第131話 買い取ります
要らぬお世話焼きな冒険者の先輩の誘いで、危うくアル君と二人してドワーフお姉さんにナニとは言わないが卒業させられるというイベントを未然に回避した僕は、
『危なかったよ…学校を卒業してないのは少しコンプレックスに感じてたけど…ドワーフのお姉さんになんて、そっちは卒業させられた事が軽いトラウマになる可能性も…』
と、全員が全員『そうではない…』とは思うが、僕のよく知る唯一のドワーフ女性であり、全てにおいてかなりパンチの強いキミーさんの顔が頭に過り、
『ドワーフ女性でしょ…僕的にはストライクかストライクじゃないかというと、デッドボールっぽいんだよな…いや、見た目とかじゃないよ! ほっ、ほらドワーフ族ってヒト族の倍の寿命でしょ、だから20代でもヒト族換算だと10歳程度だからロリはヤバいし、ヒト族換算で同年代だと実年齢が40程だし…』
と、苦しい言い訳をコネくり回しつつ、とても失礼な事を考えながら、アル君と二人でゴミ置き場にて下町の子供達と良さげなアイテムを探しているのである。
なぜこのような事をしているかというと、ダンジョンで見かけたポーターの男の子の事が気になり、
「あの子を直接守る事は出来ないかも知れないけど、何とかあの子みたいな下町の子供が稼げる手段はないのかな?」
と、ロイド君やアル君と相談した結果として、ヨゼフさんの研究のおかげでマジックアイテムを直せる修復師が増える事を見越して、
『魔合金のマジックアイテムを鍛冶職人より高値で買い取る』
というシステムで下町の子供達の稼ぎを安定させるというアイデアを国に提案する為の下調べとしてゴミ置き場にて子供達に協力してもらい、どんな物がどれぐらい集まるかを調査しているのである。
ちなみにであるが、ダンジョンの町のゴミ捨て場にマジックアイテムなどが捨てられる事について、僕は、
『ダンジョンに捨てて帰ればダンジョンが吸収するから捨てる手間が減るのでは?』
と考えていたのであるが、これはダンジョンに潜る冒険者としての言い伝えやマナーと言った感じの事らしく、マジックアイテム研究者としてのヨゼフさんから聞いたのであるが、
【ダンジョンに粗悪なアイテムを覚えさせない】
という昔から続く冒険者の習わしだそうで、吸収したアイテムを解析し複製してダンジョン内に冒険者を呼び込む餌にするダンジョンに壊れたアイテムを吸収させれば宝箱から壊れたアイテムが出てくる様になるという事が言い伝えられているために、壊れた武器やマジックアイテムでも頑張って持ち帰るのである。
そして、冒険者としてはダンジョン内で装備が壊れる事は死に直結する為に壊れかけの武器なども容赦なく捨てしまう。
ついでに言うと、冒険者達がそんな壊れかけの装備を安値で武器屋などに売る事を避けるのは、悪い武器屋なら軽く磨いただけで壊れかけの武器を平気で正規の値段で売る為に、見ず知らずの冒険者仲間の命を守る為に多少損してもゴミとして捨てる選択をするのだそうだ。
そうする事によりゴミを漁る武器屋にちゃんとした鍛冶職人との取り引きがなければ、
【見た目だけの粗悪品】
という可能性から武器屋を見分ける目安となり、ゴミを漁ろうがどうしようが鍛冶職人経由ならば自分の腕前の評判を落とすような粗悪品は武器屋に卸す筈もなく、打ち直して新品にしているという事で安心して買える。
そして冒険者達の優しさで下町の子供が屑鉄拾いなどでそんな武器を鍛冶職人に売って食べて行ける様に壊れた装備を捨てて行くという流である。
なのでこのワグナの町ではダンジョンの数も多く、壊れる装備品も多い為に上手に買い取り先を用意すれば十分な収入になり、ムカつく冒険者の荷物係を我慢して続けなくても、良い冒険者からの仕事だけを選んで受けても食べて行ける様になればと考えたという訳なのだ。
という事で、下を向きながら壊れたマジックアイテムを探していた僕であったが、腰をグッと伸ばしながら、
「あまり魔合金のマジックアイテムは無いね…魔鉱鉄の装備ならゴロゴロしてるのに…でも、まぁ今まで買い取られなかった魔鉱鉄の装備も魔力供給魔道具持ちの修復師が増えるだろうし売れる様になる筈だからね…」
とマジックアイテム探しを一旦終了し、試しにあまり壊れていない良さそうな魔鉱鉄の装備を下町の子供達に探してもらい、アル君に、
「これぐらいの手間で集めた魔鉱鉄の装備をこの後修復する手間も考えて幾らぐらいなら買い取れるかな?」
などと相談すると、彼は、
「この剣ならば修復後に大銀貨七枚以上で売れますが修復前の値打ちは小銀貨1~2枚ってところでしょうか…鍛冶職人は買い取りすらしませんので、あくまでも壁掛けのインテリアとしての値打ち程度ですが…」
というので、僕は
「とりあえず今回はウチの商会が買い取る形で壊れかけの魔鉱鉄の装備は修復後に売れる一割で、完璧に壊れた魔鉱鉄の装備は片方は修復素材扱いで同系統の装備2つで一割で買い取ってみてよ」
とアル君にお願いすると、下町の子供達は、
「本当に、この黒い鉄のヤツも買い取ってくれるの?」
とか、
「黒い鉄のヤツこんなに有るから皆も呼んできていい?」
と言って下町の子供や生活の苦しい方々を連れて来て、あっという間に一つのゴミ捨て場に有った魔鉱鉄の装備を仕分けてしまい、僕はアル君に、
「こんな事ならバルディオさん達も連れてきたら良かったね…」
などと言いながら品物のチェックをし、アル君も、
「そうですね。 あのリーダーさんがどうしても火酒を飲ませたいらしいので皆さんにお酒の調査に行っていただきましたが…これは…」
と、査定をしながら支払うお金の計算をしており、そして買い取られた金額を手にした下町の方々は、
「こんなに良いんですか?」
とか、
「ありがとうございます。 ポーターの仕事で怪我をしたお兄ちゃんにお薬が…」
などと喜ばれてしまい、僕はアル君に、
「魔合金のマジックアイテムを鍛冶屋に売らない様にする為の買い取り窓口は国におまかせするとして、魔鉱鉄の買い取りはウチの商会で何とか出来ないかな…」
と相談するとアル君は、
「買い取りのお金さえあればこの町に居る間は自分が買い取り作業を数日に一回程度なら…それ以後はテイカーさんと相談ですが…」
というので、僕は、
「ならここで出来るだけ修復するから、それを売って買い取り金を稼いでくれるかい?」
とアル君に相談すると、彼はニヤリと微笑み、
「やっと商人としての見せ場が来ましたね…」
と言ってマジックバッグの口を開き、
「旦那様、直った物からこちらにお願いします」
と、僕に修復を任せて、
「買い取りを待っている次の方ぁ~」
と、予算の続く限り買い取り作業を続けたのであった。
そんな事が有ったその夜、ロイド君とルーベルさんはヨゼフさんを迎えに来た王都の方々とこのワグナの町のご領主様のお屋敷お食事会に呼ばれており明日まで帰って来ないのは知っていたが、リーグさんとダグさんとバルディオさんの三人は、
「どうしても火酒を…」
と薦めてくるあの冒険者グループのリーダーさんにつれ回されてワグナに集まるお酒の調査に行った筈であるが、
『これは、あの三人は【昨夜はお楽しみだったようで…】コースかな?』
などと思いながら、僕はアル君と二人で、
「もう、晩御飯食べちゃって寝ようか…明日は魔鉱鉄の装備を売りに行くんでしょ?」
と聞くとアル君は、
「旦那様が修復された魔鉱鉄の装備ですので新品同様ですから心配なく売りさばけます…なので自分もお手伝いしますので、まだまだ有る買い取った装備の修復を頑張りましょう!」
と言われてしまい、
『ロイド君達はお屋敷にてあの冒険者グループが納品したブラックブルの希少部位とやらを食べている頃だろうし、三人のオッサンはリーダーさんにそそのかされて美味しくお酒をいただいたりドワーフのお姉さんに美味しくいただかれたりしているのかも知れない…』
と思いつつも僕は、
『ここに来ても夜通しコツコツと修復作業か…』
と少し悲しくなるのであるが、アル君から、
「上手く売って稼いだ分でまた買い取りが出来ますからね…あと2ヶ所ゴミ捨て場がありますので…」
と言われてしまい、覚悟を決める僕であったのである。
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