異09-04 餞席・印囊
○餞席射覆
館陶令諸葛原字景春,遷新興太守。輅往餞之,賓客並會。原自取燕卵、蜂窠、蜘蛛,著器中,使射覆。卦成,輅曰:「第一物含氣須變,依乎宇堂,雄雌以形,翅翼舒張;此燕卵也。第二物家室倒懸,門戶眾多,藏精畜毒,得秋乃化;此蜂窠也。第三物觳觫長足,吐絲成羅,尋網得食,利在昏夜;此蜘蛛也。」舉座驚喜。
館陶県令の諸葛原、字は景春。彼が新興郡太守へ転任することになった。その餞別の宴が開かれた際、管輅も参列した。賓客がそろう中、諸葛原は自らツバメの卵・蜂の巣・クモを器に入れ、射覆、覆いの下の物を卦で当てる遊びを管輅にさせた。卦が立つと管輅は言う。
「第一の物は気をはらみ、変化を待ち、軒先に身を寄せ、雄雌は形で分かれ、翼を伸ばして飛ぶ。これはツバメの卵です。第二の物は家に逆さに懸かり、出入口が多く、精を蓄え毒を宿し、秋になって形を変える。これは蜂の巣です。第三の物。足は長く戦慄するようで、糸を吐いて網を張り、網をたどって獲物を得、暮れどきこそ利を得る。これはクモです」
一同はその的確さに驚き、歓声を上げた。
○印囊山雞毛
平原太守劉邠字令清,取印囊及山雞毛置器中,使輅筮之。輅曰:「內方外員,五色成文;含寶守信,出則有章;此印囊也。高岳巖巖,有鳥朱身;羽翼玄黃,鳴不失晨;此山雞毛也。」邠曰:」此郡官舍,連有變怪;使人恐怖,其理何由?」輅曰:「或因漢末之亂,兵馬擾攘,軍屍流血,污染邱山;故因昏夕,多有怪形也。明府道德高妙,自天祐之;願安百祿,以光休寵。」
平原太守の劉邠、字は令清。彼は印を入れた袋とキジの羽を器に入れて管輅に占わせた。管輅は卦を見て言う。
「内は方形、外は円形、五彩の文を成し、宝を懐に守信を示し、外に出れば印章を表す。これは印袋です。高岳のようにそびえ、朱い身を持つ鳥がいて、羽は黒と黄を帯び、朝に鳴いて時を違えぬ。これは山鳥の羽です」
劉邠が尋ねる。
「この郡の官舎では立て続けに怪異が起こり、人々を怯えさせている。原因は何か?」
「おそらく漢末の乱で兵馬が入り乱れ、戦死者の血が丘陵を汚した名残でしょう。ゆえに宵闇には怪しき影が現れるのです。しかし太守どのの徳は高く、天の助けがございます。どうか安泰のうちに諸々の福を享受し、その栄光をさらに輝かせてください」
とりあえず管輅シリーズは次話前段で終わります。かなりの厚遇ですね。こういう逸話集を世説新語と並列で眺められるようになるのって最高に楽しそうです。