第118話 小屋で石鹸作り
国王陛下からのお目付け役が派遣されるまでカサール領内からの外出を禁止されてしまった為に、
『こんな時に庇ってくれなかったカサール子爵様なんてモウしらないんだからねっ!』
という理由で自分を正当化して、新町の皆で楽しく稼いでやる事にしたのである。
『まぁ、他の町への買い出しはテイカーさん達がしてくれるから特に問題は無い上に、どうせ石鹸の研究をする為に作業小屋に引きこもる予定だったからな…』
とは思うが、それはそれ…僕としては、ちょっとだけウチの敷地内では無税という事に対して罪悪感があったが、これで心置きなく好き放題出来るってもんである。
先ずはジョン商会としての建物を建て、テイカーさんの部下の育成を開始し、新しくカサールに出来る学校の卒業生の就職先を増やす…勿論商会がでかくなっても無税であり、商業ギルドに会費を納めるだけで商いし放題である。
『まぁ、これは問題なく出来るだろう…お金関係はテイカーさん1人に全部任せてしまっているから商会メンバーを増やす事が急務だもんな…そうだ、中古ショップのパートの奥様から計算の得意な方を社員にスカウトしてもらうか…』
と閃き、
『それと、アンドリューさん達には商会の護衛を受けながら、冒険者として新町やカサール領内出身の新人育成担当で働いていだければ冒険者志望の子供達も立派な冒険者として商会の馬車の護衛任務を依頼出来る様になるし…』
と、大きくなったウチの商会の馬車の護衛もだが、冒険者が育てば昔のゴミ置場直送のような店ではなく、新人から中堅まで冒険者の装備ならお任せな有名店に生まれ変わったギャンさんの店の売り上げにも貢献出来るはずである。
あと、冒険者で思い出したのであるが、最近は魔力供給魔道具の生産をバラッドさんや、タンカランではゴンザさんやマーチンの町でも職人さん達が手分けして行っており、今までは魔力が少なく不遇な魔法ギフトだったお金持ちなお家の方々が魔法をバンバン放てる魔法師として活躍する為に、こだわりにこだわり抜いた素材での魔力供給魔道具の製作を依頼するために、
『ワイバーンの翼膜』
だの、
『シルバーフォックスの毛皮』
だのと金払いの良い貴族や大商人からの魔道具のマント部分や装飾用の魔物素材の納品依頼が増えて、このカサールや、マーチンの町に魔物素材の納品依頼を受けに来る冒険者が増えており、武器や防具の需要もかなり上がっているらしく、せっかく孫の顔を見に来たゴンザさんが、
「お爺ちゃんはお仕事に帰らないと…」
と3日で寂しげに帰ってしまったほどであり、僕はバラッドさんやキミーさんに、
「ゴーレムも作れる程に作業場が広いんだからゴンザさんもここで仕事をしたらもっとゆっくり出来たんじゃ?」
と聞いたのであるが、キミーさんは呆れながら、
「同じ物を作る訳でもないのに、自分の流儀がある頑固な職人二人が一緒に作業場に居たら意地の張り合いと殴り合いで作業が遅れちまうよ…」
などと笑い、バラッドさんも、
「うん、うん」
と頷いていたので、
『殴り合いって…職人さんって、そうなのかな…それともドワーフ族ならではなのかな?』
と困ってしまうが、とりあえずウチの商会がらみの鍛冶屋さんは現在武器防具の売れ行きも良く、魔力供給魔道具の作成などで忙しいらしい、
『儲かっているようで良かった…我が家もいつまでもゴーレムコアの修復に財政を頼りっきりではイケナイので、少しずつ修復系でない商品へとシフトしないと…』
という事で僕が作業小屋にて行っているのが、平民が買えるちょっと良い石鹸の開発である。
お城に行った時に使った香水の様な強い香りの石鹸などは、お貴族様やお金持ちが買えば良い…僕が目指すのは、魔物の解体作業や冒険者仕事の後、血の臭いなどを綺麗さっぱり消し去る汚れ落ち重視の商品や、貴族向けの高価で香水の様な華やかすぎる香りの石鹸ではなく、仄かな優しい香りの庶民向けの少し贅沢な石鹸を、家庭用の魔石式湯沸かし棒と共にカサールから広めたいのだ。
なぜなら、湯沸かし棒の魔道具の回路はライトお兄さんの家庭を支えており、魔道具に塗る撥水コーティングはエルバート師匠のお小遣い稼ぎになり、湯沸かし棒の本体の組み立てなどは新町の細工職人さんの収入源にもなっているので、お風呂文化を平民層に広めるのが皆が稼ぐ近道なのである。
という事でお風呂が楽しくなる為の石鹸に結び付くのだが…これが問題であり、既にある錬金素材で作る石鹸のレシピでは錬金素材を頑張って自作したとしても石鹸のレシピ使用料が必要になり、昔ながらの木灰を使う著作権フリーなオーガニックなもののままではつまらないので、この昔ながらの石鹸をベースに知恵を絞るしかなく、
「油に混ぜるだけで石鹸が出来る錬金素材を使うと楽ではあるんだろうな…」
などとボヤきながら、テイカーさんに集めてもらった石鹸作りに関した資料とにらめっこしながらベースの石鹸から作ってみる。
まず暖炉で燃やした薪の灰をバラッドさんに作ってもらったフルイにかけて細かい物だけにして、
『それに水を加えて灰水を…』
と資料には書いてあり、大昔は倒した魔物の使わない脂と灰水で少し獣臭い石鹸を使っていたらしいが、わざわざ『獣臭い』という物を作らずとも我が家の畑エリアにてノリスさん夫婦がオリーブも育ててくれており、近くの村でもオリーブオイルを作っている農家さんもいるので、
「オリーブオイルをベースに、ゆっくり温めてから灰水を加えて…」
などと、資料通りに定番石鹸一号を作り、
「この石鹸より汚れ落ちが良いものを目指すか…」
などと楽しく作業小屋にて研究を続ける日々を過ごし完成したのが、
『獲物の臭いも漢の臭いも一発消臭、汚れ落ち抜群!』
というテーマの炭の粉末と塩を配合し、エルバート師匠から習った創薬の技術で、消臭効果のある薬草のエキスや、柑橘類の皮から爽やかな香りの精油を作って混ぜ込んだ真っ黒い石鹸と、
『優し香りと保湿成分配合』
というテーマで、高級石鹸のような香水ほどの香りはないが、水仕事でダメージのある手肌の回復に傷軟膏にも使われる薬草を使い、そこにハチミツや多種多様な草原の花から抽出した香りのエッセンシャルオイルを配合した庭園の花畑というよりは草原のお花畑と言った雰囲気の石鹸が完成したのであった。
まぁ、臭いのケアについては【炭】を使った商品を前世で愛用していたのと、田舎のおじさんとはいえ、
『ハチミツ入れときゃ何とかなるでしょ…髪とか肌の保湿に良いだろうし…』
程度の知識はあったのであるが、我が家の女性陣からは、
「ハチミツを体に!?」
などと驚かれたのでこちらの世界では一般的ではないのかも知れないが、とりあえずハチミツ入り石鹸の試作品を我が家や新町の奥様方に使ってもらった結果、
「これは売れます!」
との太鼓判をいただき、黒石鹸の試作品は、冒険者宿の簡易風呂場や解体場の職員用の風呂場に、カサール騎士団とカサール兵士団の風呂場にて試していただいた結果、既に購入希望が出ている程であり、
「なら、このレシピで生産を…」
などとテイカーさんと話している時に手強い敵が我が家に訪れたのであった。
それは次期カサール子爵領領主であり交渉事に関してはカサール子爵様よりも遥かに手強いクリスト様が、
「騎士団からジョン君が凄い商品を作っているって聞いたんだけど…」
と、なぜかションボリしたカサール子爵様と共に現れ、
「父上から聞いたけど、なんでもジョン君の敷地内での商いは税金免除っていう正式な契約を交わしたらしいね…」
と、クリスト様は凄く怖い笑顔で僕に問いかけ、
『ヤバい…石鹸工場を稼働させる前にバレちゃった…カサール子爵様とは正式に契約をしたからいきなり課税対象にはならないだろうけど…税金が要らない分は商品の値段で還元する計画だったんだよな…』
と、安くて高品質な商品で石鹸産業に入り込む予定が揺らぐような訪問者に焦る僕であった。
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