異09-06 庾嘉・任詡・沐堅・涇祠
○庾嘉德善筮
潁川庾嘉德,善於筮蔡之事。有人失一婢,庾卦云:「君可出東陵口伺候,有姓曹乘車者,無問識否,但就其載,得與不得,殆一理也。」旦出郭,果有曹郎上墓。徑便升車,曹大駭呼,生驚奔入草,刺一死屍。下視,乃其婢也。
潁川の庾嘉徳は、易に長けていた。ある日、とある家の婢が行方不明となった。そこで庾嘉徳に占ってもらった。庾嘉徳は言う。
「東陵口に出て待たれよ。やがて曹氏がやってくる。知り合いかどうかは問わず、ただその車に乗られるのだ。取り戻せるかどうかはともあれ、これ以外に道はない」
翌朝、男が城外に出ると、案の定、曹氏が車に乗り、墓参りに出ようとしていた。男がそのまま車に乗り込もうとすると、曹氏は大いに驚き、叫んだ。すると、驚いた曹氏の婢が草むらに飛び込み、倒れていた死体にぶつかった。
見れば、まさしく男が探していた婢の死体であった。
○任詡從軍
北海任詡字彥期,從軍十年乃歸。臨還,握粟出卜。師云:「非屋莫宿,非食時莫沐。」詡結伴數十共行,暮遇雷雨,不可蒙冒,相與庇於巖下。竊意「非屋莫宿」 戒,遂負擔櫛休。巖崩壓停者,悉死。至家,妻先與外人通情,謀共殺之,請以濕髮為識。婦宵則勸詡令沐,復憶「非食時莫沐」之忌,收髮而止。婦慚愧負怍,乃自沐焉;散髮同寢。通者夜來,不知婦人也,斬首而去。
北海の任詡、字は彦期。従軍して十年で帰郷した。帰るにの際し、米を握って占いに出かけた。易者は言う。
「家屋でなければ泊まるな。食事時でなければ髪を洗うな」
任詡は数十人の同郷のものとともに帰途についていたのだが、ある夕暮れに雷雨に遭った。雨をしのぐことができなかったため、皆で岩の下で雨宿りした。ここで任詡は「家屋でなければ泊まるな」という戒めを心の中で思い、荷物を背負ったまま髪を梳いて、眠らず、身を休めるのみとした。すると岩が崩れて雨宿りしていた者たちは皆死んだが、任詡だけは無事であった。
家に帰ると、妻はすでに他の男と密通しており、共謀して任詡を殺そうとした。妻は濡れた髪を真夜中の目印にしようと間男と約束していた。夜、妻が任詡に髪を洗うように勧めたが、任詡はここでも「食事時でなければ髪を洗うな」という禁忌を思い出し、髪を洗わないままとした。妻は恥じ入って申し訳なく思い、自ら髪を洗った。そして髪を解いたまま、共に寝た。
夜中、密通相手がやって来、標的の正体に気づかないまま妻の首を斬って去った。
○沐堅咒斃
河間沐堅字壁強,石勒時監作水田,御下苛虐。百姓怨毒,乃為堅形,以刃矛斫刺,咒令倒斃。堅尋得病,苦被捶割,於是遂殞。
河間の沐堅、字は壁強。石勒の時代に水田の監督をしていたが、部下に対し厳しく残忍であった。百姓は彼を恨み憎み、沐堅の形を作り、刃物や矛で突き刺し、呪いをかけて倒れ死ぬように祈った。
すると沐堅は間もなく病気になり、まるで叩き切られるような苦しみに苛まれ、そのまま死んだ。
○涇祠妖幻
晉鹹寧中,高陽新城叟為涇祠,妖幻署置百官,又以水自鑒,輒見所署置之人,衣冠儼然。百姓信惑,京都翕集。收而斬之。
晋の咸寧年間、高陽の新城に住む老人が淫祠、邪教の祠を建てた。そこでは、怪しい幻覚で百官が浮かび上がった。また水に自らを映すと、そこに任命された人々が衣冠を整えて整然と現れた。
百姓はそれを信じて惑わされ、建康からも大勢の人が集まった。しかし、彼は捕らえられ、斬首された。
突然話が一気に残虐になってわろてる。それにしても沐堅の話、なにが面白いって、これ屠本十六国春秋に採用されてんですよね。いやわかるけどさあ、面白いし。とはいえそのせいで後世の人たちからはいいかげんにしろよ屠喬孫って叩かれてんのおもしろすぎる。