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対人恐怖症な俺の異世界リハビリ生活  作者: 春眠桜
それぞれの旅立ち
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急転前の幕間劇 ソフィアの本音

ソフィア達がやってきたその日の夜。ヘルダーの屋敷内で話し合いが行われている。


重症の良所を来客用の寝室へ移した後、情報を共有しようとのソフィアの提案に皆が同意した為だ。


初め尋常ならざる状態の良所を見て、ソフィアが発狂し収集のつかない事になるものだと思っていたヘルダーだったが、彼女の冷静な振舞いに困惑している。


故に彼は話し合いの場で口を挟まず沈黙していた。そんな中ライラの報告を受けたソフィアが冷静に喋り始める。


「話はわかった。シェルちゃんにライラ、大変だったな」


『あぅ……そふぃあおねーちゃんごめんなさいの……』


「申し訳ありません……私がナイト様を止められていたら……」


謝罪し、落ち込む二人。だがソフィアは全くと言って良い程気にしてはいない様だった。


「二人共謝らなくても良い。重症だがナイトはまだ生きているし、それに回復させる方法もあるのであろう? ならば話は早い。今から私が必要な素材を全て集めてくる故、皆は休んでいてくれ」


「ヴォン ヴォーン? ヴォン! (なによそふぃあ わたしをおいてくつもりなの? ついてくからね!)」


「わかったわフェルちゃん。一緒に行こう」


「ヴォン! (とうぜんよ! )」


 話は決まった。さぁそこをどけと言わんばかりにソフィアとフェルは素材集めの旅に出ようとしていた。


そんな二人へシェルが止めに掛かる。


『そふぃあおねーちゃんだめなの! とりさんつよいの……それにとかげさんだって……』


それでもソフィアは止める気が無い。シェルの言葉に対して短く返答した。


「構わない。大事なのは今すぐナイトを取り戻す事だけだ」


そんなソフィアに対し、沈黙を続けていたヘルダーが漸く喋り始める。


「ソフィア殿下。何故一人で解決しようとする? 」


この場にはヘルダーやライラも居る。ましてや女神の御使い事シェルもいるのだ。その彼らに協力を要請すれば解決に掛かる時間も短縮できる為至極当然の疑問だった。


そんなヘルダーの疑問に対し冷静に振舞っていたソフィアの感情が、静かに、だが確実に現れていく。


怒りと言う名の感情が。


「何故だと……? 冷静に勤めていればベラベラと……」


扉に手をかけながら怒気をまき散らし始めるソフィア。一瞬にして部屋の空気が変わった事を誰もが感じた。


「ナイトの事だ。また全てを背負って行動したのであろう。だから私は皆を責める気はなかったのだ……だが私が間違っていたらしい……」


扉にかけた手離しソフィアは振り返ると、室内に居る全ての者へ感情を爆発させる。


「こんな大事にどうして私はナイトの側にいられなかったのだ! 何故貴様らは五体満足でここにいる!? 貴様らはナイトの側に居たのであろう……ふざけるな!  あの人の……あの人の心の闇を知っているか? あの人は……ナイトは常に苦しんでいたんだ。生まれた時から孤独だった彼は……存在を認められたくてずっと一人で苦しんでいた。どれだけ力を手にしても彼は孤独に震えていたんだ! シェルちゃんはわかっていたのであろう!? では何故だ、何故止めなかったのだ! ライラ、貴様は心のどこかで彼に甘えていたのであろう!? 何故もっと彼を見なかったのだ。何故彼の心を見なかったのだ! ヘルダー元帥も同様だ。何故彼を恐れた。どうしてもっと心を開かない! なんで……どうして……」


堰を切る様に思いの丈が溢れ出る。ソフィアの言葉に皆押し黙った。


「自分勝手な事を言ってるのは分かっている……分かっていて尚言わずにはいられないのだ……」


ソフィアは顔を下げ、体を震わす。誰も良所の心が解っていない、それが一人で解決しようとした理由であった。


その時である。扉の外から聞きなれた老人の声がしたのは。



──ならば機会を与えてはくれぬかの?



扉が静かに開かれ、声の主が姿を現す。皆一斉にその人物へと視線を向けた。


「陛下! 」


ヘルダー元帥がすぐさま反応し、ライラ共々跪く。


「皇帝陛下……」


突然の行幸にソフィアも驚き言葉を詰まらせた。


「話は大体わかった。ソフィア殿下よ、我儘かと思うが余やこの者らに機会を与えてはくれぬか? 」


「機会……とは? 」


「余やこの者らがキドナイト殿の良き友人であり続ける為の機会じゃ」


「……」


ソフィアは押し黙った。感情が爆発した直後だった為、ディオールドの言葉を理解出来ずにいたからだ。


それでも皇帝ディオールドは穏やかな声で話しかける。


「ソフィア殿下の言う通り、皆ナイト殿の力に恐れ、頼り、甘えていたのやもしれぬ。それ故肝心なナイト殿の心を見ていなかったのだ。なればこそ機会を与えて欲しい……本当の友人としてある為に」


ディオールドの言葉に漸く平静を取り戻したソフィアは彼の望みを聞いた。


「されば皇帝陛下は何を所望するのですか」


「ナイト殿を……余やこの者らに友を助ける手伝いをさせて欲しいのじゃ……」


皇帝ディオールドは着物の袖を握りしめ顔を下げた。


「もう二度と……友を失いたくはないのじゃ……」


彼の過去に何があったかはこの場に知る者はいない。だがその言葉だけでも伝わる物があり、真剣な思いはソフィアにも届いた。


「……わかりました。陛下のお話を受けましょう」


「ありがたい……」


穏やかな表情で了承したソフィアに短く謝辞を述べたディオールド。


こうして皆で協力し、良所を助けることが決まった。


──


───


────


話が収まった後、ソフィアを中心に良所を治す段取りが決められた。


手元にある情報を精査しつつ、現在任地に赴いているジークフリードの帰還を待って行動を開始する事に。


「余はこれから準備に取り掛かるでな。ヘルダー元帥よ、其方もついてまいれ」


「ははっ。ライラ聞いての通りだ。我は陛下のお供をする故屋敷の事は任せたぞ」


「賜りました」


皇帝ディオールドとヘルダーが屋敷を出た後、ソフィア達は遅い夕食を取り湯につかると寝室へと向かった。


怒気を収めたソフィアに対し、シェルとライラは安堵する。


だが彼女等はまだ気づいていなかった。この後待っているソフィアのお仕置きがある事を。



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