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ゆがんで
女はだまったまま囲炉裏のそばにすわった。
やはり、影がない。
これは、幽霊のたぐいか?
山にでる幽霊を、《モノノケ》とよぶのだろうか?
自在鉤にかけた鉄瓶の湯がわいたようだったので、女に背をむけてお茶の支度をしていた男はしかたなく、ふりむいた。
囲炉裏の、うっすらとした煙のむこうにいる、女の顔を盗み見る。
やはり、夢のなかでみた女だ。
その、とくに美人でもなく、記憶にのこりそうもない顔が、
―― ゆがんでいた。
「 っひ 」
用意した湯呑を倒すほど、うしろに身をひいてしまった。




