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行儀よく
「 せめてなにか残っていれば、その女の正体もしれようとおもいましたが、なにも残っておりませんで・・・」
「なるほど。 女の櫛やかんざしが残っておったというはなしは、拙僧もきいたはなしにござったが、なにもないとは、これまたおもしろい」
おもしろくはございません、と男は眉をよせジョウカイをみた。
「そのときも、風呂場からここへもどりますと、女がまた ―― 」
あの女が土間に立ち、驚いて声もだせない男に頭をさげると、そのまま外へむかった。
あわてておいかけるが、姿はなく、雪の上にあしあとももちろんなかった。
「 ―― タヌキにしろ、《モノノケ》にしろ、さいごまで行儀がよくて、なんだかこちらがとまどうばかりで・・・」
ほお、とわらいをごまかすように、ジョウカイはお茶をのむ。




