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【配信】ダンジョン最下層を攻略しちゃう件・2

 わたし、華亥ムラクモ♡ プリティ笑顔とポジティブシンキングがトレードマークの、今日に輝く女の子♡



【あ! 誰か倒れてるよ、ムラクモちゃん!】

【もしかしてタイラントロリ……この人がヤバそうだってわかってたんか?】

【↑ ここに来るまで全く迷ってる様子なかったし、たぶん気配とか読めるんだろ。……達人かな?】

【この人、こんな奥まで入り込んで、よく無事だったな……未踏領域やぞ】



 死にかけっぽい気配のところに来てみたの。

 場所はね、けっこう歩いた先のズラリズラリってたくさんある小部屋のひとつ。そのお部屋のすみっこ……壁にもたれかかる感じでね、学者っぽい格好の女の人が気を失っとる。


 チラチラ。

 ……うーん。ざっとだけどね、見たところ致命傷だなって傷は無さそうな感じ。でもすごい弱ってるし、体力の問題かも。……ふむむ。ムラクモちゃんと一緒で遭難中の人なのかしら。

 とりあえずここじゃなんだし、ムラクモルーム(神命名)に連れてったげよ。

 ……えっ? 同意も得ずに連れてくの? それって誘拐・拉致では? 誘拐犯ムラクモめ! 逮捕してやる! ガッチャーン。わーん、ゆるちて。

 気を失ってるからわかんないけど、この人、腕に覚えアリって人かもしんないもんね。……だから余計なお世話になっちゃうかもだけど、ゆるせよ。ムラクモちゃんにだって信念がある。魔法少女的コンプライアンスって信念がな……ふっ。


 ということで、よっとこらどっこいしょ、って担ぎ上げて……ムラクモちゃん、世界の真理にたどり着いちゃった。それってなぁに?

 考えなしに来ちゃったから、帰り道がわからにゃいってことでござんす。

 ただでさえ迷子なのに、二重に迷子になっちゃった……。うえーん、しくしく。


 えーえー。保護者の方にお知らせお知らせ。穴ぼこダンジョン迷子センターにムラクモちゃんが来ていまぁーす。見た目はラブリーでプリティ。バッチシ決まった服装の美少女ちゃんです。保護者の方は迷子センターまでお越しくださぁーい。なんちゃって。

 ……まぁ、ムラクモちゃんに迎えに来てくれる保護者なんていないけどね。ゲボヘドロのインセクト野郎においしく食べられちゃったもの。


 ……なんてこったい!

 じゃあムラクモちゃんの迷子は誰が助けてくれるの? ダンジョン探索は自己責任って言ったでしょ! ……世知辛い世の中だぁ。



【タイラントロリがまた途方に暮れてる……】

【……その人、最下層に来るような装備じゃねぇな。せいぜいが上層レベルだ。転移トラップでも踏んだか?】

【ぼっちなところ見るに、ソロ専か? パーティ組んでたなら……うん。ご愁傷さまってところかね】

【もしかしてだけど、タイラントロリって、人命救助に積極的なんか?】



 担ぎ上げたおねーさん……遭難者先輩。長いな。……ソナ先でいいや。ソナ先を下ろしちゃう。ゆっくり、優しくね。きゃっ、ムラクモちゃんったら淑女的! レディ・ムラクモって呼んでもいいよ。

 ムラクモちゃんね、ちょろっち学習しちゃった。

 ダンジョンじゃ、適当に歩き回っても出口には着かないんだよ。……やばいよね。目からうろこが落ちたような気分だぁ。


 帰り道がわからないんじゃ、しょうがぬえ。ムラクモルームとはお別れの時が来たようだな。短い間だったが、悪くない住み心地だったぜ。

 それと……置き去りにした丸焼きくんよ、すまない。君のもとにムラクモちゃんは帰れない……。食品違法投棄わたし。

 とりま、身体冷やしたらいけないしねってことで、焚き火でも作ろうかな……って思ったけど、ムラクモちゃんってばほぼ丸腰。可燃物とか持ってない。そんな状態でムラクモちゃんファイア! って火炎放射したら、暗くてジメジメの小部屋がたちまち直火式サウナに早変わりしちゃうよ。それはいけない。

 ……とりあえず回復魔法かけとこ。きゅいーん。


 なんかもう、いっそのこと天井ぶち抜いて帰っちゃおうかな……。

 でも、メガネさんにはダンジョン壊すなって怒られてるし……。でもでも、遭難者見つけましたよって言ったら情状酌量の余地が出る? ううーん、悩ましいたけ。


「ん……んんっ」

「……あ、起きた」


【お?】

【遭難者(仮)さん、周りキョロキョロで草】

【↑ 遭難してんのはムラクモちゃんも一緒だろ! ……俺新参なんだけど、この子の配信っていつもこんなメチャクチャなの?】

【↑ そうだぞ(無慈悲)。タイラントロリがなんで頭トロール扱いされてるかわかったか?】

【で、でもムラクモちゃんは妖精さんみたいにかわいいから!】

【↑ 見た目“だけ”はな】



 ムラクモちゃんがねぇ、ムシケラ級知能を使って神算鬼謀を巡らせてたら、入っちゃう横槍。

 何者だ! 名を名乗りんしゃい! ソナ先と申しまするー! ならば我こそは華亥ムラクモなるぞ! プリティスマイルを馳走してくれるわ! そーれ、にこー!


「ひっ……」

「……今のちょっと傷ついた」



【かわいい】

【ちょっとぎごちないけど、笑顔かわいい】

【いや、ムラクモちゃん……。遭難者さんの状況的に、その笑顔はホラーなのよ……】

【これが王都を脱走モンスターから救った英雄の現実リアルか……】

【ムラクモちゃん大丈夫? 人間の会話できる?】



 まったく失礼しちゃうわね! ぷんすかぷんぷん! せっかくのムラクモちゃんスマイルを無駄にしちゃうなんて! ゆるせぬ! ごごごごご……!


 まあいいや。

 ……うん。とりあえずの危機は去ってそう。回復魔法……っていうか、魔力の譲渡に近いんだけど、それをやったから、すぐに衰弱死しちゃうことはないと思うのん。生命力をね、強化した感じ。

 ……ただ、失った栄養まで回復するわけじゃないから、あんまりダンジョンに長居したんまんまだと、やっぱりよくない。


 ……こ、これは人助けだぜ。

 決してムラクモちゃん個人の望みでなく、人命救助のためにダンジョン破壊をしようってのだ!

 免罪符見つけちゃったとか思ってないよぉ。ホントホント。ワタシウソつかないヨー。とっても健全で安全な方法だヨー。ユー、脱出しちゃいなYO!


 はい。

 そうと決めたらね、いざ、鎌倉! 天井ぶち抜いたろって、思った時だよ。


「あっ……。も、もしかして、“暴君”?」

「ん。……ちょっと待ってね、天井抜いてくる」

「えっ!?」



【【悲報】ダンジョンくん、再びタイラントロリに崩落させられる】

【いや……でも、この状況じゃ仕方ないか……?】

【だが、ダンジョンは国家財産やぞ。一度目は言い訳がついたっぽいからともかく、二度、三度って繰り返したらタイラントロリの立場なくなるやろ】

【で、でもよぉ……。タイラントロリだから「まあなんとかなるやろ」って俺達も笑ってるけど、これ普通にヤバい状況だし……】



 身体の具合を確かめてたっぽいソナ先がねぇ、おそるおそるって感じで言ってきたのん。ふっ。バレちゃあ仕方ねぇ。

 このプリティフェイスに見覚えがあろう! そうです! わたしがとってもすごい級最強魔法少女! ムラクモちゃんであるぞ!


 話逸れちゃった。

 ソナ先ね、透明の板とムラクモちゃんとでお目々をせわしなく行ったり来たりさせとる。なんだかとっても挙動不審。お前ムラクモに言われるなんて、世も末だな。

 まぁちょっとお待ちなさいよ、すぐに帰れるからねって、再びスマイル。貴殿、さっきのドン引きは何かの間違いだったんでしょ? ほら見て、こんなにプリティ♡

 そしたら普通にスルー。まあ、いいけどね。気にしてないけどね、うん。

 ところで、ソナ先ったら「あっ、ま、ま待ってください」って。


 どしたの?

 って聞いてみたらね、なんかテレポーターのある部屋見たっていうじゃない。

 ええやん! それマジでおじゃるの?

 なんだいなんだい! 正規の出口知ってる人いるんなら、そこから帰ったらいいね! ムラクモちゃんとソナ先はおうちに帰れてハッピー! メガネさんもダンジョン無事でハッピー! 大団円だあ。


 どこよどこよ! って催促してみたらねぇ。なんでかしら? ちょっと言いづらそうに言葉濁してたけど……。でも話してくれたよ。


「あっ、て転移陣は……最深部。ボ、ボス部屋にありました……です。ただ……」

「ん?」

「あ、悪魔が……いたんです……。パーティの仲間……そいつにみんな殺されたんです……。あいつには勝てないです……だから私達、出られません……」


 そっかぁ。大変だったねえ。

 まあ、安心していいよ。何故ならムラクモちゃんは最強だから! 最強……それはデビルバスター。どーまん・せーまん。……ここ海じゃないけどねえ。

 ところでムラクモちゃん、悪魔って見たことない。

 地球にだってけっこう色々いたけど、悪魔とか天使っていなかったのん。宇宙ドデカ虫とか改造人間はたくさんいたけどねぇ。地底人とかね。


 そいつどんな外見なんざましょ。ちょろっち気になりますわね……。

 なんか……黒と紫の丸っこいデザインなやつ? ビキニとか着てる感じの色っぽいおねーさん? もしかして……筋肉マッチョの角イケメンとか?

 急にファンタジー強度上げてきたな、この異世界。



【興味津々で草】

【タイラントロリ、いつになく真剣に話聞いてて笑う】

【遭難者ちゃんはああ言うけど……まぁ、どんな怪物来ても何とかなるやろ。正直、タイラントロリが負ける姿想像できんし】

【遭難者ちゃんキョドってて草。まるで俺みたいだぁ……うっ】

【↑ 涙拭けよ】



 ───



 ということでね。

 ソナ先の道案内でダークネス地底街道を行く。


 いままでのムラクモちゃんはなんだったんだってくらいにね、サクサク進むよ。快進快進、会心の一撃だー!

 うん。

 正直、ムラクモちゃん的には進めど進めど景色変わんないから、進んでる気あんましてないケド……。黙れ小娘! 素人がプロのやることに口を挟むでないよ! ひーん、ごめんちゃい。


 エイヤーホッホ、エイヤーホッホ。

 モンスターくんを千切りつつ、千切りつつ。しばらく歩くとね、結構暗めのゾーンに出たよ。やっぱしソナ先は正しかったんや!

 うん。……もちろんムラクモちゃん、信じてたケドね。ソナ先の道案内が、我々の運命を救ってくれるんだって。嘘をつけ! 噓つきには……天誅だー! 酸の池を食らえ! うわー、どぼーん。


 暗かったからね。……暗かったからだよ。足滑らせて池ポチャしちゃったのん。

 いやーお恥ずかしい(ガチ照れ)。ムラクモちゃんは最強なので、常にスタイリッシュなアクションを心がけてるんだけど、プリティ少女がゆえに、たまにかわいげ要素として、ドジっ子しちゃう。

 失敗はけっこうよくあることだけど、目の前に人がいて、目撃されちゃうと恥ずかしいもんだね。いやん、えっち!

 ふーやれやれ、未熟者ムラクモ。早いとこ服、魔法で乾かせよ! ……はい。

 くらえ! 温風魔法! ボーボー。……ちょっと温度高いかな? ちょい熱い。あちち。

 

 そんなんやってたらね、ソナ先ってば控えめな感じで声をかけてきたの。なぁに? 今ちょっと忙しいのん。


「あっ、だ大丈夫……? そこ、酸の池……」

「どってことない。……服乾かすから待ってね」

「えぇ……(戦慄)」



【そこ危ないから気をつけてねって言われたそばから引っかかってて大草原。いや、本当は笑えない事態のはずなんだが……】

【↑ タイラントロリは基本的に他人の話を聞かないぞ。アーカイブ漁ってみろ。ちょいちょい他の探索者とかち合ってるけど、会話までこぎつくこと稀だからな】

【遭難者ちゃん、終始困惑しててかわいそう。すいませんね、うちの子が】



 ───



 そんなこんなでこんなに遭難? はい、絶賛迷子中!

 わかんないけど、たぶんボス部屋に向かって一直線に進んでると思うんだよね。ソナ先が案内してくれるからにはね。

 それでもねえ、けっこう時間経っちゃったような気がするぜよ。お腹の減り具合から考えて、丸一日くらいは過ぎたんじゃないかなーって。

 ……ちょっと思ったけど、下に行くほど広くなるって……地底ピラミッド型ダンジョンって感じするね。じゃあソナ先の言う悪魔って、アンデッドだったりするのん? ファラオ・モンスターとか出てくる? ザイオン遺跡で破壊されたロマンと出会っちゃうの?

 運命……それは甘く切ない……腐臭。なんつって。


 ……ところで。


「……」

「え、あっ、あの……?」



【お、てぇてぇか?】

【タイラントロリが遭難者ちゃんを凝視してる……】

【レイラたんが嫉妬と怒りで覚醒しちゃいそうな光景だぁ……】

【これ、けっこう珍しいことだぞ】



 ……魔力の循環は安定してるみたい。なら、譲渡はまだ必要なさそう。……魔力譲渡って、あんまりやると身体に負担かかるから、やらないに越したことない。

 ……ソナ先ってば病み上がりどころか、病み真っ最中だし……これ以上時間かけたくないかも。

 ……。


「……ね。ボスの部屋って……まだかかる?」

「あっ、はい。そうですね……正確なところはわかりませんけど、もう距離の半分は超えたと思います……って、ちょ。きゃっ」

「うん。……どっち行ったらいいの?」

「ちょ……お、降ろしてくれませんか?」


 急ぎの用事できちゃった。

 なので、嫌がるソナ先を再びよっとこらどっこいしょって担いじゃう。この外道! 悪人! 誘拐犯ムラクモ! ……誘拐はしてないよぉ。

 申し訳ないけどねえ、一身上の都合で早く帰りたいので、そのお願いは聞きませーん。ゆるしてちょんまげ。

 念押しにもっかい「どっち行ったらいいの」って聞いたらね、諦めてくれたのかな。「北です」って。

 そっかぁ。そんじゃ、北の方に向かってダッシュダッシュゴーゴー!


 ……ところで、北ってどの方向?

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