第150話 成長しました
春が来たかと思えば、我が家にて慌ただしく過ごしている間にカサールの町に夏の足音が直ぐそこまで近づく季節になってきている。
エルバート師匠にお願いしていたエクストラポーション2本は、弟子である大商会の元会長夫婦の人脈や、息子である現会長に孫嫁の実家である金持ちの商会の尽力によりあっという間に残りの素材が集まり、弟子達の目の前でエルバート師匠が見事に完成させて下さった。
そして先日、右手を失ったサイ顔の獣人であるダダンさんと、片足を失った狐顔の獣人であるコリンさんに飲んでもらい無事に二人とも完全復活となり、これでダダンさんはカサール建設にて本格的に建設用ゴーレムの訓練を受ける事が出来、そして失恋の痛みも忘れた頃にウチの商会の従業員として来てくれているコリンさんの妹であるムムさんが森の民としての本能を爆発させてダダンさんを狙う恋の狩人となる予定である。
ダダンさんやコリンさんは完全復活したので、
『いや、狩人として復帰出来るだろう…』
とも思うが、ダダンさんとしては今回の地竜の襲撃みたいな悲劇を繰り返さないように建設用ゴーレムで集落を守る壁を作れるようになりたいという強い意志があり、妹の恋の行く末が心配でついてきたコリンさんはエクストラポーションの件でダダンさんとムムさんの事も、
「もう二人の問題なので…」
などと言い出し、
「オラはそれより大恩人である旦那様のお役に立ちたい」
と、商会の手伝いや我が家の雑用など進んでやってくれており正直な話、計算もあまり得意ではなく商会の従業員として計算を教える所から始めている妹のムムさんと違い、計算も出来て人当たりも良く、更に弓の名人であるのでコリンさんを行商として各地に派遣したい程であるが、彼は、
「オラは旦那様の使用人になりたいのです」
と懇願するので、今は商会ではなくて我が家のメンバーとして弓を担いで畑や果樹園エリアの鳥や虫魔物の見回りをしたり、手先が器用で力持ちという彼のオールマイティーさを生かしてメリーさんなど我が家の女性陣のお手伝いを頑張ってくれており大変助かっている。
さて、ダダンさんとムムさんの恋の方はまだまだ掛かりそうであるが、現在我が家の女性陣は春を過ぎて夏が近づく季節同様にアツアツになっている料理人のダグさんと、今ではAランク冒険者の仲間入りをしたトリシャさんとの主にキッチンあたりで繰り広げられている恋模様を遠くから眺めるのが流行っており、リーグさんまで、
「トリシャさんは将来ダグと料理屋をやりたいらしいですね…」
などと僕に報告してくる程に我が家で一番の話題はあの二人である。
まぁ、ブレブレだったダグさんの味付けが最近落ち着いて来たので彼なりに何か決心がついたのであろうが…僕としては我が家にはちびっ子も思春期の子供も居るのでラブラブするのは控えて欲しい気もする。
『シルフちゃん、ジョイくん、エレナちゃんの三名は元気に成長し、今ではパトラッシュ達の散歩などお手伝いが出来るまでになっているし、お話もバリバリ出来る為に近所で何を報告して回るか…』
と心配でもあるが、
『パトラッシュ達が護衛がわりであるが誰も付き添わずに新町の中ぐらいなら歩き回れるまでになったんだなぁ…』
と嬉しくも感じている。
さて成長と言えば我が家の学生組なのだが、実は学校に通いだして直ぐにでも飛び級で進級して下手をすれば卒業出来る程の学力も有ったのであるが、
「学校で出来る仲間も大切だし、将来の夢とか考える時間にもなるから…」
と半ば強制的に卒業試験を受けずに通わせていたのであるが、各自やりたい事も見つかったらしいので昨日卒業試験を受けて、カサールの学校で最初の卒業生となり年齢とは関係なく立派な大人として世間様にカウントされる人物となったのである。
試験にパスすれば城に文官として勤めたり、騎士団に採用されればまずは見習いとして働けたりもするのであるが、バート君とデニス君の男の子組は、
「これでアル兄ちゃんと旅が出来る」
「そうそう、兄ちゃんだけ主殿と旅に行けて羨ましかったんだから!」
などと、商人として働くアル君と商人兼、冒険者という事で再びチームを組みたいそうで、デニス君に至っては火の魔法ギフトと高い学力の為に先生方は王都の学校へ編入しニルバ王国軍の魔法師団への入団を薦めたらしいのであるが、
「興味ないので…」
とその話を蹴ったのである。
その代わりに王都の学校に編入する事になったのが女の子組のララちゃんであり、彼女は歌のギフトを活かす為に国立の楽団を目指すらしく貴族の前で歌う事もある為に平民主体のカサールの学校ではなく礼儀作法まで学べる王都の学校へと編入する事になったのだ。
そして相棒であったターニャちゃんも、
「ララちゃんが行くのなら…」
と若干フワフワした理由であるが、王都の学校へと編入する事になったのであるが、先生方としてはララちゃんより年下のターニャちゃんが卒業試験にパス出来た事に驚き、
『彼女の学力なら王都の学校でも才女として…』
と期待しているらしく、王都での二人の事は有難い事にロイド君パパ…つまりボトム公爵家が見てくれるそうで、公爵家がバックについてくれているのなら平民だという理由から貴族がゴロゴロ居る都会の学校で舐められる心配もなく二人を送り出せるのだが…我が家にはもう一人女の子が居る…そうベルである。
出会った頃は『ベルちゃん』であったのに、一年ほど留守にしている間に完璧に『ベルさん』へと成長した彼女が普通に、
「お兄ちゃん、もう前使ってた魔合金の鎧が着れなくなってるからバラッドさんに注文するね…」
などと、冒険者に戻る準備をはじめているのである。
僕は思わず、
「いやいや、何かやりたい事とか…そうだよ将来の夢とか…」
と、わざわざ不安定で危険な冒険者なんかに戻らなくてもベルならばカサール騎士団にでもフリーパスで入れる程強いし、勉強も頑張っていたのを知っているから商人だって錬金術師にだって成れるはずである。
しかし、彼女は、
「えっ、お兄ちゃんと一緒に居たいし、将来の夢はお嫁さんだから…」
と、進学や就職には興味がないらしく、ここに愛に生きる冒険者であるトリシャさんと同じ路線を歩む十四歳の乙女冒険者が爆誕したのであった。
『まぁ、ベルがそうしたいのならお兄ちゃんは全力で応援するよ…』
という事で久しぶりにベルと正式な冒険者パーティーを組んだのであるが、僕がまだ硬さに全振りな魔合金の鎧を使えているのに、ベルは完全に前の装備は使える体型ではなく、当面は有り合わせの魔鉱鉄の鎧とプラスして我が家の倉庫に有る魔合金のマジックアイテムでステータスを底上げして対応する事になり、新装備を作るバラッドさんも、
「丁度地竜の素材も入ったから凄い魔合金の装備をベル師匠に作るから!」
と、今もキミーさんとの再婚の背中を押してくれたベルに感謝しているらしく、
『最高の装備を作る』
と鼻息を荒くしているのであるが…
『バラッドさん…それは僕の新型ゴーレムの為の素材でして…』
とは思うが、どうやら僕の新型ゴーレムは後回しとなりベルの装備の残りで作られる事に決定した事をなんとなく肌で感じる僕であった。
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