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戸をあける
手をかけるが、戸がびくともしない。
「 そんな、もし! まさかあの熱いのに、はいられましたか? まだ風呂中に置く台もいれてございません! 釜の底は直に火にあたっておって、足がつけばおおやけどに っ 」
がたん、といきなり戸がうごいた。
ばん、といきおいよく横にすべらせた戸が音をたて、湯気でもうもうとしたそこには、だれもいなかった。
「・・・・」
そうっと釜の中をのぞいてみた。
そこには、 ――― 。
―――――――
「 ―― なにも、ございませんでした」
なかったのを残念におもうような声で男はうつむいた。




