10話 気になるあんな事、こんな事
記念すべき第10話目デスヨー
そよかぜ亭に到着した僕らはさっきと同じ席に座った。
確かにお客さんはお昼の3分の1だがこの時間はいつもこんな感じだそうだ。
僕らに気付いたソフィちゃんがこっちに来た。
ただし一人ではなくソフィちゃんと同年代くらいの子どもが数人付いて来た。
「お待たせしました。それとお友だちがちょうど遊びに来て2人の事話したら会いたいって付いて来ちゃった。勝手に言っちゃってごめんなさい」
なるほど、まあ子どもは好きだし自分で言うのも変だけど実は子どもに好かれやすい。
「構わないよ。ぼくはカルタ。君たちにも話が聞けると嬉しいんだけど、いいかな?」
子ども達はいいよっ! と元気良く言ってくれた。
まず自己紹介から始めた。
「僕はこことは違う世界から来たんだ。昨日まで魔法なんてない世界に住んでいて、ここから僕の世界に 来たスタンリー・グレイハンズと一緒に生活してたんだ」
僕は僕がいた世界の文化や技術について話した。
子ども達は口々に嘘だーとか面白そうだとかそれなりにウケたようだ。
「だからさ、ここのことを色々教えてくれない?」
子ども達は次々にいろんなことを教えてくれるけど、みんな同時に喋るので理解するのに時間がかかってしまった。
みんないい子だがこの国の人は元気と好奇心が強すぎる。
ちなみに僕がすぐに自分について話したのはこれまでの経験からして子ども達から質問攻めという精神崩壊攻撃を受ける可能性を回避するためである。
さて、子ども達からの情報を要約するとこうなる。
この世界は3つの大陸からなり、中でも一番大きいステア大陸の中心から少し東にウィルドン王国がある。
この国は風の神殿から加護を受け作物がよく育ち、自然の豊かではトップクラスだとか。
そしてこの国の1番の長所は、さっきセリーナから聞いた他種族の受け入れだろう。
種族差別を最も嫌うウィルドン王家は代々他種族を受け入れてきたらしい。
しかし、そのせいで昔1度だけ滅ぼされかけた事もあったが、何とか立て直すことに成功。
その後も受け入れをやめなかったことを評価され今では最も優しい国だと――良くも悪くも――言われるらしい。
名物は豊富な作物と風車だ。
作物は基本的に地球とほとんど同じみたい。
さらに、実に興味深い話が出た。
ここウィルドン王国に神殿があるらしいが、どこにあってどんな神殿なのかは分からなかった。
セリーナは知っているようだが今は教えてくれないとのことだ。
他にも、世界のどこかに恐ろしい魔女がいるとか、竜は治める国があるとか色々教えてくれた。
やっぱり子どもは好奇心が高いから親や旅人などの大人に訊いて回ったりしているので物知りだ。
色々教えてもらったお礼に僕は子供たちと遊んだ。
もちろんセリーナも一緒だ。
日が暮れるまで遊んだ僕らは子供たちを家まで送り届け、最後にそよかぜ亭に戻っていた。
「今日は色々ありがとう、ソフィちゃん。ごはん美味しかったからまた来るね」
「は、はい!またお越しください。またね、セリーナちゃん」
「うん、また来るわ。バイバイ!」
こうして僕の濃厚な1日が終わった。
城に帰った僕はベッドに横になった瞬間泥のように眠った。
たった1日なのに多くのことを知り、体験したから疲れたみたいだ。
――ここは、夢?
暗い靄が掛かってる、様な気がする。
体がだる重い。
とても甘い、頭痛がするほどの、香水の香り。
女性の笑い声、微かに聞こえる。
じわじわと、恐怖が迫り来る!
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖⁉︎
不意に手のひらに、暖かい感触を、温もりを感じた。
僕はこの感触を、温もりを知っている。
でも今はどうでもいい。
僕はまた深い眠りについた。
「ふぁ〜あ、よく寝た〜」
朝の日差しを浴び、新たな朝を迎えた。
さすがに夕食食べてないからお腹すいたなぁ。
ぐぅ〜っとお腹が鳴る。
それにしても疲れ過ぎて悪夢的な夢を見た気がするが、全然覚えてないんだよな。
そういえば寝ているときに誰かいたような…
「うん?」
あれ? あらら? これは一体どういう状況ですか?
なぜ今ここにキミがいるのかな?
「セリーナ? セリーナさん? 朝ですよ! グッドモーニング!」
「う、う〜ん。あと1時間〜」
あははは、気持ちは分かる。前までは僕もこんな感じだったよ。
また睡眠に入ろうとするセリーナの寝顔は可愛らしい。
無理矢理起こすのも気が引けたので、頰っぺたをプニプニとつつきながら優しく起こす。
「朝だよセリーナ。僕はお腹空いたから朝食食べようよ」
「むーぅ、もうちょっと〜」
起きてくれない。
「寒くないの? 風邪引くよ」
少し肌寒い朝なのに白のネグリジェの薄着姿だから寒そうに見える。
「くしゅん! 寒いよ〜。入れて〜」
ななな、何してんの! あんたは⁉︎
ふとんの中に侵入するセリーナ。
「セリーナさん、これはヤバい! 寝ていいから僕は出るよ。あとで呼びに来るから」
ベッドふとんの間から素早く出ようと動こうとした瞬間
――ガシッ!
腕をしっかりホールドされました。
「ふぅ、暖かぃ〜」
む、胸が、あ、当たっ、当たってるから!
本格的にこれはダメだ!
こんな時にメイドさんが来たら…
早く起こさなきゃ!
「くっ!こうなったら、悪いけど強引に起こすよ!」
ふとんを剥ぎ、セリーナの肩を揺らす。
セリーナはさっきからむーぅと鳴いている。
数分後、何とかまどろみから覚醒したセリーナ。
今さっきのやり取りに赤面し僕から数メートル離れつつ枕に顔を埋めている。
「目は、覚めたかい?」
「何もかも忘れたいほど目がぱっちりです」
セリーナにとっての黒歴史を生み出してしまったようだ。
「なんか、ごめん。すぐに起こせばよかったよね」
「カルタは悪くない。寝起きが良くない私が悪かったの。その、嫌いになったよね」
いつもの元気がないのは、朝が弱いのと羞恥を晒したことを悔いているからだろう。
仕方ないな、何がなんでも元気を出してもらおう。
「あははは、暗い顔するなよ。可愛い顔が台無しだ。あ、寝顔も結構可愛かったよ。胸が当たったのは正直嬉しかったゼ!」
「もおー!恥ずかしいし落ち込んでるのに。カルタの意地わるー‼︎」
枕が顔面に飛んで来た。
グハッ!
「でも、ありがとう、元気出た。じゃあ行こっか。お腹ペコペコだよ〜」
ふう、上手くいった。元気付けるのも一苦労だな。
それにしても、どうしてセリーナがここで寝ていたのだろうか?
「そう言えばどうしてここに? それと、はい。風邪引かないでよ?」
バックパックから上着を出してセリーナの肩にかけた。
こういう配慮が大切です。
「あ、ありがとう。ここで寝てたのは、え〜っと、その」
えっ? 何? 気になるんだけど。
「な、内緒‼︎ 教えてあげないもん」
教えてくれないとですか。そうですか。
気になるけど、これ以上聞くのは野暮なのかもしれない。
僕らはその後朝食を食べに部屋を出た。
他国は分からないが朝食はいつも家族で食べる事になっていると言うセリーナ。
僕も一緒でも良いのか、と聞くと、
「むしろ大歓迎だよ。出来れば使用人たちとも一緒にご飯食べられたらいいのにって思うの」
あはは、さすがはセリーナ。
昨日の様に朝食を食べ、セリーナたちと会話をした。
まるで本当の家族になった様に接してくれることに心が温かくなった。
そんなことを思っていたらギルベルトが僕にこう言った。
「君のことは最初、スタンリーの友人という事で特別に配慮をしていたのだ。しかし正直真偽が分からず疑っていた。すまない」
突然のカミングアウト。
やっぱり疑われていたか。そりゃあ普通に考えて僕はただの不審者だからね。
「だが話をし君のことを見定めていたが、まさかこんなにも面白い人間だとは思わなかったよ。ああ、良い意味でだよ」
「要するに、どういうことですか?」
「カルタ君と話していると時々スタンリーを思い出させる。純粋で不思議な魅力がある君のことは気に入ってな。スタンリーに息子がいたら君のような人物だったのだろうと思うのだよ」
思ってたより気に入られてるけど、そこまでの魅力が僕にあるだろうか?
爺さんと生活していたから知らず内に癖を受け継いでしまったのが知れない。
「私もそう思うわ。 一目見たときから気になってて、実際話してみたら気に入っちゃったの!」
セリーナさん、それ告白してるみたいだから、こっちが恥ずかしくなっちゃうじゃないですかー。
ギルベルトも似たことを考えていたからか複雑な顔をしているのが分かる。
僕らのリアクションを見てセリーナは自分が何を言ったのか理解したようだ。
「あっああ、そうじゃないの!友達、友達としてだから! カルタとお父様も勘違いしないでよね!」
手をバタつかせて赤面しながらアタフタしているセリーナ。
「う、うん……」
「あ、ああ……」
そういう所も可愛い、と思った僕だった。
記念すべき第10話目で・す・が!
前に10話辺りでもう1人のヒロインが登場すると言ったな。
あれは嘘だ。
全然話が進まないんです。
書きたい事が書いているときに思い浮かんで追加してしまうんですねー
この調子だと2人目のヒロインの登場はまだまだ先になりますね。
さて、
カルタ君は子どもに好かれ易く舐められ易いために子どもに振り回された情報収集
なんか意味深な悪夢
セリーナの可愛い生態
の3本立てでしたね。
セリーナマジ可愛い、マジ天使!
はい! それじゃあ次回!
お勉強回だよ




