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それぞれの事情

 ブラストは笑顔のまま、軽く芽衣の肩を押すと力んでいるわけでも無かった為、簡単にソファーの上に倒れた。魔法で、ナイフを出現させ芽衣の首元に突きつける。薄っすら血が滲み、くすくす冷たく笑うブラスト。

(頭が狂った変な男ね)


 首元がピリッとした痛みに芽衣は、顔色変えずブラストを見続ける。少しずつ深くなって、薄っすら滲む程度ではなくなった時だ、ブラストは邪魔され芽衣が助けられる。


「王子、またですか!?」

「メイ様、大丈夫ですか」


 アンとアルが芽衣を助けてくれた。アンは王子の前に立ち、アルは芽衣の首元の血を拭き手当てする。


「アン邪魔しないでね。メイと楽しんでるんだから」

「王子、悪ふざけが過ぎます」

「アンは心配性だな、別に殺しはしないよ」


 王子に向かって、勇敢に向うアンに芽衣は格好良く感じた。芽衣が再び実は、女性が好きだったのだろうかと思うほど、アンは堂々と王子と話している。アルに手当てされてる間に、今度はアーネストがやって来た。ブラストは、アーネストを見た瞬間とても面倒そうな顔になる。


「王子!メイに何て事するのです」

「煩いよアーネスト。何で皆、僕じゃなくてメイばかり心配するかな」

「当たり前です。王子なんてほっといても大事にされるんですよ」


 アンが、遠慮なく王子に言う。ブラストの口調が初めて会った時に戻り、三人が芽衣を守る為ブラストの前に立つ。そんな姿を見て、ブラストはつまらなくなったのかソファーに座った。それを見て、ブラストが危害を加える事は無いと、芽衣の前に跪くように腰をかがめるアーネスト。


「メイ、大丈夫ですか?怖い思いさせてすみません。けれど、どうか帰るなど言わないで下さい」


 芽衣を心配すると言うより、帰ってしまわないか心配しているように聞こえた。そこまでして、王子の相手をして欲しいのかと、ブラストの周りの人は哀れだなと思う。


「暫くは帰りません。王子様も、此処に居ていいと言っていました。ねえ、王子様?」

「誰もそんな事・・・」


 芽衣の言葉に、ブラストが反論しようとする前にアーネストが喜び、芽衣の手を握ってぶんぶん振る。良かったと、何度も繰り返し喜んでお礼を言われる。本当は、暫く付き合ってやると言っただけで、城に滞在して良いとは言っていない。芽衣は、それが相手役として許すと勘違いしていた。


「やはり間違いではなかった。メイ、きっと王子の相手が出来ると思っていました」

「はぁ・・・」


(鼻水汚いな、飛ぶからこっち向いて話さないでほしい)

 芽衣の心の声も知らずアーネストは、だらしなく鼻水を少しだけ垂らしていた。


「アーネスト、いい加減メイから手を放してあげてね」

「私も王子の意見に賛成です。メイ様に、汚いものがつきます」


 アーネストが芽衣の手を握っていたのを、アルがさり気無く酷い言い方をした。王子や双子達の事は慣れているのか、アーネストは気にする事もなく芽衣の手を離す。何故か、双子のアンとアルは芽衣の事を、様付するので芽衣はむず痒くなる。何度も、様付は止めて欲しいとお願いしたのだが、お世話係として当たり前と笑顔で一歩も譲らなかった。


「メイが王子の相手務まると信じていました。向こうの世界では苦情係を職業にしていましたからね」

「私が理想の相手って・・・苦情対応窓口にいたから」


 そうです。悪気のない笑顔に、他にも同じように働いてる子いたじゃないかと思った。運悪く、芽衣が当たってしまっと諦めるしかない、そうこっそり溜息を吐く。アーネストの考えでは、芽衣が苦情対応を毎日そつなくこなしているので、王子の対応にもめげずに相手してくれると思ったようだ。


「はは、アーネストは酷いね。僕はそこまで文句言ってはいないと思うけどなぁ」

「王子、少しはメイと話をして気持ちをスッキリし早く春を」

「うーん、それは無理な話だね」


 何故?と、アーネストの言葉にニコニコ笑いながら妖精を怒らしたからと、だけ言った。芽衣が妖精って何なのか、アンとアルに小声で聞く。皆が言っている妖精とは、この世界の季節を守護する四人の妖精で、話の流れでは春の妖精の事を言っている。昔、メルフォン家の先祖が春の妖精を怒らせてしまい、メルフォンの強大な魔力があるのなら、自分達で春を呼べと投げ出された。


 そして、投げ出された事により魔法で春を呼び寄せない限り、冬のまま寒い季節を過ごす事になってしまった。そこでメルフォン家は代々、魔力が強くより王家の中でも特別な者だけが季節を操り春を呼び寄せ、国の季節を担当してきた。春さえ呼べば、夏秋冬は問題ない。


「王子、どういう事なのです。まさか、あの春の妖精を再び怒らしたんじゃ」

「僕が季節担当を引き継いだ日。春の妖精を呼び寄せたんだ」

「それで、何て仰ったのです」


 アーネストの緊張する声に、ブラストは楽しくなさそうに真相を語る。


「面倒だから自然に春を来させろと言ったよ」

「それだけですか?他には、他にも言ったんじゃないのですか」

「他?手のひらサイズで、チビとか見た目より年言ってるから、ババァって言ったかな?」

「かな?じゃないです王子、それで妖精は何と」


 馬鹿にした事に、怒った妖精は魔法で春を来させようとしても出来ない様に、呪いをかけてしまったようだ。それで、魔力が弾けて春が来れない状態になっているらしい。芽衣は、妖精なのに呪いなんて魔女みたいと、呑気に二人の会話を聞いていた。


「王子、今直ぐ謝って来て下さい」

「何で?僕は正しい事、真実を言っただけだよ。何も悪くないから」


 反省などしていないブラストに、芽衣はベン達の事を思い出す。春にしか咲かない薬草が採取出来ない為、体が弱っているメアリー。市場は活気が無くなり、辛そうな人達。なのに、王子は自分は何も悪くないと、呑気に優雅な生活を送っている。本来なら、芽衣にとって全く関係ない話、でもブラストの態度にこの国の人達は可哀そうと思った。


 すると、芽衣の視界にくるくる回ってる綺麗な野球ボール程の大きさ、ガラスの球体が目につく。とても綺麗なガラス球に、自然に手が伸びようとした時、ブラストの大きな声に驚いて割ってしまった。


「良くも割ってくれたね。これが、どんな意味かわかってる?」

「あの、ごめんなさい」

「これは唯一、僕が魔力の塊で作ったもので、城の中だけでも春が来ているかのような錯覚を」


 謝っても遅いし、どう責任を取るんだとブラストの怒りが芽衣にぶつけられる。しかし、急に大声を出さなければ、驚いて割れる事もなかったと訴える。


「口答えするの?メイ、城にまで冬になってしまえば王にばれてしまうだろ」

「まさか、王様は知らないの?」


 それが何?とでも言う様に、メイの顎を掴みアヒル口にして偉そうな態度を取る。


「王子様、この機会に妖精に謝りに行きましょう。私も一緒に謝ってあげます」

「何言ってるの何で僕が?そもそも根源はメルフォン家の先祖が怒らしたからだよ」


 人前だと優しそうな言い方だが、そろそろ限界に近いらしい。メイの顔に自分の顔を近寄らせ、無表情で『お前いい加減にしろよ』と、耳元で脅す。しかし、芽衣は苦情窓口で毎日、脅し文句や脅迫状が職場に送られてきたのもあって、そんなの怖くない。


「王子様、確かに元を辿れば御先祖様のせいでしょう。しかし、貴方は王子と言う立場で国を守る義務があります。それは絶対であり、貴方にしか出来ません」


 メイもっと言うのです。アーネストが野次馬の様に、茶々を入れるので無視した。ブラストは、王子であって王様じゃないから、責任なんて知らないと、無責任な発言をする。


「王子様、城にまで冬のままだと、ばれてしまうと心配した。では、国民はどうです?皆さん、必死になって自分の生活を守っています。春にしか咲かない薬草が取れず、体が衰弱している者。他国に亡命しようか悩んでいる者。これは全て、王子のせいですよ」


 知るかと、又も逃げるような言葉に芽衣は頭が痛くなりそうだ。


「では、どうするのですか?このままだと、ばれてしまいますよ。私は、構いません」

「メイが割ったんだよ、責任とって何とかしてね」


 ニコリ笑顔で、僕は知らないからというブラストに芽衣はムッとして仕事モードになった。


「子供みたいな言い訳は何度も聞きました。その口調も、気持ち悪いから普通に話して下さい理解に苦しみます。もう一度、最初から言いたい事を簡潔に仰って下さい」


 ブラストの笑顔とは逆に物凄い仏頂面で、滅多に笑わない芽衣が更に、笑わず不気味にブラストに問いかけている。

あ・・・ブラスト王子の外見特徴書いてない・・・。これは、追々書いていきます。

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