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揺訳 捜神後記/異苑  作者: ヘツポツ斎
異苑九巻 占術譚
191/198

異09-07 黃金・孫溪・永嘉・王僕

○黃金僦船

扶南國治生,皆用黃金。僦船東西遠近雇一斤。時有不至所屆,欲減金數,船主便作幻,誑使船底砥折,狀欲淪滯海中,進退不動。眾人惶怖,還請賽,船合如初。


扶南国ふなんこくでは、生計のあらゆる場面で黄金を貨幣として用い、船を借りる際は行き先の遠近にかかわらず一律で黄金一斤を支払った。

あるとき旅人が途中で目的地に届かないうちに「やはり安くしてくれ」と値切ろうとした。

すると船頭はたちまち妖術を使い、船底がまっぷたつに裂けたように見せかけ、「このままでは海に沈むぞ」と前にも後ろにも進まないふりをした。乗客たちは恐れおののき、結局は当初の取り決めどおり支払うと請い願った。船頭が元通りにすると、船は何事もなかったかのように漕ぎ出した。



○孫溪奴

元嘉初,上虞孫溪奴多諸幻伎,叛入建安治中。後出民間,破宿瘦辟,遙徹腹內,而令不痛。治人頭風,流血滂沱,噓之便斷,瘡又即斂。虎傷蛇噬、煩毒、垂死、禁護惛差。向空長嘯,則群鵲來萃。夜咒蚊虻,悉皆死倒。至十三年,乃於長山為本主所得。知有禁術,慮必亡叛,的縛枷鎖,極為重復。少曰已失所在。


元嘉げんか年間のはじめ、上虞じょうぐ孫溪奴そんけいどという男がおり、幻術のたぐいを数多く操ることで知られていた。孫溪奴は叛逆して建安けんあんの郡府に逃げ込んだ。

のち民間に現れ、いくつもの妖術を展開した。

膿のたまった腫瘤を遠くから裂き開いて中を取り除いた。このとき患者は痛みを感じなかった。

頭痛で血が滝のように流れている者を一息吹きかけて止血し、その場で傷口を収めた。

虎に食われ蛇に噛まれた瀕死の者、毒気に当たった者も呪禁で救った。

空に向かって長く口笛を吹けば無数のカササギが集まり、夜に蚊や虻を呪えばその場でことごとく倒れ死んだ。

元嘉十三年、ついにかつての主人が長山ちょうざんで孫溪奴を捕縛した。

禁呪を持つ者だから逃亡は必至と考え、幾重にも鎖と枷を掛けた。ところがまもなく跡形もなく消え失せた。



○永嘉陽童

永嘉陽童,孫權時俗師也。嘗獨乘船往建寧,泊在渚次。宵中,忽有一鬼來,欲擊童。童因起,謂曰:「誰敢近陽童者!」鬼即稽顙云:「實不知是陽使者。」童便敕使乘船,船飛迅駛,有過猛帆。至縣,乃遣之。


永嘉えいか陽童ようどうは、孫権そんけんの時代に名高い呪師であった。あるときただ一人で船を漕ぎ、建寧けんねいへ向かっていたが、夜中に洲のほとりに泊まると突如として鬼が現れ、陽童を襲おうとした。陽童は身を起こし、一喝する。

「陽童さまに近づく者は誰だ!」

鬼はすぐに額を地につけて詫び、言う

「陽使者とは存じませんでした」

陽童は鬼に舳先に立つよう命じると、船は飛ぶがごとく疾走し、大帆船さえ追い抜いた。目的の県に着くと、陽童は鬼を下船させて帰した。



○王僕醫術

滎陽鄭鮮之字道子,為尚書左僕射。女腳患攣癖,就王僕醫。僕陽請水澆之,餘澆庭中枯棗樹。樹既生,女腳亦差。


滎陽けいよう鄭鮮之ていせんし、字は道子どうし尚書左僕射しょうしょさぼくしゃを務めていた。

あるとき娘が脚の痙攣で歩けなくなり、名医の王僕おうぼくを招いた。

王僕は「少し水を」と言って娘の脚に注ぎ、余った水を庭の枯れた棗の木に掛けた。すると木はみるみる蘇り、同時に娘の脚も完治した。




妖術祭という感じですねー。これはどうなんだろう、巻の前半はきれいな妖術、後半は悪い妖術、という感じでいいのかな。そんな簡単に切り分けちゃうのも危なそうだけど。


ともあれ、次話からいよいよ最終巻です。思いがけず長かったし、たくさんのエピソードにも出会えました。

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