異10-05 張貞・楊香・崔景・任城
○張貞婦
蜀郡張貞行船覆,溺死。貞婦黃因投江就之。積十四日,執夫手俱浮出。
蜀郡の張貞が船旅の途中に転覆事故に遭い、溺死した。妻の黄氏は夫の後を追って長江へ身を投げた。十四日後、黄氏が夫の手を握ったまま二人そろって水面に浮かび上がった。
○楊香扼虎
順陽南鄉楊豐,與息名香於田獲粟,因為虎所噬。香年十四,手無寸刃,直扼虎頸。豐遂得免。香以誠孝,至感猛獸,為之逡巡。太守平昌孟肇之賜貸之穀,旌其門閭焉。
順陽南郷の楊豊は、十四歳の息子・楊香と田で粟を刈っていたところ虎に襲われた。楊香は寸鉄も持たずにそのまま虎の首に両腕を回して締め上げ、父を救った。楊香のひたむきな孝心は猛獣すら感じさせ、虎はたじろいで退散した。平昌太守の孟肇は彼らに穀物を賜り、その家の門戸を表彰した。
○崔景賢惠政
崔景賢為平昌郡守,有惠民政。嘗懸一蒲鞭,而未嘗用。
崔景賢が平昌太守を務めたとき、民に慈しみ深い政治を行った。役所には蒲で編んだ鞭を一本掲げてあったが、ついにそれを用いることはなかった。
○任城王沉飲
任城王六月沉飲,忽失所在。人以為中酒毒而化。
任城王曹彰は六月に大酒をあおったのち忽然と姿を消した。人々は、酒に毒が混じっていたために変じてしまったのだと噂した。
突然一気にマイナー人物になった。とは言えこれも引き続き漢魏期の話なのかもしれません。……などと語るうちに、気付けば次話で異苑ラスト。長かったような、短かったような。いや、明らかに長かったですね。いろいろな史書からは見れないエピソード群があり、楽しかったです。