第134話 色々あったが
微妙にカッコ悪い結果となった喧嘩であったが、僕が痛い目を見た分の見返りと言えばいいのか、ワグナのご領主様が中心となり下町の方々による壊れたマジックアイテムの回収や買い取りについての諸々を引き受けてくたので少しは報われた気分である。
まぁ、ご領主様としては配下の準男爵の息子が、仲間と共に公爵家の息子であるロイド君のパーティーメンバーであり、新型ゴーレムやら魔力供給魔道具やらで国王陛下にも知られている僕をタコ殴りしたとあれば、
『なんとか巻き返さないと!』
と焦ったのか、
「ジョン殿の提案として先日王都に送り出したヨゼフ殿が修復するためのマジックアイテムを我が領内から出る廃品の中から回収する機構を作ればよろしいのですな」
と、ロイド君達が交渉役として関わってくれたのもあるだろうが、これだけ迅速に動いてくれて、下町にゴミの分別場を作って、近隣で暮らす方々を回収と分別の為の労働力として雇ってくれたのである。
各ゴミ置き場から回収された鉄屑は直接職人に売らずに鍛冶ギルド経由で今まで通りの値段で若手や見習いを優先で販売し、捨てられていた魔鉱鉄系の装備は今までは年に何度かご領主様が費用を出して、
『捨てられている魔鉱鉄製品から不純物を取り出す作業』
をして純粋な鉄のインゴットにしてから鍛冶ギルドに販売していたらしいのだが、
「本当に引き取って頂けるのですか?」
と、ご領主様としても鋳潰してインゴットにする代金の方が高くつき赤字になっていたのに、買い取りに関しては、ゴミの資源保全とバカみたいに魔鉱鉄の装備を回収して儲け過ぎる人が出ない様に、
【1人につき1ヶ月幾らまで】
という管理を行う窓口業務さえ肩代わりすれば、ウチの商会から買い取り費用をもらい回収業務に携わる人間に買い取り金を渡せるというので有難い話だったようである。
まぁ、修復師さえ居ればウチの商会を絡めなくても自前で直して販売すれば良いのであるが、魔力供給魔道具が無い修復師なら魔力の関係で1日に直せる量が数個なのだから、
『大銀貨数枚の魔鉱鉄装備ではなく小金貨数枚になる魔道具を修復するわな…』
というのも分かるし、魔力供給魔道具持ちなら迷わずマジックアイテムや壊れた魔道具を沢山直した方が金になるのでワザワザ魔鉱鉄の装備を直そうと思う修復師は希であろう。
そして、ご領主様に少し無理を言って買い取り窓口である建物の端っこでウチの商会の販売場も用意してもらい、町の武器屋などを巡り売りまくったので値段もバッチリ把握出来た魔鉱鉄の装備を卸値で回収業務に携わる下町の方々に販売してもらえる事にもなった。
『これで下町の子供達がポーターとしてではなくて冒険者としても働けたら稼げる未来の選択肢も増えるだろう…』
と安心しながら当面の販売場に並べる売り物と、商会から武器屋や防具屋に卸して買い取り資金を調達する為にウチの商会名義で購入した下町の倉庫にて僕は、
「どれぐらい直したら良いの?」
とアル君に聞くと、
「今回の件を念話にて報告するルーベルさんにお願いして王都から、カサール子爵様へと通信魔道具でテイカー師匠に伝言をしてもらったら、2ヶ月後には商会からの職員を送れるからと返事があったとルーベルさんが言ってましたので、2ヶ月分の買い取り資金と販売分の魔鉱鉄装備は必要なので、とりあえずマジックバックに1つ…いや念のために2つ分もあれば…」
などと、かなり怖い量の修復を指示してくるのである。
『まぁ、肋骨がしっかり折れてたらしく治癒院の先生からも一週間は冒険者活動の禁止を食らってるから黙ってやるけど…』
と、倉庫の片隅で僕は、リーグさん達オジサンチームが、
「下町に住んでる大工の親方さんにこの倉庫の屋根などの修繕を頼んだら、このテーブルと椅子を安くしてくれると言ってまして…」
などと、倉庫をウチの商会のワグナ支店にするべくマジックバックを片手に家具などを集めてくれているのを眺めて、
「ついでにその大工さんに従業員の生活するスペースも作ってもらってよ」
と伝えると、バルディオさんが、
「それでは買い取り品を保管するスペースが…」
と心配してくれたのであるが、僕が、
「倉庫に入る荷物はヨゼフさんがほとんど自分の趣味の為に集めてくれていた壊れたマジックバックがまだ沢山有るし、それを修復したら問題ないから…」
と、伝えるとダグさんが、
「なら旦那様、従業員も使いますし…その…出来るなら、少し広めのキッチンもお願い出来ますか?」
と遠慮気味に聞いてくるので理由を聞くと、家具を探している最中に下町の子供達がお金をちゃんと払っているのに昼の忙しい屋台で、店主や周りの客にあまり良い顔をされていないのを見たらしく、
「そんな贅沢なもので無くて良いので回収作業で頑張ってる日の昼飯ぐらい気分良く食べさしてやりたくて…ダメでしょうか…」
とお願いされたので、
「まぁ、詳しい話は後から決めるとして、下町の料理上手な奥様なんかも雇えば食堂だって作れそうだから良いんじゃないかな」
と笑顔で答え、こっそりアル君に、
「悪いんだけど、容量が小さめで時間停止もついてないマジックバックを3つほど出来るだけ高値で売りさばけるかな…魔鉱鉄の販売だけでは工事費が…」
と相談すると、彼は、
「おまかせ下さい」
と、楽しそうに出掛けて行ったのを、
『本当に頼もしい商人へと成長してくれている…』
と、この旅に来た意味を実感したのであるが、
『あれ? そうなると一番成長していないのは僕なのでは…』
と少し不安になるのであった。
そして、この倉庫であるが支店としてだけではなく、今回一悶着あったご領主様とボトム公爵家の友好の証として、ご領主様が壊れたマジックアイテムを集めて公爵家と共同名義で王都の修復師達の為に送る拠点にもなっているので、自動的にこの建物のオーナーとして貴族家からの家賃収入が見込めて、修復師の育成をすすめる王家にもちょっぴり恩が売れるというナイスな建物なのだ。
ちなみにではあるが、ヨゼフさんの思い出の詰まったあのお店は、立地的にも商売には向かなかったので、王都に旅立つ前にヨゼフさんから、
「買ってくれる?」
と聞かれたが、
「いや、ヨゼフさんがマジックアイテム修復の第一人者になったらマジックアイテムについての資料を展示する記念館に必要だよ」
などと言い訳をつけて購入をお断りしたのであるが、記念館としてもあまり立地がよろしくないのは、あえて秘密にしている。
とまぁ、
『鼻血を滴しながら勝ち取った!』
と割りきる事にしたこの【イキった後にタコ殴り事件】であるが、あの冒険者達も厳重注意だけで僕と喧嘩した事も荷物係の少年をリンチした事もお咎めなしにしてもらい、リーダーのパパや、その上司であるご領主様に恩を売る形にして、ついでにロイド君達の身分もチラつかせた結果、良い物件を格安で紹介してくれたりと色々と便宜を図ってもらったのであるが何故かあの日、僕をタコ殴りした冒険者達が揃いもそろって、
「兄貴、何でも言って下さい!」
と、僕たちに絡んでくるのである。
「いや、ダンジョンに潜れるぐらい強いんだからコツコツ真面目に冒険者しなよ…」
と追い返そうとしたのであるが、
「その…全財産はたいて買った武器を失くしまして…もう兄貴の子分として働くしか!」
などと、訳の分からない理屈を捏ねるので、五人に修復した魔鉱鉄の装備を渡して、
「失くした武器より弱いかも知れないけど新品同様だから…あとポーターを二度と虐めなくて済む様に小さめのマジックバッグもサービスで渡しておくから頑張れ!」
と追い返したのだが、何故か更に懐かれたような気がしないでもない…僕としては喧嘩してタコ殴りしたり、タコ殴りされたりした奴等よりあのポーターの少年に懐かれた方が嬉しいのだが、どういう流れか彼は、
「アルの兄貴、お出かけですか? だったらお供します」
と、荷物持ちなら任せてくれとばかりに、あの時大怪我をしていた少年フレッド君はピンチに駆けつけ治療してくれたアル君にべったりなのであった。
『いや、助けに入って怪我したの僕なんだけど…』
とは思うが、下町で暮らすフレッド君のママだけは、
「ジョンさんのおかげでうちのフレッドが助かりました…あの、私の得意料理ですが、良かったら是非…」
と先日煮物を鍋ごと差し入れてくれたので、
『痛かったが、これでヨシ!』
と煮物を頬張って自分なりに納得するのであった。
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