第132話 予想外
アル君と二人して魔鉱鉄の装備の数々を宿の部屋にて夜通し修復した。
もちろん修復作業は僕一人でも可能であるが、眠らずに付き合ってくれたアル君のおかげで効率よく、そして楽しく作業が出来たのであった。
ちなみにではあるが、ウチのオジサン三人組は、
「このぐらい有れば十分かな?」
と、僕とアル君が作業を終えたころにようやく朝日と共に帰還したのであった。
三人は口を揃えて、
「火酒を三盃ほど飲んだ辺りまでは覚えているのですが…」
などと昨日の昼間からワインやエールをリーダーさんに誘われるまま軽く引っかけた後に、オススメのドワーフ族の酒場に行ったらしいが、三人共に二日酔いなのか顔も優れず、もしくは酒とは別の理由かは知らないが口数も少なめであり、僕は、
「ロイド君達も居ないし今日も休みにするから皆もゆっくり寝て…」
と諸々の感想をあえて聞かずに、僕はアル君に、
「疲れたし一眠りしたら昼から一緒に直した装備を売りに行こう」
と伝えて、顔色の悪いオジサン三人を放置したまま寝室に向かったのであるが、去り際にチラリと見たテーブルではオジサン達がダグさんがコップに生成した新鮮な水を喉を鳴らして飲み干した後に、
「本当はどこら辺まで覚えてます?」
などと話し始めたので、多分、
『酔った勢いそのままに目覚めたら横に…』
という予想外な女性と目覚めたパターンで慌ててこんな朝早くに帰って来たのだろう。
とまぁ、大人の酒場に潜入調査に向かった三人にあえて触れずに一眠りしたのであるが、昼過ぎごろに僕とアル君が目覚めると、オジサン三人はベッドにトラウマでも植え付けられたのか、自分のベッドが有るというのにテーブルに突っ伏したり、床に倒れていたり、壁にもたれかりながら眠っていたのであった。
アル君は転がっているオジサン達を眺めながら、
「どうします…ベッドに運んだ方が…」
などと優しい事を言うので、僕は、
「要らない、要らない…二日酔いだろうしベッドで吐かれたら掃除が大変になるからね…」
などと話しているとロイド君とルーベルさんが領主様のお屋敷から帰って来たのであった。
「無事にヨゼフさんは王都からの迎えの方々と合流できたの?」
と聞く僕に、ロイド君達は宿の居間の惨状を見て、
「はい…そちらは問題なく…でも、これは…どうされたのですか?」
と驚くが、それよりも先に僕とアル君は、ロイド君とルーベルさんの隣に居る人物に驚いていたのであった。
それは久しぶりの再会であるカイン様である。
実のお兄ちゃんであるロイド君を『君』呼びで弟である彼を『様』と呼ぶのは不思議な感じはするが、ロイド君が例外なだけであり、公爵家のお子さんで、僕が国王陛下への不満をグチグチ言っていたのを陛下に告げ口せずに黙って聞き流してくれたというある意味命の恩人なので、様をつけるのは当然なのだ。
「えっ、カイン様!」
と声を出す僕とアル君に彼は、
「お久しぶりです」
と挨拶してから、ロイド君達はカイン様が来た経緯と、僕たちは昨日から今朝に何がありこの状態になったかを軽く話そうとしたのであるが、ルーベルさんが、
「テーブルは使えない様子ですし、ゆっくり座って話せる場所へ移動しませんか?」
と提案してくれ、冒険者宿の一階に併設されている食堂も兼ねた酒場に移動してランチを食べながらゆっくりと話したのである。
昼間は大概の冒険者はダンジョンや依頼に向かい留守にしている為に、冒険者酒場は静かな時間帯ではあるが、それでも昼間から飲んでいる者や、夜勤明けの様に今朝方ダンジョンから戻り軽く飲んでから眠る冒険者が多少は見受けられ、カイン様は珍しい光景でも見るかのように、
「兄上、これが冒険者酒場ですか…」
とロイド君に語りかけ、ロイド君は、
「私も最近になり初めて利用したのだが、夜には流しの吟遊詩人が居たりするぞ」
などと、勉強ばかりだったお兄ちゃんが、魔法ばかりの弟に色々と教えている姿に、
『お兄ちゃんしてるなぁ』
などと優しい気持ちになってしまう。
さて、なぜにこの町にカイン様が居るかという事であるが、魔力が少なくギフトが使えなかったカイン様はお兄ちゃんであるギフト無しのロイド君を見習い勉強に明け暮れていたのであるが、ゼルエルガさんという師匠に出会い、魔力供給魔道具という装備に出会った事で、
「兄上が最短記録で卒業した最難関の文官コースではなく、魔法師コースを卒業して、父上からもゼルエルガ師匠の元にて暫く修行する様に言われましたので…」
という事で、マジックアイテム研究家としての知識を武器に修復師として復帰したヨゼフさんを王都から迎えに来た騎士団に同行してカイン様はこの町にやって来て、僕たちのメンバーに加わったという事なのである。
ゼルエルガさんは現在はカルセルの町近くの村を壁で囲む依頼を受けてクリスト様とイチャイチャと土木作業に明け暮れていると思うので、カルセルまでカイン様をお連れするミッションが加わった為に彼は、
「ジョン殿や皆さんに要らぬ手間を増やしてしまい恐縮です…」
と頭を下げるので、僕は、
「いいよ、どうせ帰りにカルセルに寄る予定だったんだから」
というと、アル君も、
「カイン様、カサールの皆もカイン様が来てくれたら喜ぶと思いますので…」
とカイン様の参加を歓迎しており、ロイド君が、
「そうだ、カサールの子供達に人気の本を何冊か買って帰りたいのだが、カインは何か流行りの物語とか知らないか?」
などと今まで以上にイキイキしているのを見て、これから先の旅が益々楽しみになる僕は、それから上の階の部屋で彼らが見た惨状の説明を終えた後に、
「これから何軒か武器屋を巡って昨夜修復した装備を売ったりして来ますので…」
と伝えると、ロイド君もカイン様も、
「ついて行くよ、町も見て回りたいし」
といってくれ、ルーベルさんも二人の護衛に来てくれる事になり、
「なら、買い食いもしながら町を巡ろう!」
と決まり、僕はカイン様に、
「時間停止のマジックバッグが有るので腐らないからジャンジャン買い食いしましょう」
というと、ロイド君もカイン様に、
「カイン、費用の心配は要らないよ…私もレッドオーガの角やら牙でかなり懐が暖かいからな…」
などと自慢気に語り、カイン様から、
「ダンジョンに潜っているとは聞きましたが、レッドオーガってかなり強い魔物では?!」
と尊敬の眼差しを受けるロイド君を眺め、
『安全なコックピットからジェロニモ号でフルボッコにした事は内緒にしてあげようかな…』
などと考え、レッドオーガ周回も飽きてきていたので、
『あのダンジョンにはもう行かないで、レッドオーガの倒し方はカイン様にはこのまま秘密にしておこう』
と決めたのであった。
それから五人で町を散策しつつ、武器屋や防具屋を巡り、魔鉱鉄の武器を売って回ったのであるがその中の一軒の武器屋の近くで、
「どうするんだよ!」
と騒いでいる若い冒険者の足元には先日の荷物係の少年が見える。
既に殴る蹴るをされた後らしく、ツギハギの有る少年の服は泥だらけであり、そんな少年に若者達は更に制裁を加えようとしているのを僕は思わず止めに入り、
「何が有ったかは知らないが、大勢で1人の少年を痛め付けるのは見てられないから!」
と注意すると、彼らは、
「うるさい、そいつがヘマしたのが悪いんだ!」
などと、興奮しており、少年から話を聞くには彼はダメージを受けすぎている。
僕はアル君に、
「ゴメンだけど、少年にポーションを!」
と指示を出し、ロイド君達を巻き込まない様に、
「この喧嘩一旦預かる。 文句があるなら俺様が聞いてやる!」
と普段使わないオラついた一人称まで使い、個人の喧嘩としてカッコ良く仲裁したつもりであったのであるが、
「チビがイキがるんじゃねぇ!」
と、『低身長はイキる自由が無い』との持論から見事に喧嘩を売られる事になったのであった。
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