第81話 完成と帰還
貴族のご子息として入学前にニルバ王国の歴史をしっかり履修していたカイン君から聞いた話により、『魔族』について僕は、初めて知る事が出来た。
リント王国で生まれ育った僕は、魔力が多い人族こそ世界の中心みたいに聞いていたのであるが、それはエルフ族に憧れてエルフ族と人族の混血であるハーフエルフがリント王国の始まりに関わっている為に、エルフ族基準の価値観であり、昔にエルフ族とイザコザがあったドワーフ族は野蛮な種族という扱いなのは理解出来る。
だけど、実はリント王国として獣人達の国と戦争があったよりも遥か太古の昔に、既に世界を揺るがすほどの大きな種族間の争いが獣人族とあったそうなのである。
しかし、その歴史はリント王国では昔話程度にしか伝わっておらず、もっぱら学校で習う歴史としては、ドワーフ族とエルフ族の戦争でエルフに味方した時にリント王国が誕生し、人族を統一しようと、ドワーフに味方していた小国を吸収しながら東に進出している最中に、南方の野蛮な獣人との戦争により現在の国境になり、リント王国から離反したヤツや残りの小国が集まりニルバ王国を作ったとしか習わず、獣人族については、
『獣人は野蛮な種族…以上!』
と、どう考えても片寄った教育をされているとは気付いていたが、それは何故かと深く考える事はなかったのである。
しかし、獣人族と人族は勿論、ドワーフ族とも仲良く暮らしていた地域の方々とも種族的にも文化的にも混ざりあって生まれたニルバ王国では、獣人族の歴史も詳しく学んでいる為に、獣人族は1つの種族と判断しないらしく、まず身体能力が高い肉食系の獣人族と、バランス型の雑食系の獣人族や、ギフト無しでも嗅覚や聴覚により気配が分かる草食系の獣人など種類…というか国が存在する。
その中でもゼルエルガさんの様に立派な黒い角が有る獣人族は特別であり、白い角の同じ様な山羊や羊系の獣人族とも全く違う種族なのだそうで、一般的な獣人族にある肉体の強さは無いが、代わりにエルフの様な高い魔力を持つ為に『魔族』や『霊獣族』などと昔は獣人族界隈の中でも完全に別の種族として呼ばれていたそうで、彼らはそう呼ばれる事に大変誇りを持っているのだそうなのだ。
まぁ、現在の獣人族が小国単位で独自の文化を育んでいる為に隣の国は別の種族扱いとなり、魔族という呼び方は最近ではあまりされないらしく、
「久しぶりに初対面でもワタクシを魔族と呼んでくれる違いの解る男性に会いましたわっ♪」
と喜ぶゼルエルガさんにバラッドさんは、
「へへっ、でも惚れちゃイケませんぜ…私にはキミーという可愛い女房が居ますから…」
などと、楽しげにしていたのである。
『可愛い…』
と、一瞬失礼なセリフが頭を過りそうになるのを我慢した僕は、
『へぇ~、知らなかった…まぁ、エルフさん的にはキャラ被りの敵対種族だし、魔力至上主義のリント王国としても下に見ていたい獣人族に神と同じ様に崇めるエルフ族みたいな高い魔力量の方々が居るなんて秘密にしたいか…』
とカイン君の説明に納得したのであるが…それよりも、
「えっ、カイン君って学校に行ってたんだよね…まだ卒業する歳じゃ無いのに、大丈夫なの?」
と、どう考えてもまだ貴族であれば学生をしている年齢の少年がこんな国の端っこの田舎に来ている事に驚いたのであるが、彼はゼルエルガさんと魔法の修行を第一に考えており、
「進学テストで上位に入れば出席日数は問題に成りませんし、たとえ留年しても勉強は後から頑張れば追い付けますし、追い越して飛び級で卒業も可能です」
と自信満々に答えていたのであった。
『あぁ、賢いお子さまだったか…しかし、ニルバ王国には飛び級制度があるんだね…僕が行っていた学校にも有れば卒業出来ていたかも…』
と、自分の学生生活を振り返ってしまい、少し寂しい気持ちになったのは皆には内緒である。
それからは、カイン君は魔力訓練装置をクルクル回しては軽く眠る日々を送っており、ゼルエルガさんも、
「これまでは知識しかカインに教えてやれなかったが、これで魔法の感覚を教える事ができます」
と、あの訓練装置の効果を喜んでくれている。
それと並行してライト兄さんを中心に我が家の敷地内在住の職人達により、従来の木箱タイプではなく革製のランドセル風に擬態させた魔石タンクに、ややゴツく見える左手の鉄製鎧の様な腕を隠す為の片方だけのマントなどと、修復の時にだけ使用するラベル先生の試作品ではなく四六時中身につけていても違和感の少ないカイン君の魔力供給魔道具が完成したのである。
「なんか滅茶苦茶カッコ良いな…」
と僕も欲しくなったが、
『いや…リペアの魔法の為だけにこれは必要ないか…』
と、魔物との戦いの場所で使えないので諦めたのであるが、
『あれ…これって、魔力量が少なくて困っている魔法系ギフトの方々が欲しがるはずだよね!』
と閃き、ゼルエルガさんに、
「こんな感じの魔道具って売れますかね?」
と相談すると、実際にカイン君が魔道具を使いバズーカ並みのストーンバレットを撃ち出したのを見た彼女は、
「国の魔法師も魔法師になる事を諦めたギフト所持者も全員欲しがります…現にワタクシも自分用の物は使用する革や腕の鎧部分の素材やマントの色などにこだわった物を注文出来るならお金なんていくらでも…」
と言ってくれたので、
『ヨシ、テイカーさん達が帰ってきてからの相談になるが、彼の商会の独占販売にしてもらう契約にして、我が家の職人さんのお小遣い稼ぎにするかな…』
と決めたのであった。
それから数日後、ライト兄さんがポンコツになってしまう為に無理矢理送り出したイデアさん親子とテイカーさんが、タンカランダンジョンから我が家の男の子冒険者チームと引率のリーグさんを連れて帰ってきたのである。
彼らは幌馬車にパンパンにお土産を乗せており、男の子冒険者チームの三人は、
「主殿、見て!」
と各自に自前のマジックバックを僕に見せ、
「マーチンの町でグラーナって魔物を狩って…」
などと楽しそうに報告をしてくれる間も幌馬車からバルディオさんやリーグさんの手により降ろされる荷物の山を見て、
「これは?」
と思わず聞いてしまう僕に商人のテイカーさんが、
「タンカランダンジョンで硬い敵のせいで壊れた武器の山を今までは再利用していたらしいのですが、ダンジョンを利用する冒険者が九階層のゴーレムコア狙いの順番待ちの間に鉱石掘りも行い潤沢に鉱石が使えるの為に村で再利用されない物を仕入れて来ました…あと…」
と、手紙の束を僕にさ仕出したテイカーさんは、
「帰りの道中でマーチンの町を襲っていた二匹の大型の蛇魔物の討伐をお手伝いしたのですが…地元のケントという少年がリーグさんの事を知っていたのを皮切りに、旦那様の話になり…」
と、どうやらカエル魔物討伐で稼いだ町が襲われていたのを助けたいと
子供チームがゴネたのをバルディオさんとイデアさんが助っ人に入って大型の蛇魔物を討伐した後のお疲れ様の宴で僕の関係者と判明して、釣竿作りの名人会チームからの報告書を託されたらしく、
『竿の改良についての報告』
や、
『疑似餌のバリエーションについての報告』
などの書類に混ざり、
『冒険者ジョン殿へ』
という封蝋が押しある貴族からの手紙が出てきて、
「何、何、怖い、怖い!」
と狼狽える僕に、テイカーさんは、
「いや、旦那様も怖いかもしれませんが、私はそれを渡される為にいきなり騎士団の方々に連行されて…」
と、その時を思い出して青くなる彼を見て、
「うん…なんか…ゴメン…」
と、何かしらやらかしたであろう自分の件に巻き込んだ事を謝罪したのであった。
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