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異世界伝説巡り旅  作者: オムレット
第1章 旅の始まり
12/28

12話 騎士団

  今日の朝はさすがにいないようだ。なぜ昨日はここで寝ていたのかやっぱり気になる。

 僕はベッドから出て何となく部屋を見て回ったがやはり居なかった。

  はぁ、自分は一体何をしているんだ? バカみたいな事をしている気分だ。いや、実際バカな事をしているんだろうな。



 今日も朝食を食べるため、やはり場違いな雰囲気しか感じない空間にいる。

 とても料理は美味しいのだが、朝からそわそわしながら食べなくてはいけないので何とかしたいと思っている。


 そんな事を考えていると、僕に話が振られた。

「ところでカルタ君。もう君は"風の便り"を読んだかい?」

「いいえ、その風の便りとは何ですか?」

 何だろう? そんな本あったっけ? 国王直々に勧めるんだから、よほど有名な本だったりするのかもしれない。

「そうか、まだ読んでいなかったか。『月刊 風の便り』と言ってな、各国の事件や出来事、時にはクエストの募集も載っている事がある読み物さ。毎月読む事を勧めておくよ」

 なるほど、この世界にも雑誌があるのか。書庫にもあったかな。


 各国という事はそれだけ世界に認められているのだろう。

「いろんな国に読まれているって凄いですね」

「当然さ。彼らは公平に情報を提供する。各国は自国に多少不利益な事が流れても他国の情報が手に入る事で目を瞑っているのさ」

「さすがはギルドね。しかも風の便りは冒険者に限らず無料で配布しているのよ!」


 ギルベルトが言い終わると同時にセリーナが凄まじい勢いで説明してくれる。あまり聞き取れなかったけど何となく言いたい事は分かった。

 鼻息を荒く、興奮しながら達成感に浸り、まるでひと仕事終えた労働者のような満足そうな顔をしている。

 さっきまでセリーナはジッと会話を聞いていたけど、やっぱり我慢できなかったんだね。そうまでしなくても、タイミングを見て普通に会話に入ればいいのに…


 それより、ギルドはそんな事もやっていたのか。そう言えばギルドに行った時に端の方に新聞みたいな感じの紙束が積んであったような気がする。

「私は君たちがギルドに行ったと聞いてもう読んだと思っていたが」

「あはは、私すっかり忘れていたわ。世間を知るのにピッタリな読み物よねぇ」

 セリーナは所々自身の天然っぷりを発揮するよね。

「今度読んでみます。面白そう」





 食事が終わり、すぐ書庫に向かった。もう迷わないようにしっかり道を覚えたのでスムーズに目的地に到着した。

 入ればすぐに昨日読んでいた場所に昨日のまま本が積んである。

「おはようございます、シュゾルフさん」

「おはよう。早いな」

「はい、今日は午後から騎士団へ行こうと思っているので朝から来ました」

 シュゾルフは頑張りたまえ、と言い読書に戻る。

 僕は時間に気を付けながら勉強を始める。



 2時間ほど経ったところで休憩していた。

 改めて目の前の文献を見てみると、風の便りも用意してくれていた。分厚い本ばかりを優先していたので気づかなかった。

 読んでみると、ただの世間話から大きな事件まで幅広いジャンルが掲載されている。お金を取っても文句無しの素晴らしい雑誌で、結構面白い。むしろ日本でもこれくらいどうでもいい記事を掲載してたら購読してたな。


 用意されていた中には今月分もあったので読んでみた。

 目玉記事は、とある国の評判の悪い侯爵は多くの奴隷を所有していて、その奴隷達が反乱を起こし逃げたらしい。侯爵はその奴隷達を発見、捕獲した者に報奨金を与えるというクエストだった。

 他には、海の沖にある国は巨大なモンスターが数匹発生して船が出せない、などの度肝を抜かれる内容の記事がチラホラ目を引く。

 ファンタジー感がハンパないね!

 また改めて異世界に来た実感が湧いてきた。



 さて、ぼちぼち勉強に戻りますか。あと1時間ほどやったら昼食の時間だからそれまで集中しよう。

 これでやっと半分が終わる。逆に言えばまだ半分残っている。

 人生で一番ちゃんと勉強しているなぁ。元の世界では勉強は嫌いだった。でも、科学と歴史は比較的勉強はしていた。やってて面白い教科は成績良かったなぁ。





 時間的にも進み具合的にもキリが良いので食事をしに書庫を後にした。

 食事の席にはセリーナだけだった。ギルベルトとセラは出掛けていて居ないらしい。


「ねぇカルタ。午後の予定って空いてる?」

 セリーナは唐突に予定を聞いてきた。

「僕は午後から騎士団へ挨拶に行こうと思っているんだけど、何かあったの?」

「良かった、丁度私もカルタに騎士団に行こうって誘おうと思ってたの。団長が会いたいって言ってたよ」

 団長さんが、僕に会いたいって?

 ここに来てから時々僕の話を聞くため会いたいと言って来る人がいる。特に使用人達が、どこぞの誰かさんみたいに攻めてくるので怖かった。


「あ、正確には君の持っているカタナ? だっけ、あの剣が気になるってさ、それでついでに君にも会いたいって」

 要するに刀のオマケ扱いですか。大丈夫さ、泣いてないから。おっと、目にゴミが…





 食事を終えた僕らは部屋から刀を取りに行き、騎士団の施設へ向かった。施設と言っても城を取り囲む壁自体が騎士団の拠点となっている。

 その城壁は城を四角く囲っており、各角の部分には監視塔がある。騎士団は各監視塔に就くために4分割されている。団長さんは主に、攻められやすい後方左側ーー城を正面から見たらという意味でーーにいるようなので、そちらへ向かっている。

 着いてみると、芝の上で騎士団の団員達が剣の稽古に励んでいた。そこにはひと際異彩を放つ人物がいた。恐らくあの人が団長さんだろう。


 近づく僕らに気が付いた団長?さんが部下だろう他の騎士達に稽古の継続を伝え、向こうからも来てくれた。

「よくお越し下さいました姫様。そちらの方が御客人のカルタ様ですね」

 おお、何だこのカリスマオーラは……

 立ち振る舞いや仕草に容姿、どれを取っても完璧な人が存在するとは!

 なんか今まで会った人は、弾丸フレンドリーな姫か、優秀な宰相が実は腹黒だったりとか、意外とお茶目だった国王とか、いい人達だけど役職のイメージに合った人はいなかった。

 やっとしっかりとした目標に出来そうな人が現れたぁ。


「ちゃんと連れてきたよ。だから後で稽古付けてよね」

「初めまして、カルタです。宜しくお願いします、団長(・・)さん」

 2人とも彼におのおの挨拶をする。


「姫様はいつも元気ですね。分かっております、約束ですからね」

 そして僕対してもにも丁寧(・・)に挨拶をする。

「カルタ様は初めまして、ですね。私は騎士団の "副団長" を務めております、ヨハン・ラダックと申します。以後お見知り置きを」

「はい、宜しくお願いーー」

 ん?今彼は何て……


「……ふぇ?」


 団長じゃ、ない⁉︎ こんなにイケメンでカリスマ性抜群のこの人が副団長、だと……

 恥かしっ! めっちゃ自信満々で「団長さん」なんて言ったのに、気を遣われて自然に訂正された。

 いや、副団長だということもあるだろうが、でもどうしても団長という役職の人にしか見えない。

 待てよ。副団長さんがこんなに凄いんだから、団長さんはきっとちょっと堅物な頼れる人物だろう。でもイメージ通りだったらどうしよう、そうだったら話しづらいなぁ〜


「カルタがまたブツブツ何か言ってる。時々こういうことあるけどちょっと怖いわ」

「面白い方ですね」

 あれ、なんか引かれてる? まぁいっか、考えるのはやめだ。


「大丈夫ですよ、よく間違われますから気にしないで下さいね」

 さらに気を遣われてしまった。

「では、団長さんはどちらに?」

 本人らしき姿はここに来てから見当たらない。まぁ実際はヨハンさんが団長だと思っていたからだけど、それが分かってからもそんな感じの人はいない。

 しかし、芝の上で寝ている人は1人だけいる。とても嫌な予感がする。出来れば触れたくない。

 そうは思っても、期待を裏切られるのが人生だ。予感は的中したらしい。


 例の寝ている人のところに向かいながらヨハンさんが懇切丁寧に教えてくれる。

「彼が我が騎士団の団長であり騎士団最強の騎士、ユーフリート・エルランダです。普段は残念な方ですが、仕事のときは真価を発揮する両極端な方なのですよ」

 うーわ、これまた個性が強いな。ヨハンさんの口ぶりからだと悪い人ではないみたいだが、苦手なタイプでない事を祈ろう。


 ヨハンさんがユーフリートさんを起こす。目を覚ましたユーフリートさんはすっごく眠たそうに目を擦りながら欠伸をし、深呼吸をしてようやく話が出来そうな状態になった。

「やあやあ随分待たせて悪いねぇ〜。それでは自己紹介をーー」

「団長、もう済ませましたよ」

「いや、俺は彼のことを知らないし」

「お言葉ですが、貴方が彼を呼んだのですから分かるでしょう? ボケっと寝ていただけなのですから、用件があるならさっさと済ませて差し上げてくださいね」

「お、おう。悪かった」

「だから貴方は………」


 まるで、夫婦の会話だな。というか戦闘のみが優秀な団長って大丈夫なの? いや、だからこその団長なのかも知れない。

 まぁその辺は僕如きが口出しするような事ではないので用件を手っ取り早く聞きたい。

「えーと、それでご用件は……」

「おお、そうだそうだ。国王から君のことを聞いて興味が湧いたのさ。ついでに君が持ってる珍しい剣も見せて欲しい」

 あれ、セリーナから聞いた話と逆?

 隣のセリーナを軽く睨む。

「セリーナさん、話が逆なんですけど。さっきめちゃくちゃ悲しかったんですけど!」

「あは、あはは。ごめんなさい」

 小動物のように小さく萎縮し落ち込むセリーナ。くそぉ、その姿も可愛いから怒る気も起きなくなるじゃないか。

 この子は本当に旅に出して大丈夫なのか?


 そんなことは置いといて、ユーフリートに刀を見せる。

「おお、これがカタナってやつか! 俺は武器の収集が趣味でな。使える使えない問わずカッコいい武器ってーのは浪漫があるだろう?」

「その気持ち分かります! 武器って良いですよね。カッコいい武器があると興奮します」

「おお!分かってくれるか!ここの奴らはあまり関心が無いみたいでな、俺はますますお前が気に入ったぜ」

 おお、まさか刀の良さが分かる人がこの世界にもいたなんて。武器は男の浪漫! まさにその通りだ!

「ええ、僕も貴方のことが気に入りました。実は今まで貴方に少し苦手意識があったんです。すみません」

「構わん! 俺たちゃもうダチだ。名前で呼んでくれていい。俺もお前をカルタと呼ぶからよ」



 その後、熱き2人の男の対話は2時間にも及んだ。時に褒め合い、時に論争を交わし、確かな絆を築き上げた。

 そんな共有できる喜びを分かち合う僕らをよそに、セリーナはヨハンに約束通り稽古を付けてもらっていた。

 僕らはお互いの事をよく知り、まるで昔からの親友のような関係となっていた。

「ふぅ、こんなにも趣味で語り合えたのは初めてだよ」

「俺もさ。久々に元気になったぜ。ーーだから提案なんだが、騎士団に入らないか、カルタ」

 騎士団に入る、か。今の僕ならここで楽しく暮らすことも出来るはずだ。でもそれは、今じゃない。

「誘ってくれてありがとう。でも僕は世界を自由に見て回りたいんだ」

「そうか、分かってはいたが分かり合える友はそうそう出会えるものではないからな」


 表情は笑っているけど寂しい気持ちが伝わってくる。僕もその気持ちが痛いほどよく分かる。でも、僕にとって初めて心の底からしたい事が出来たから、それを優先したい。

「世界を見ることに満足したら、今お世話になっている分を恩返ししたいと思っているし、その時入れてもらうよ」

「ふはは、それまで生きてたら入れてやるよ」

 僕は未来に約束をした。その時が来たらこの国に貢献する事を。

必要かどうか分かりませんが補足します。今更ですが、カルタくんが今の世界に行く前が18時頃で、来た滞在1日目が21時頃です。

時間が経ったのは時空移動の効果ですが、時間の流れや時間の読み方はこっちの世界も同じです。

まぁぶっちゃけ今考えたんですけどね。


さて、次回!

カルタ君がシゴかれる!

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