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修復ギフト持ちの貴族の息子でしたが追放されました  作者: ヒコしろう


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第164話 母の語る物語

『長旅で疲れたのか、体調が優れないので…』


という理由でとりあえず居心地の悪いこの部屋に籠っているのであるが、


『あの女があんなに楽しげに話しかけて来たという事は、何かしら有ると考えた方が自然だ…もしも、たまたま国の依頼でもてなしたメンバーに僕が居たとしても、あの自分にしか興味の無いような人間ならば、用事がない場合は興味がない僕という存在にわざわざ話しかけるという手間など絶対しないのは知っている…』


という事で、旅用の服装から冒険用の地竜の皮で作ってもらった服に着替え、胸当てなど簡単な装備だけでも身に付けていざという場合に備えてみる。


「取り越し苦労になるならそれで良いが…」


とポツリと呟きながら、念のために部屋の隅々をチェックして回ってみると、


『なんか視線を感じる気がするな…前世ならば部屋の壁の鏡がマジックミラーとかあるだろうが、こっちの世界にも有るのかな?』


とか、


『壁の絵の人物画の目が除き穴になってたり…壺に盗聴器とか…』


などと、僕一人しか居ない部屋の中で色々気になりウロウロしてしまう。


部屋の担当メイドさんには、


「寝るので…」


と明日の朝まで入室を拒否しているし、視察団の方々にも下手に巻き込まないように明日の朝まで各自警戒だけしてこの部屋には近づかない様に頼んであるので、


『誰か来た時点で厄介事だろうが…出来る事なら何事もなく朝まで過ごしたいな…』


と、ウロウロするのにも飽きたので野宿の時に焚き火の番でもするように寝ずに朝まで過ごす覚悟をして、とりあえず部屋の隅の床に壁を背にして座り、前方の入り口付近を警戒して過ごす。


そして夜更けにそれはやって来た。


正直部屋の壁を警戒してチェックしていた自分がバカらしくなるぐらいに、正面の入り口から堂々とノックも無しにガチャリと扉を開けて、魔石ランプがヌッと差し込まれると同時に二人の騎士が入室し、壁際の僕を見つけると後ろに控えている人間に、


「暫しお待ち下さい」


と、入室を止めるのだが、騎士の背後からは、


「修復ギフトしかないクズに貴方達は何を怯えているのですか?」


と聞き覚えのある声がする。


『ご本人が直接登場とは…』


と呆れながら僕は床から立ち上がり、


「一応ニルバ王国からの国賓なのですがね…ノックもなく騎士連れで踏み込むとは…あまり褒められた事ではないですよ()()…」


と嫌みったらしく言ってやると、母は一瞬ピクリと眉を吊り上げたが、すぐに嫌らしい笑みを浮かべつつ、騎士の二人に『シッシ』とばかりに手で軽く合図を出しながら道を開けさせて、ゆっくりと部屋の中程まで入ってくると、


「体調が悪いと聞いて()が心配して様子を見に来るのは当たり前でしょう?」


と平然と『母だから』みたいな事を言ってくるが、僕は警戒を緩めないまま、


「母上が様子見ですかぁ、わぁ、ビックリだなぁ…生きてきて初めて母上に心配されたかも…幼少期より僕が熱でも出せば、『病気が移るから…』などと母上は実家に帰る口実にだけ使われて、様子を見に来ることなど…まぁ、百歩譲って僕の心配をして様子を見に来たにしては物々しいお供を従えておられる様に見受けられますが…」


と、女に向けて言ってやると、余裕ぶった声色から少しイライラした声に変わり、


「昔から変に大人びて気持ち悪いガキだったけど、こうも可愛く無いとは…」


と、徐々にいつもの雰囲気に戻りつつあるオバサンに、僕は、


「僕の知る()()はそうでなくっちゃ…でも、あまり眉間にシワを寄せながら相手を睨んでいると…あっ、もう年齢的にもそのシワは取れないか…」


などと煽ってやると、次の瞬間僕は後方に吹っ飛んだのであった。


護衛を引き連れて来た本人が護衛の騎士に、


「奥様!」


と諌められ、もう一人の騎士などは吹き飛んだ僕を心配したのか駆け寄ろうとしているが、コッチもそれなりに準備をしていたのでダメージは軽い…


『いや、母と言えどまだ三十八歳だから、お肌の曲がり角が気になるのは分かる…しかし、シワを茶化されたぐらいで手を出すとは…しかもグーで…』


という驚きでダメージとは関係なく呆然としてしまう。


相手はエルフ寄りのヒト族の為に体術の心得なのかギフトなのかは知らないが技のキレの割に威力としては獣人族の血を引く方々の比では無い…しかし、忘れてもらっては困るのが、僕もひ弱い事で名高いエルフ系の血を引くリント王国出身者なので、まぁ、それなりにダメージは軽いとはいえ母の顔面パンチにより吹っ飛ばされ鼻血を垂らしてしまっているのではある。


愛のムチというよりは、憎しみのこもった母からのナックルパンチをお見舞いされた僕は、


「酷いですね…これは国際問題になりますよ…戦争の原因だと言われたあのクソ親父のせいでニルバ王国でも肩身が狭かったのに、今度はどうしようもない母と自分自身が両国のイザコザの種になるのは気が引けますが…」


と、ニルバ王国の代表の一人としてリント王国に来ている自分に手を出した事について話す僕に、奴は再び嫌らしい笑みでこちらを見ると、


「あら、脅し?」


と、余裕の雰囲気で部屋にある椅子を引きそこにドカっと座り、


「ふぅ~…」


とタメ息をつきながら『やれやれ…』といったように肩をすくめてみせ、そして、


「まだ、この状況が良く分かってないようね…」


というと、僕に、


「まぁ、本題に入る前に少し昔話をしてあげましょう」


と言い、ニヤニヤしながらハンカチを投げて寄越し、


「それは、差し上げますので床が汚れないように鼻血を拭きなさい…」


と言って彼女は語り始めたのであった。


それは1人の貴族の少女が家の所属する派閥の指示を受けて、全く好きでも無い男の家に嫁ぐ所から始まり、指示通りにその家を弱体化させる為に金を湯水のように使い、その嫁いだ先の男性を派閥のエロ貴族達を満足させる為の違法奴隷を集めるというヤバい仕事をしなければならない迄に追い込むという目的を果たしたという内容から始まった。


だが、そのクソ女の話す物語の雲行きが怪しくなったのは、嫁ぐ前に愛し合っていた男性の父親が女に指示を出していた黒幕であり、その女から見てソイツは忌々しい存在であり、愛し合っていた男性から見ても邪魔な存在の一人だった為に、同じ敵を持つ二人は以前よりも深く引かれ合い今に至るという惚気話に聞こえなくもないが、これはアグノーティス伯爵家を乗っ取りたい男と、アグノーティス伯爵に恨みを持つ女が行った罪の告白に等しい内容であった。


兄である次期当主候補達の毒殺やアグノーティス伯爵の暗殺など、


『あれ、僕って今【冥土の土産】ってのを話されてないか?』


と、この後でサクッと殺されないか不安になる程の内容に少し戸惑うが、女は下品な笑顔で、


「あら、ジョンも喜びなさい…だって、あなたの家を落ちぶれさせて良いように使い捨てた組織の長であるアグノーティス伯爵を母が頑張ってこの手で殺してあげたのよ…」


などと、


『ほら、褒めて…』


とばかりに自慢気に僕に話すのであった。


鼻血はおろか、このゲス女に対しての様々な感情すら完璧に乾いた僕は、


「そんな事をベラベラ喋って大丈夫か? 僕はリント王へ謁見予定なんだぜ…」


と彼女を脅すが、すでにゲス女は勝利を確信しているらしく、


「それそれ、そうなのよ…なんだかあなたのお父様のあのハゲを斬首にして終わったはずだったのに、どこからか背後で操っていた組織が居るって国にバレて、下部組織を切り離して何とかなったけど、動き難くなっちゃってね…ダーリンが折角組織ごと全てを手に入れたのに…」


と言った後に僕に、


「たから…ジョンが私たちに協力してくれたら、ダーリンが親の代よりもっと動きやすくなると思うの…違法奴隷もダメになったし、戦争中で取り引きの禁止されていたニルバ王国からのマジックアイテムの密輸なんかでかなり稼いでいたのに、やっと組織も家も手に入ったのに今はリント王国からの監視が厳しくって…ダーリンが可哀想…」


と言って、そして、胸くその悪い笑顔で、


「新しいパパの為に貴方も頑張りなさいよ…ジョン…噂の追放賢者様ならあのハゲより上手に稼げるんじゃないの?」


と僕に微笑み、


「僕がそんな事に手を貸すとでも?」


という僕にゲス女は、


「あ~ら、断るの? 可愛いお耳の婚約者の命がどうなっても()()()は知りませんよ…」


と冷たく言い放ったのであった。



読んでいただき有り難うございます。


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頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。


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