第122話 旅の友
僕たちが旅に出る事を知った我が家の学生組が、アル君だけ連れて行く事について、
「アルだけズルい」
などと騒ぐかと思っていたのだが、案外アッサリと送り出してくれ、どちらかと言うと、ダグさんが旅について来る事についてAランク冒険者を目指して頑張っている我が家の専属冒険者パーティーの1人であるトリシャさんが、
「私も行く!」
と、駄々をこねてダグさんを困らせていたぐらいである。
トリシャさんはダグさんに惚れていて、料理を習いながらお目当てのダグさん本人を落としている最中だったそうで、
「まだ、教えて欲しい事が…だからついていきます」
とか、
「私が見ていない旅先で…そんなの心配だから…」
などと、ほぼ彼女から殆ど愛の告白の様な大好きアピールをされていてもダグさんは、
「帰ってきたらまた教えてあげますよトリシャさん。 こう見えて結構頑張って魔法も訓練してますので旅先でも活躍できますから大丈夫…」
などと、このトリシャさんへの返しには我が家の女性陣が、
「分かってない!」
とか、
「鈍い…」
などとお怒りであり、このやり取りを何とも言えない顔で見守っていたアンドリューさん達トリシャさんのパーティーメンバーは、
「ほら、トリシャが抜けたらコッチが困るから…」
などと、トリシャさんを宥めつつ彼女を連れて行き、リーダーであるアンドリューさんが去り際にダグさんに、
「もうすぐ全員Aランク冒険者になる予定でして…もしも、旅から戻られた時に昇格していたら…その…トリシャと…」
と、リーダーとしてトリシャさんの気持ちを分かって欲しくてデートの約束でもお願いしようとしている様に見えたのであるが、ダグさんは、
「それは目出度いですね。 自分も冒険者登録をしてからAランク冒険者の凄さがわかりましたよ…昇格したらお祝い料理は任せてください!」
などと笑顔で返したのを見たアンドリューさんが何か云う言葉を飲み込み出て行ったのを不思議そうに見送る鈍感なダグさんに、我が家の女性陣…というか我が家の御意見番であるメリーさんが完全に呆れ返ってしまい、僕に、
「坊っちゃま…旅先でのあの鈍感男の教育はお任せしました…女にあそこまで言わせて理解出来ないなんて…」
と、昔好きな男性に告白出来なかった事を引きずるメリーさんには、殆ど告白の様な台詞を勇気を出して伝えたトリシャさんの気持ちを1ミリも理解していないダグさんが許せないらしく僕にミッションを与えて来たのである。
『いや、僕とロイド君とアル君の友情を深める旅行だから…』
と断れる雰囲気でもなく、
「はい、可能な限り努力します…」
とだけメリーさんに伝えて逃げる様にカサールを飛び出したのが半月前の事、現在僕たちはニルバ王国のど真ん中のやや北側に位置するワグナの町を目指している。
王都から来たばかりのロイド君とルーベルさんには来た道を帰らせる様で気の毒ではあるが、ワグナの町から北上すると古代ドワーフ族が治めていた地域であるアルマイン地方があり、ワグナから北は現在もドワーフ族やドワーフの血を引く方々が多く住んでいるニルバ王国の中でも独特な文化の地域なのである。
『まぁ、知らない土地にアル君を連れて行くというテーマと、ロイド君のレベル上げと、ダンジョンも有るらしいので僕の壊れたアイテム集めというニーズが合致したから向かっているのではあるが…』
と思いながら、幌馬車の中で運転台のリーグさんとバルディオさんが、
「バラッドさんから教えてもらったキノコ料理も楽しみですが、キミーさんの言っていたドワーフ族だけに作り方が伝わる火酒っていう幻の酒が有るかも…」
などと楽しげに話しているの聴きながら、
『オッサン4人に青年3人…むさ苦しい旅になったな…これならばトリシャさん達も無理やり誘ってダグさんとの恋模様を楽しむのもアリだったかも…』
と後悔しつつ、僕は、
「だから…なんで馬車に乗りながらメモを書くの…」
と、乗り物酔いをしたロイド君の背中をサスサスしながら、アル君に、
「ゴメンだけどアル君はダグさんと後ろの見張りを交代してくれる?」
と頼み、手の空いたダグさんに、
「ダグさん、そこのバケツに水を生成して…出来るだけ冷たいと助かるんだけど」
と指示を出すと、ダグさんは、
「お任せを、ゼルエルガ師匠のおかげで魔力供給魔道具無しでも拳程度の氷を1日に3つは出せるまでに成長しましたので!」
と言ってバケツに水を生成し、
『料理にも使えそうなので…』
という理由から、
「土魔法が専門で水魔法は専門外だけど理屈なら理解しているから…」
というゼルエルガさんに無理を言って特訓してもらった【氷生成】の魔法を使い氷の塊をゴロンとバケツに出すと、魔力が一気に減ったらしく、
「坊っちゃん…どうです…」
と、フラフラしながら自慢してくるダグさんに、
「凄いのは分かったから少し休んで…」
と伝えて、ロイド君が乗り物酔いでフラフラになり焦っているルーベルさんに、
「その水でハンカチを濡らしてロイド君の首筋を冷やしてあげてよ…乗り物酔いが少しは治まるから…」
とお願いしたのであった。
こんな感じで、バタバタしているが男だらけの旅というのも楽しいものであり、この日も街道の脇の広場で馬車を停めてキャンプと洒落込むのであるが、時間停止機能付きのマジックバッグを手に入れ、更に料理人まで同行しているので食事の問題もなく、魔物の気配はリーグさんが分かるし、アル君は暗視のギフトにより夜でも視界良好で警戒してくれ、いざとなってもバルディオさんが居てくれるので安心である。
そして今回の旅では、ルーベルさんという念話ギフト持ちが居るので、王家への定期連絡のついでに、
「今、○○村から北に…」
などと現在位置を報告すると、
「あと半日ぐらいで次の町らしいです…」
と、町の位置や、その町のグルメなどお得な情報まで仕入れて来てくれるので大変助かっている。
そして、この旅で分かった事は、
『このニルバ王国で神童と呼ばれたロイド君なのだが、お勉強以外はかなりポンコツであり一般常識から教える必要があるらしく』
今日もキャンプの際に、彼は、
「ジョン君、馬車酔いに首を冷やすとスッと直ったけど、アレはどういう仕組みなの?」
と楽しげに聞いてくるが、僕としては、
「いや、酔いざましの理屈より、なんで馬車に揺られながら仕留めた魔物の解体手順をメモするの…それも隅々まで細かく内蔵の挿し絵つきで…」
と呆れると、ロイド君は、
「だって、忘れないうちにメモしたかったんだモン…」
と、子供みたいな言い訳を並べる。
しかし、周りの人間にギフトを賜れなかった事を馬鹿にされない様に大人に成ろうと頑張っていたロイド君が子供の頃を取り戻している様な姿にルーベルさんは、
「ジョン殿や皆さんと出会えてロイド様は本当に…グスン…」
と、涙脆いお年頃なのか漢泣きしており、そんなルーベルさんを青年達を見守る旅の友であるオジサンチームは、
「良かったなぁルーベルさん…」
などと慰めてくれ、泣き止んだルーベルさんが昔のロイド君の頑張る姿を熱く語りはじめると、
「もぅ、ルーベル…止めてよ恥ずかしい…」
と、ロイド君が照れるというがお決まりパターンとなりつつあった。
『まぁ、楽しそうにしてくれているから旅に出て良かったよ』
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