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No Look Jamming〜私は見る事ができない〜  作者: 船木
ツキナミの生活
14/27

ダットサイトの忘却曲線

 乾いた銃声が、森の中に響いた。

銃口からは白煙が登り、射出された鉛の弾丸は、先程まで喋っていた男の胸へ、吸い込まれていった。

吸い込まれた弾丸は、男の胸に当たると同時に砕け散り、小さな破片になりながら、臓器を傷つけていった。

幸いにも、心臓には当たらなかったらしく、男は即死する事はなかった。それが本当に良かったのかはわからない。

即死していれば、苦しむ事はないだろう。しかし、助かる事はない。

現状、苦しみながらも生きている、彼は、まだ助かる可能性はあるのかも知れない。

男は、胸に手を当てながら、跪き、声にならない声をあげている。吐血混じりの咳を混みながら、胸を抑えた左手の、指の隙間から、彼の体液は、重力に惹かれる様に地面に滴り落ちた。苦しみの表情を私に向けた。睨みつける様に、許しを乞う様に、しかし、彼の表情は段々と曇っていく。まるで、夜の森に一人で迷い込んだ子供の様な、まるで雨降る夜に悪夢を見た子供の様な、路地裏で悪魔に出会ったかの様な、そんな表情に変化していった。

 私が放った弾丸は、騎士の鎧を打ち抜けない。鉛程度の強度では傷を付けるのが精一杯だ。しかし、その柔らかさが生身には、とてもよく効く。

皮膚を破り、変形して、肉を進み、削れていく。最後に骨に当たれば、砕け散る。破片は臓器まで届き、残留する。

狩りには使えない。だって、破片が残るから。

狩りには使えない。だって、毒を含ませているから。

弾丸の当たった痛み、砕けて内臓を傷つけられた痛み、即効性の毒による痛み。

これは、対人専用の、鎧を着込まない魔術師専用の魔弾だ。

当たれば、当たりさえすればいい。そうすれば、相手は苦しみの余り、魔術の使用などできなくなる。

もし仮に、魔術が使えたとしても、脅威にはならない。

彼は、もう終わりなのだ。

 私は、小さな声で、一言「ジャム」と呟いた。

視界が、砂漠の砂嵐の様に荒れた。ハリケーンの中の様に荒れた。

少しずつ、ゆっくりと、その視界が晴れていく。

苦しみ、悶え、死にゆく者の見つめている視界と繋がっていく。

歪んだ視界、霞んだ視界。

瞳が見つめるその先に、視線の先に、小さい体の、真っ黒な髪が水に濡れ、木々の間から差し込む日の光で艶めいた、大きくギョロッとした目に、血の様に赤い瞳を輝かせ、、幼い出立ちとはアンバランスな、薄気味悪く微笑んだ、まるで、悪魔の様な、私がいた。

口角は吊り上がり、今にも笑い出しそうな表情をして、左手に握られた、小さく、不恰好にカスタムされた銃を構えていた。

醜い表情、醜い姿。

私は、もう死にゆくであろうこの男の視界を奪い取った。

呻き声が聞こえる。苦しむ声が聞こえる。

助けを呼ぶ声も、許しを乞う声も、全てが自分の頭の中に入ってくる。

醜い、醜い。

その声を聞きながら、視線の先の悪魔は、遂に堪え切れずに微笑んだ。

残り少ない人生の最後に、視界を奪われ、何も見えず、何もできない事に怯えている姿が、堪らなく醜く、悪魔は微笑み続けた。

少しずつ、ゆっくりと、視界が暗くなって行く。

一色ずつ、色が抜け落ちて行く様に、段々とモノクロに褪せていく。

世界がゆっくりと、一秒を刻んでいく、一分にも一時間にも感じる程ゆっくりな、一秒を刻んでいく。

段々と、声が聞こえなくなる。

ゆっくりと、静かに、視界が閉じていった。

 私は、もう動かない、魔術師だったモノを見つめた。

視界の中心には、鉄の出っ張りが見え、その先に地面に伏せた、魔術師だったモノを真っ直ぐ捉えていた。

その事実から目を背けるように、視界は少しずつ、ゆっくりと下に落ちていった。

それと並行するかのように、ゆっくりと忘れていく。

記憶の忘却曲線をなぞる様に、朝露が葉から滴る様に、構えた銃の銃身が下がる様に、私は少しずつ忘れていく。

そして、この事を完全に忘れ、自分の醜い姿を忘れ、私は日常を過ごす。

何の感情もなく、私は、銃に取り付けられたダットサイトから視界を外した。

 広い森の中に静寂が響く。

風が木々を揺らす音が聞こえる、動植物の息遣いが聞こえる、そんな静寂の中に、不釣り合いな笑い声が混ざる。

少しずつ、少しずつ、その声は大きくなっていった。

私の声だ。

醜い醜態を晒し、醜く笑う。

それが、本来の私なのだ。

どれだけ取り繕うと、どれだけ優しい人達に囲まれようと、本質は変わらない。

私は醜い殺人者なのだ。

最初に殺したのは誰だろう?



もう覚えていない。



私は売り飛ばされた。

それは、人を殺めてしまったから。

それも、多くの人を殺めてしまったから。

本来なら殺されていてもおかしくない事だが、何故か売りに出された。

いっその事、殺してくれれば良かったのに、と思いつつも、現状の生活を、私はとても気に入っている。

だから、売り飛ばされて良かったのかもしれないと、今は思っている。

売りに出される人間には、大体何かしらの理由がある。

私の場合、人を殺めてしまっても、それが悪い事だと、倫理的に良くない事だと、理解できなかったから。

それに、他人の視界を強制的に奪い取って、自分の視界として見ることができる能力が合わされば、普通の人間からしたら、恐怖の対象でしかない。

私は、非力な盲目の少女ではないのだ。

他人の視界を奪って、他人の命を奪って、私は今日も呼吸をする。

私は、世界を救うヒーローにはなれないし、誰かに救われるヒロインにもなれない。

私は、ただの化け物なのだ。

子供の皮を被った、非力な少女を装った、化け物なのだ。

化け物は狂った様に笑いながら、魔術師だったモノを見る。

血の様に赤い瞳から、血の様な涙を流しながら、静寂に包まれる森の中、化け物は笑い続けた。

書き始めたばかりの拙い文章ですがこれからも頑張っていきたいと思っております。

コメントや評価、ブックマークなどを頂けると大変励みになりますので、よろしくお願い致します。

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