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風呂のしたく
昼をすぎたころ一段と寒さが増し、雪は思ったよりもはやくに降り始めた。
風はなかったが、降り続くそれが、枯れ草や木の枝につもりはじめるころには、家にもどることにした。
風呂がまちどおしくてしかたなかったし、雪をなめるなと里長にもいわれていたので、それほど家からははなれてもおらず、目印となる石の道標もまだ雪にはうまっておらず、すぐに帰り着く。
風呂のしたくをはじめ、火をおこしたところで、ようやく囲炉裏の火もおこす。
めをやったむこうの板の間に、画きかけのものがあるが、じぶんで見てもわらってしまった。
線といえるほどのしっかりした墨あとではないそれは、夢の中にでてきた女だ。