第156話 いざリント王国へ
10日間程度の王都滞在にて、面倒臭い式典やらパーティーやらをなんとか乗り越えてリント王国へと旅立つ事が出来た。
『どうせまたカサールの町を通り過ぎてリント王国へ入るのならその時に合流で良かったのでは?』
とは思うが、あの式典や出発前のパーティーでの顔合わせが大事だったらしく、それに国王陛下や宰相様などが計画した僕をニルバ王国に繋ぎ止める為の貴族令嬢とのお見合いの為に呼び出されたのである。
しかし、リリーさんとのドッキリお見合いの失敗に対して僕が、昔に我が家へ仕方なく嫁に来たという自分の母親の件も持ち出して、
「国王陛下が絡んだら、嫌々お見合いに来る令嬢も居るはずです…誰も幸せに成らないこんな事を繰り返すのなら商会ごと他国へ引っ越します!」
と宣言し、
「そんな事をしなくても住みづらくならない限りはカサールの町に居ますから…」
という約束で何とか納得してもらったのである。
しかし、この僕のお見合いの件はメイドさんやら城の方々の関心事でもあったらしく、結局どこ経由かは分からないがベルの耳に入ってしまい、
「お兄ちゃん…お見合いって…何…」
と詰め寄られ、洗いざらい説明する事になったのであるが、どうやらお見合いの件を僕の口から先に知らされなかった事についてベルちゃんは大変ご立腹のご様子であり、その後はどこに行く時も僕について来ては、また変なイベントに巻き込まれないように微妙に殺気を放ちつつ僕の護衛をしてくれ、パーティーでも僕の隣に陣取り、ここ最近のベルの中で流行りなのか、
『ジョンの妻ですが…ナニか?』
みたいな顔や言動で、国王陛下達から何かお願いされたのか、
「実はジョン殿と同じ年頃の娘が…」
などと、僕に近づく貴族達を我が家の礼法指導員であるメリーさん直伝のリント王国式の見事な立ち振舞いで、
『おい、こんなちゃんとしたパートナーが居る前でそんな話が出来るなぁ…』
という無言の威圧にて追い返してくれたおかげで貴族絡みのゴタゴタに巻き込まれなくて済んだのは大変有り難かったが、ずっとベルの機嫌が微妙に悪かったのだけが悩みの種ではあった。
とまぁ、貴族の絡みは面倒臭い事ばかりだったが、王都に居る間にラベル先生の修復研究所にてヨゼフさんからマジックアイテムの話やらラベル先生からは修復ギフトの事についての話が出来て大変充実した時間を過ごせ、
「どうだ、正式に修復師の試験を受けてジョン殿もここで研究者として…」
などと誘われたのであるが、
『お誘いは大変光栄ですが、今さら正式な修復師免許なんて必要ないし王都での生活も全く興味が無いのでパスします』
というのが正直な感想であり、
「今のままで十分ですから…」
と断ると、隣でその日も護衛してくれていたベルの機嫌が少し戻ったので、
『確かに…王都に住む事になったら貴族のアレコレに巻き込まれそうだもん…断って正解だったな…』
などと、この様にベルのご機嫌を気にする事により僕も強い気持ちで権力の有る方々の誘いに対して、一旦落ち着いて考えてからしっかりと対応出来たのでピリピリしているベルも悪い事ばかりではなかったのかも知れない。
そんなピリピリムードのベルちゃんであるが、他の貴族などが周りに居なければいつも通りの雰囲気に戻り、今も王家から出してもらった貴族用の馬車の一台に僕と二人っきりの間は、
「お兄ちゃん、王様の家のご飯って、高そうだけどあんまりだったね…カサールに寄ったらダグさんに無理言ってリント王国にはもっと料理をマジックバッグに詰めていこうよ♪」
などとご機嫌である。
『ベルなりに気を張ってくれていたのだろう…』
と王都での彼女の頑張りに感謝しつつ僕は、
「それ良いね。 それなら何をお願いしようか…ベルはダグさんの料理で何が一番好きなんだい?」
などと、ベルが少しでも喜んでくれる様にご褒美の料理をダグさんに注文しようとメモを取り出して、
「この旅には騎士団の方々が居て軍の通信魔道具網でカサールの町まで連絡を飛ばせるからカサール子爵様に『王都を出ましたよ~』って連絡を入れるついでに我が家への伝言をお願いして、ダグさんに料理をマジックバッグパンパンに詰めておいてもらっちゃおう!」
とベルと二人で食べたいメニューのおねだりを考えるのであった。
さて、王都からの道のりは何の問題も無く、感想としては、
「高そうな貴族馬車でも我が家の幌馬車とそんなに乗り心地に大差がないな…」
という不満から窓の外の景色を眺めつつ、
『サスペンション付きの馬車とか良いかも…あとゴーレムのコックピットにもスプリング式のサスペンションとか入れたらもう少し乗り心地とか良くなるかな…いやいっそのこと足関節のフレームに…』
などと考えているうちにカサールの町まで到着したのであった。
今回のリント王国視察団はリント王国にてリント王国側のゴーレム使いとニルバ王国側の新型ゴーレムによる模擬戦闘を行い、
『これが先の戦争で実践投入されてたら…』
と、リント王国側に今のニルバ王国の力を見せつけ、
『こんな凄いのを作るきっかけとなった少年をわざわざ追放してくれて有り難う…』
と、ドヤる目的がニルバ王国側にはあり、ゴーレム騎士団のエリート部隊が中心となり、そこに文官の方や僕達がオマケとして同行しているので僕個人としては特にやることも無く、リント王国へ行って接待を受けるだけの簡単なお仕事である。
だが、カサール子爵様に王都からどのような連絡が入ったのかは知らないが、視察団の方々とお屋敷に挨拶に行った際に、カサール子爵家の方々から僕は個人的に、
「何があっても帰って来てくれ」
とか、
「くれぐれも甘い誘惑に負けない様に…」
などと釘を刺されたのであった。
『まぁ、最新の武器など国家機密に関わる発明には大概いっちょ噛みしている人間が数年前まで戦争していた国に行く…ましてやその人間が元々あちらの国出身とあれば気が気じゃないか…』
とは思うし、
『そんなに心配ならわざわざ行かさなくても!』
とも感じるが、そこは国としての柵とやらで、僕という人間をリント王国に行かせる事で、
『信頼してるよ』
とのアピールで戦争の種をひとつでも取り除けるのであれば仕方ないというのも理解は出来る。
だが、カサール子爵様から、
「ほれ、エルバート殿に頼んで、もしもの時用にエクストラポーションを二本作ってもらったので持ってゆけ…」
とか、
「新型のゴーレムをバラッド殿に注文していただろう…息子のクリストを向かわせて今日という日に間に合う様に調整したから…フレームのパーツなんかは最新のカサールタイプの物を提供したのでボディーはかなり早く仕上がったので、かなり調整に時間が使えたらしいから楽しみにしておいてくれ」
などと僕を戦地に送り出すかの様に色々と準備をしてくれていたのであった。
そうなると、接待を受けに行くだけのお気楽ムードの僕としても、
『えっ…大丈夫だよね…でも念のために今から我が家に帰って追加で色々とマジックバッグに詰め込んで行こう…』
と不安になってしまうのであった。
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