不安と不満
薄気味悪い骸骨が能天気に喋りやがる。なんだこいつは。
それとこいつら邪神戦にはフェルには荷が重すぎる。フェル、ちょっと領外で待機してろ。
「ヴォン! 」
とにかくこの死鎌は効果ありってわかった。切断した部分はアコにも吸えたみたいだし。
ならやることは単純だ。ひたすら切断しまくって端からアコに吸わせ続ければいいってことか。
──はい。たしかに効果は出てます。しかし気を付けてください。なにを仕掛けてくるか全くわかりませんから。
了解だシェル。切って切って切りまくるだけだ。
『うーん? 神殺し? それよりもその鎌どこで手に入れたの? 』
良所より自分の身を切断した武器に興味をもつ暗黒神バルード。
『どうせ細切れになるんだ気にするな』
『その武器少し厄介だよねぇ。切られた端から存在ごと消えてくし。んじゃ近づかないで殺してあげる! 』
バルードは距離を取ると両手を広げ骨の口を大きく開けた。
『不浄の息吹』
キィイイイイイと言う甲高い音が一帯に広がる。
なんだこの音はってグゥアアアアアアアア。ナンダ……コレハ……
俺の耳から血が流れ視界が歪んでいく。まずい。このままだと意識が飛んで……
──主様! 少し交代させてもらいます!
俺とシェルが入れ替わる。おかげで意識を飛ばさずに済んだ。助かったよシェル。
──対の真珠貝アコヤよ我らが王を守るのです!
シェルがアコヤに指示をだすがその間にもどんどん高音が広がっていく。このままだと色々と不味い。
そう考えているとアコとコヤがそれぞれ顔を浮かび上がらせ喋り始める。
『ウタイマショウ』 『イノリマショウ』
『コトワリヲウケイレ』 『コトワリヲハナツ』
『『貝の囁き(シャーティアフルスターン)』』
辺り一面に広がっていた甲高い音が徐々に消えていく。消えると言うよりアコに吸われているのか?
音が完全に消えると今度はコヤがバルードに向け口を大きく開き発狂しはじめた。
とてつもない大音量の咆哮とでもいうのか、指向性のある狂音はバルードに直撃しつづける。
『アガァアアアアアアアアアアアアア。やめろ……ヤメロォオオオオオオオオオオオ』
バルードにとっても予想外な一撃だったらしく狼狽し逃れようと必死に蠢いていた。
だがこんなチャンスを俺は逃さない。咄嗟にシェルと入れ替わり殺意を込めて左手で死鎌を握りしめる。
『御馳走を逃す手は無いって言っただろうが』
そう言い放った俺は一心不乱にバルードを切り刻む。楽しい。なんだこの高揚感は。
『ウソダ……数千年モ……閉ジ込メラレタノニ……ソンナ……アァアアアアアアアアアアアアア』
塵の様になるまで細切れにして最後にアコで全て吸わせる。
『お前を起こしたヤツを恨め骨野郎』
こうして暗黒神バルードは消え去った。
◇
「ひぃいいいば、化け物だぁあああ」
「落ち着け! 領民を守り退避をさせろ! 」
領門を守っていた警備隊長は混乱し逃走するジルド伯爵達を無視し、ひたすら領民達の避難を誘導していた。
「あれは我々人間がどうにか出来る物ではない。良いか! 領民を一刻も早くこの地から避難させるんだ! 」
──はいっ
十数名の部下に激を飛ばし混乱を収めつつ避難行動を取る警備隊長。
「長い月日に積もり積もった恨みの代償か……まさに因果応報とはこの事だな。ウィリアム家は滅亡する」
そう呟きながら一人でも多く領民を救出していくのであった。
◇
なぁシェル。さっきのバルードってヤツは消滅したって事で間違いないんだよね?
──はい。間違いなく消滅しました。しかし……
ん? 残っているもう一匹の邪神の事か? このまま討伐するから安心しろって。
──ではなくてですね。主様の深層に陰りがさしてきてるんです
陰り? なんだそりゃ。
──いますぐどうにかなるという訳ではないのですが……
原因てわかるか? ってか死鎌しかないか。そんなにこの武器は危険なのか?
──はい。何度も言いますように神々の武器は現世の理に反した物故崩壊の危険をはらんでいます
それは分かっている。だけどそれって人間が扱うとって前提だよね? こんな事言うのも何だけど俺ってもう人間止めてる気がするんだよね。
──
おいシェル。なぜ黙る? そこは嘘でも『ないとはにんげん! あい! 』ってな感じでおどけるのが正解だろ?
──主様……今まで伝えられていなかった事をお聞きしてもらえますか?
おおぅ珍しいな。シェルが伝えたい事ってなんだ? 女神様からの伝言か?
──いえ違います。今の状況があまりにも異常なので……邪神について言っておかなければいけないと判断しました
異常か。異世界に来てから異常じゃないって方が少なかった気がするけど。
──主様驚かないでお聞きください。本来邪神というのは様々な因果によってその姿を現します
ふむふむ。
──降臨の間隔は数千年に一度。それは幾度の輪廻を経て分かっていた事です
数千年に一度? そういやさっきバルードってヤツが数千年閉じ込められたとかなんとかいってたな。
それと幾度の輪廻? 輪廻って転生ってことですか? う、いかん。俺の知識の許容量を超えて来た。
──降臨する年を見定めて女神フィリーア様は我ら御使いを寄こし邪神に対応してきました
それは何となくわかる。害虫駆除業者の定期点検みたいなものだよね。
──害虫駆除……フィリーア様は決して予測をはずした事は無かったのです。ですが……
害虫駆除あつかいされてちょっと動揺したなシェル。えーとつまりあれだろ? アーク・バルード、そして残りの一匹と立て続けに邪神が現れるってのは女神様ですら予想できなかったって事だよね?
──はい。それもそうなのですが……
え? まだ何かあるの?
──複数体の邪神が降臨する事自体そうなのですがもっと異常な事が起きているのです
なんだよ? 随分勿体ぶるなぁ。シェルはっきり言いなさい! 保護者からの厳命です。
──その邪神達をたった一人で葬り去る主様……ナイト様の存在が異常なのです
な、なんだってー!? おいシェル。きどちゃんちょっとショックを受けているのだが。
これってアレか? 女神様からも危険視されはじめてるって事なのか?
──そうではありません。今の所は……
図星かよ……
──とにかく今は何も問題はありません。邪神を討伐しに行きましょう
はぁ。まぁそりゃそーだな。邪神をぶっ倒してから色々考えよう。
シェルとの問答を終えた俺は溜息混じりに城をぶっ壊し続ける邪神の元へ走り出した。
◇
『でっけぇなぁコイツ』
破壊された城の跡地で巨大な体を見せつける破壊神ダグザ・トゥアハ。その目には次に破壊する対象しか映っていなかった。
『オマエハ……ナニモノダ』
ダグザは自身の手、それも小指程度の良所に対し殺意を向ける。
そんなダグザに俺は悪態をつく。
『何者でもねーよ。おまえら邪神に辟易してる被害者の会の会長だよ』
『ツマリワレノテキ……トイウコトダナ? 』
改めて己の敵と認識したダグザは大槌の様な右腕を振りかぶる。
『そういう事だ。さっさと消えろデカブツ神もどき』
俺はそう言い捨てると迫りくる右腕をひらりとかわし、死鎌を振りかぶりながらダグザの体を刻み続ける。
だがダグザにはダメージを与えていない様だった。
『フメツノカラダ……ソレヲモツワレニハ……ナニモキカヌ』
おいチートかよ。だがそれは嘘だ。不滅の体っていってもカラクリがあるのは必定。情報源は引き籠っていた時に読み漁った小説だがな!
とにかく観察しながら切り刻む。
俺は攻撃を続行させながらダグザの体を観察しつづけた。魔力の流れ・邪神の気配等注意しながら。
──
───
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十数分の攻防で俺はある事に気付く。
再生と攻撃をする時ヤツの心臓が異常な魔力を発していたんだ。




