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揺訳 捜神後記/異苑  作者: ヘツポツ斎
異苑十巻 雑条
192/198

異10-01 足下・田文・吳客

○足下之稱

介子推逃祿隱跡,抱樹燒死。文公拊木哀嗟,伐而製屐。每懷割股之功,俯視其屐曰:「悲乎足下!」「足下」之稱,將起於此。


春秋晋しゅんじゅうしん文公ぶんこうを、その即位まで大いに助けた介子推かいしすいは、しかし褒賞を嫌がり、山中に身を隠して木に抱きついて焼死した。文公はその木を撫でて悲しみ、伐って革靴を作った。毎回、股を切った功績を思い出し、足元の靴を見て言った。

「悲しいことよ、足下」

足下という言葉は、ここから始まったとされる。



○田文五月生

田文母嬖也,五月五日生文。父敕令勿舉。母私舉文,長成童,以實告之。遂啟父曰:「不舉五月子,何也?」父云:「生及戶,損父。」文曰:「受命於天,豈受命於戶?若受命於戶,何不高其戶?誰能至其戶耶?」父知其賢,立為嗣。齊封為孟嘗君。俗以五月為惡月,故忌。


戦国時代、田斉でんせいにあった田文でんぶん、すなわち戦国四君せんごくしくん孟嘗君もうしょうくん威王いおうの弟である田嬰でんえいへき、すなわち地位の低い側妾の子である。真夏の五月五日に生まれた。田嬰ははじめ田文を育て上げるべきではないとした。しかし母が私的に田文を育て上げた。総角を結う頃になり、初めて母は田文を田嬰に紹介した。田文は田嬰より召喚を受ける。

「父上、何故五月生まれの子を育ててはならぬと言われるのでしょうか」

「五月生まれの子の頭が門戸にまで及んだ際、父を損ねるためだ」

「命運は天よりのもの。どうして門戸により命運を定めさだめられることがありましょうか? もし門戸より命運を受けるというのであれば、門戸を高くすればよいではないですか。そうすれば、いったい誰が門戸により命運を左右されましょうか!」

田嬰は田文の賢さに感じ入り、ついに後継者とした。やがて斉より孟嘗君として封じられた。

なお俗説として、五月が悪月であるため、その月に生まれる子が忌まれているとされる。



○吳客木雕

魏安釐王觀翔雕而樂之,曰:「寡人得如雕之飛,視天下如芥也。」吳客有隱遊者聞之,作木雕而獻之王。王曰:「此有形無用者也。夫作無用之器,世之奸民也。」 召隱遊,欲加刑焉。隱遊曰:「臣聞大王之好飛也,故敢獻雕。安知大王之惡此也?可謂知有用之雕鳥,未悟無用之雕鳥也。今臣請為大王翔之。」乃取而騎焉,遂翻然飛去,莫知所之。


戦国魏せんごくぎ安釐王あんりおうが天空を舞うわしを眺めて喜び、言う。

「もしわたしもあの鵰のように飛べたならば、天下を芥のごとく見下ろせよう」

これを聞いたの流浪の士が木で鵰を彫り、安釐王に献上した。すると安釐王は言う。

「これは形ばかりで役に立たぬ。無用の器をつくる者こそ世を惑わす奸民だ」

そこでその士を呼びつけ、罰しようとした。すると士が答える。

「大王が飛ぶことをお好みと聞いたゆえ、あえてこの鵰の像を献じたのですが、まさかこうもお憎みになられますとは。ならば伺いたい、大王のお望みに取り、いかなる雕が有用となるのでございましょうか? 無用の雕がいかなるものかを、本当に存じておられるのでしょうか?では臣がこの鵰にて大王の仰る有用をお目にかけましょう」

そして士が木鵰にまたがると、たちまち宙へ舞い上がり、翻然として飛び去った。行く先を知る者は誰もいなかった。




とつぜん寓話としてのオモシロ度が跳ね上がったんですけど! ただ前ふたつは志怪ってよりただの逸話なんですけど! そしてその、ただの逸話が無駄に面白い。どーすんだこれ。足下の語源とかやべーぞおい。


とりあえず、五月生まれの子はその抵抗力の低さから伝染病を拾って、さらに伝染病のコロニーと化しやすかったりするんでしょうね。で、そこから家に病を撒き散らす。たぶんそういう方面から忌まれるようになったんじゃないかとは思うんですが、まあ憶測。この辺、どっかに研究もあった気がしますが思い出せません――で、今ちょっと調べようとしたら、五月五日の節句をみんな太陽暦で決めてきやがってきててしんだ。だるい。太陽太陰暦の五月五日の話が見たいんですがぁあああ!



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