だぁ!
最下層はね、どうもすんごく広いみたい。
前にね、ゲボヘドロナナフシもどき一味を見つけたところまで来たんだけど……。
まだまだ先がありそう。けっこう道が枝分かれしてて、ちっちゃいお部屋もこまめにいっぱいある感じ。
まるでアリの巣だぁ……。
【毒ガストラップの中を普通に歩いて進んでて草】
【……ムラクモちゃん、迫真の宝箱無視! 気付いてないの? それとも興味ないの? どっちもあり得そうでわかんねえ……】
【↑ もしかしたらあれ、トリックスター・ミミックなのかも。それに気が付いたタイラントロリは無視した……とか】
【デカギロチン引っ掴んで砕くところ、レッドキャップくん二度見してて草。そして死んだふりに移るまでのタイムラグのなさも草】
すんごく迷いそうになっちゃうけど、それでもムラクモちゃんは先に進むぜ。俺は……俺が信じた道をゆく。正しいと信じる限り、迷うことなんてねえのさ……ふっ。
そう、迷ってないけどね。迷ってないけど……ここ、どこだろ? 自分がどっちから来たのかもわかんなくなっちゃった。
……嘘です、迷いました。うえーんしくしく(白々しい嘘泣き)。
……こういう時ってどうしたらいいんだっけ?
なんか“協命機関”にいた時に、サバイバル教練だって習った気がするけど、話が小難しくってウトウトしてたから全然覚えてない!
こ、こんな時は落ち着こう。
か、考えるんだムラクモ……状況を打開する計略を! むむむ……ピカーン!
ここで天才大軍師ムラクモ、閃いた! その圧倒的知略により導き出されし答えとは──?
次回! ムラクモ、ミイラになる! また見てムラクモ♡ なんつって。
……とりあえず、適当に歩き回ったらいいかなって思ったの。
無限に道が生成され続けるわけじゃないんだし、歩いてりゃいつかどこかにたどり着くこともあるでしょって。
なるほど。ナイスアイディア!
【タイラントロリ、なんか考えてたみたいだが……?】
【“暴君”ロリ「探索めんどくさくなってきたな……。ダンジョン破壊しよ」】
【↑ さ、さすがにそれはやらんやろ……。やらんよな?】
【信用ゼロで草】
───
あれから、どれだけ時間が経ったのでしょう。それでもわたしは、あなたの帰りを待っています。敬具。あなたのかわいいかわいいペットのチャリクモより、飼い主様へ。……いや、さ迷ってるのわたしのほう!
……というかね、王都から帰ってきてこっち、なんだかおじょー様の行動ってばエスカレートしてる気、すんだよね。
この前なんてさあ、プレゼントですわよってチョーカーもらったんだけど、リードついてたんだよねぇ。デザインはけっこうおしゃれだったと思うよ。黒い革製で、なんか鉄のとげとげついてる奴。闘犬とかが付けてそう。
……もしかしてムラクモちゃんってば、ガチのマジで犬扱いされてる?
……うーん。
…………まあいいか。
【さっきから同じようなところグルグル回ってね? これもしかして、タイラントロリ迷ってね?】
【間違いなく迷ってるぞ。死んだふりレッドキャップくん、さっきから何度も見かけるからな。バーバリアンロリが通る度にすごい勢いで死んだふりしてる】
【↑ レッドキャップくんかわいそう。巣に帰ればいいのに】
それからしばらくしばらく。けっこう冒険したんだけど……いっこうに出口が見つかんない。おんなじ景色ばっか続くし……なんだか飽きてきちゃった。
お腹も空いたしねえ。もう帰っちゃおうかなって思ったんだけど……ムラクモちゃんってば絶賛遭難中。そうなんでちゅか~? 煽るでない! 拙僧を煽るでないぞ! むっきー!
うーん。こりゃ、腰を据えて冒険すること覚悟しなきゃなんないかもしんない。
チクショウチクショウ! 今日は屋台おじさんのところでご飯しようと思っとったのにぃ……。クソっ、これも全部、華亥ムラクモって無能者が悪いんだ! 許せねえ!
……でもでもぉ、ムラクモちゃんは有能だから、ウシくんのお肉を持ってますよ?
許した!
ご飯するにも場所がいるからね。
とりあえず適当なお部屋を見繕って……たのもーたのもー!
「シャアアアア!!! ……グベッ」
【あ、ムラクモちゃん危ない!】
【うおっ。襲撃者ギガバジくん……頭ねじ切られとるやんけ。無茶しやがって】
【流れるように伝説級モンスター殺戮してて笑う。……コレ、マジでヤラセなしなんや】
そこで仲良く談笑してたご家族には申し訳ないけど、立ち退きをお願いしちゃう。はいどーんっ!
哀れ、罪なきドデカ蛇くんのご夫婦はムラクモちゃんの手によってこの世から強制退去させられてしまったのでした。さいてー! この押し入り強盗地上げ屋ムラクモ!
はい。
そんでね、お部屋があいたので、さっそく調理をはじめていくよ。
せっかくだからすき焼きとかっての食べて見たかったんだけど、日帰りのつもりだったからお鍋持ってないの。ムラクモタワーと違ってここ、ダンジョンだから鉄の乗り物とか落ちてないしねえ。
……いや、ダンジョンならむしろ、フライパンとかドロップするものでは? ……でも、ムラクモちゃん今までけっこうモンスター潰してきたし、ダンジョン歩き回ってみたけど、そんなの見たことない。
……はぁー、やれやれ。常識のないダンジョンはこれだから困るね。
しょうがないからねえ。
本当にしょうがないので、今日のところは丸焼きで我慢しとく。焼くだけなら道具もいらないしねえ。
【いきなり何? 何をはじめたの?】
【↑ タイラントロリだぞ。考えるだけ無駄だ。お前は何も考えず、流されるままに感じろ】
【↑ エセスピリチュアルやめてね】
【なんか……。ミノタウロスの肉を炎魔法であぶり始めたぞ……】
【いやいや! 血抜き! 解体! 可食部位とそうでない部位を分けなきゃダメでしょ!】
【これまさか……掲示板でも一部の者しか知らないという、伝説のタイラント・クッキングなのでは?】
そーれ、かしこみーかしこみー。燃えよ、牛! ボーボー、レッツボー! めらめらー。
……あ! 焼き始めてから気付いたけど、下処理してないやんけ! ……まあいいか。毒があるんじゃなけりゃ。
お肉ジュージュー。お前は十分に役目を果たしたさ……。安心してムラクモちゃんの血肉になっておくれやす。
「……うん、いいにおい。おいしそうに焼けてる」
【調理時間短すぎて草】
【本当か? それ本当においしそうなのか?】
【炭化したミノタウロスのはく製みたいな外見で草。……え? これ食うの? 今から?】
【外真っ黒だけど、たぶん中は半生だぞ。デスクッキングロリ、頼むからもっとちゃんと調理してくれ】
【↑ また新しい蔑称増えてて草】
【“ある意味”才能を感じさせるクッキングだな……】
実はねえ、牛肉についてはムラクモちゃん、けっこう詳しいよ。
あれでしょ。サーロインとかリブロースとか、カルビとかあるんでしょ。知ってる知ってる。
でさ、サーロインってステーキにするとおいしいっていうじゃない。なら、一番最初はそこかなって。
つーことで食べてみようと思うんだけど……どの部位がサーロイン? むーん、わからんちん。……化けの皮がはがれたな、知ったかぶりムラクモっ。ペナルティとして命をいただくぜ!
……罰が重すぎ!
うむむぅ。
ちょろっち考えて見たけど、まるでわかんなかったので、もう適当でいいやって。
とりあえず丸焼きくんの左腕をぶちぶちーって千切っちゃう。……あ、まだけっこう赤いかも。
……なるほどなー。これがレアな焼き加減ってことか。感覚でたどり着いたわたしもレアな存在……なんつって。
そんでそんで、あーん、とお口を開けて、モムモム。……うん、おいしい。84点ってところかな。
味はねぇ、なんでかすっごい辛い。舌が痺れるくらい辛い。
これってどうしてなの? それはね、ムラクモちゃん。この世知辛い世の中に生きる生物は、知らず知らずのうちにお肉を辛くしてしまうものなのよ。……じゃあムラクモちゃんのお肉はとっても甘いよ! だってこんなにもプリティ! ……ホントぉ?
「おいしい」
【そういやこの子、半年間アリンコ鍋で生きてた子だった】
【食べ方無駄に上品で草。……え? そこは豪快にかぶりついたりするんじゃないの?】
【バーバリアンロリは蛮族だが、ロリなんだぞ。お年頃なんだから、食べ方に気を遣いもするだろ】
【↑ 擁護するようで罵倒してて草】
【なんかムラクモちゃんがあんまりおいしそうに食べるから、俺も食べたくなってきたゾ……】
【↑ やめとけ。頭タイラントになってるぞ】
……。
左腕を食べ終わったらね、次は脚のお肉でも食べてみようかなって思ったの。
ムラクモちゃんが大好きな鳥のお肉は脚が一番おいしいからね。きっと牛も脚が一番おいしいんだ、間違いないね!
真理探究の結論が出たので、ウシくんを引き千切ろうって思った時だったの。
「……」
【ムラクモちゃん?】
【……デスクッキングロリが食事の手を止めた? そんな馬鹿な!】
【腹を下したか? だからそんなの食うなって言ったのに】
人の気配だよ。
……敵意は感じないな。ついでに言うと、悪意も。なんなら、死にかけてるっぽい感じかも。魔力の循環っていうのかな、それがすごい弱くなっとる。
……ご飯は一時中断だよ。
くたばり損ないでも魔法少女。こんな場所だし、余計なお世話になっちゃうかもしんないけど、助けさせてもらっちゃお。




