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杖で彫る
ジョウカイは、わかっているというようにうなずいて立ち上がると、上がり框にたてかけた杖をとって、土間におりた。
「 もし 」
また、戸のむこうから女の声がした。
「いまあけるゆえ、まっておれ」
ジョウカイは手にした杖のさきを土間にざりざりと当て、なにかをえがきだす。
「 ―― それは、なにかの魔除けでございますか?」
男が、土間に杖で彫って作った、《溝》のあとをさす。
「うむ、まあ、そのようなものでな」
ジョウカイが掘ったそれは、真四角の中になにやら文字がおさめられたようなおおげさな落款のようだった。




