異10-07 後記
予嘗以古今怪異之事,不可勝紀。及讀劉敬叔《異苑》,幾備矣。然載秦世謠而不及仲舒修履之奇,載高陵龜而不及毛寶鑄印之驗。陳仲弓德星可採,而客星犯座胡以獨遺?沙門慧熾真奇,而佛圖澄豈容盡逸?至於絡絲之女、鞠通之琴,及郭璞、韓友、杜不愆輩種種異趣,悉不一收,不知敬叔意何居也?姑存之,以俟博覽者廣焉。湖南毛晉識。
わたしはかつて、古今の怪異の事は到底まとめ上げきれないものだと思っていた。しかし、劉敬叔の『異苑』を読めば、そこにあらかたまとまっていたのを見ることになったのである。
しかしながら、秦の世の謠の話が載りながらにして董仲舒が履を直したという奇妙な話は載っていない。高陵の亀の話は載っているが、毛宝が印を鋳造したという霊験(亀の恩返しの話)は載っていない。
陳寔の「徳星が集う」という吉兆の話は載っているのに、厳光が光武帝と床を同じくした際の「客星が皇帝の座を犯すという凶兆」はなぜ載せていないのか?
僧慧熾の奇跡は載っているのに、もっと有名な奇僧、仏図澄の話をすべて載せないでおくのはおかしいのではないか?
機織り女の幽霊、鞠通の琴、そして郭璞、韓友、杜不愆といった人々の様々な奇妙な話や事績に至っては、まったく一つも収録されていない。
いったい劉敬叔は、どうしてこれらの内容を収録しなかったのであろうか。このためわたしは、ひとまず書き留めておいて、博識な読者がさらに情報を広めてくれることを待ちたい。
湖南の毛晋、識す。
と言うわけで、異苑を改めて収集し、一冊にまとめた明代の毛晋さんによるコメント。「もうちょっとで志怪を網羅ってレベルになってるのに、なんで網羅しなかったんですか?」とのことである。言うて捜神後記に載っててここに載ってないやつとかも結構ありましたよね。捜神記まで広げれば更に広がるのではないかしら。さすがに劉敬叔もそうした辺りとの被りは避けたんじゃないかと思いますし。
さて、と言うわけでこちらで捜神後記/異苑がすべて終わりました。ここから『詩経』の引用をひととおり揃え直す、をやっていきたいと思っています。詩経が終わったら『易』の六十四卦、そこから『礼記』。とりあえず四書はともかく、五経は「元ネタとして引ける」体勢を取れるとおいしいよね、って思うんです。元ネタ整備の上で五経をゆっくり把握できるのもおいしいですし。そんな感じで、のんびりと進めていきます。よろしくお願いします。