異09-05 王經・趙侯
○王經遷官
清河王經字君備,去官還家。輅與相見,經曰:「近有一怪,大不喜之;欲煩作卦。」卦成,輅曰:「爻吉,不為怪也。君夜在堂戶前,有一流光如燕雀者,入君懷中,殷殷有聲,內神不安,解衣彷徉,招呼婦人,覓索餘光。」經大笑曰:「實如君言。」輅曰:「吉。遷官之徵心。」頃之,為江夏太守。
清河の王経、字は君備。あるとき官を辞して郷里に帰った。管輅と会見し、言う。
「近頃、怪しいことがあって、まこと不快なのですである。卦を立てて見ていただけまいか」
卦が成ると、管輅は言う。
「爻は吉です。怪しきことにはなりません。あなたはある夜、堂の前におられたとき、一すじの光が燕や雀のようにあなたの懐に飛び込み、ひゅうひゅうと音を立てました。すると内心が落ち着かず、衣を脱いであちこち歩き回り、婦人を呼びつけ、なお余光を探し求めたことでしょう」
王経は大笑して言った。
「まさしく、あなたの言う通りでした!」
管輅は言う。
「これは吉兆です。官位が遷るしるしです。」
しばらくして、王経は江夏の太守に任ぜられた。
○趙侯異術
晉南陽趙侯,少好諸異術。姿形悴陋,長不滿數尺。以盆盛水,閉目吹氣作禁,魚龍立見。侯有白米,為鼠所盜。乃披髮持刀,畫地作獄,四面開門,向東長嘯,群鼠俱到。咒之曰:「凡非啖者過去,盜者令止。」止者十餘,剖腹看髒,有米在焉。曾徒跣須履,因仰頭微吟,雙履自至。人有笑其形容者,便佯說以酒,杯向口,即掩鼻不脫,乃稽顙謝過,著地不舉。永康有騎石山,山上有石人騎石馬。侯以印指之,人馬一時落首,今猶在山下。
晋の南陽の趙侯は、若いころからさまざまな異術を好んでいた。容貌はやつれ、見た目も醜く、身長は数尺にも満たなかった。彼は水を盆に張り、目を閉じて息を吹きかけて禁を作ると、魚や龍がすぐさま現れるという術を使った。趙侯のもとに白米があり、それを鼠に盗まれていた。彼は髪を乱して刀を持ち、地面に牢獄を描き、四方に門を開け、東を向いて長嘯すると、鼠たちが一斉にやって来た。そして呪文を唱える。
「食らっていない者は通り過ぎよ。盗んだ者は止まれ」
止まった者は十数匹。その腹を裂いて臓物を調べると、中には米が残っていた。
かつて彼が草履を履いていなかったとき、空を仰いで小さく吟じると、草履がふたつ、自ずとやって来たという。
また、彼の見た目を笑った者がいると、趙侯はすぐにその者に酒を勧め、杯を口元に近づけさせた。するとその者は鼻が杯に吸いついたように離れず、やむなく額を地にすりつけて謝罪し、杯を地面に置いたが、なお持ち上がらなかった。
永康には「騎石山」という山があり、その頂上には石の人と石の馬があり、まさに騎乗していた。趙侯が印でそれを指し示すと、人馬ともにその首が同時に落ちた。二つの首は今なお山の麓に転がっている。
管輅シリーズが終わったと思ったらもっと怪しいやつが出てきたあー! いや、素晴らしいですね。管輅はただの「妙な占いを決めまくる変なおっさん」でしたが、こちらは正真正銘変なおっさんです。とは言えオムニバスになっているとおり、ここで終了。こうした変なおっさん、昔にも今にもたくさんいるんでしょうねえ。観察はしたいですがお近づきにはなりたくないな。