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新しい家族フェルと始動した本格的領地開発

──ヴオン!


日が昇りフェルが挨拶代わりに吠える。


おぉ、そうだった。フェルが家族になったんだった。


「フェルおはよう」


「グォン! 」


目が覚めた俺にシッポを振って駆け寄ってくる。カワイイヤツめ。


おし、朝食を用意するか。にしても力を継承してから大きさも気配も生まれたての時とは大分変ったよな。


一応昨日の食事とは別に肉の盛り合わせでも出すか。ん、まてよ? 調理済みの肉も喰えるのか? 気になるなぁ。よし、三種類用意するか。


そう思った俺は昨日出した和牛のミンチと野菜のペーストを混ぜ合わせた物と、牛生肉の盛り合わせ、そして調理済みの和牛ステーキ盛り合わせをだした。飲み物は綺麗な水ね。


自分の分はハンバーガーとオレンジジュースを出した。


「フェル、好きな物をたべていいぞ。それではいただきます! 」


「グォン! 」



フェルは最初ミンチペーストに口を付けたのだが、途中から生肉の盛り合わせを食べ始めた。しばらくして調理済みのステーキに噛みつき、ビクッっと体を震わせると夢中で食べ始めた。


フェルよ、お前もか。


結局調理済みのステーキしか食べなくなった。ガツガツ食べとる。うんうん、問題はなさそうだ。


俺はハンバーガーをかじりながら、今日の予定を考える。



とりあえず何からはじめようかな、アルフに報告はするとして次は海風や塩害の対策をするか。それが終わったら本格的に開墾をし始めよう。


あれ? フェルお前、喰いすぎじゃねーか!?


「クゥーン、ケプッ」


お腹をパンパンに張らせながら、ひっくり返るフェルがそこにいた。よっぽど調理済みステーキがおいしかったんだな。これからは食べ過ぎに注意しよう。


俺はしばらくフェルのお腹をさすってやりながら、消化するのをのんびりと待つのであった。




                  ◇




フェルの膨れた腹が落ち着いたのを見計らって、俺達はドーファの中心地へ向かった。


「フェル! 森が抜ける所まで競争だ! 」


「グォン! グォン! 」


フェルの昨日の動きを見た俺は、手抜き無しで森を駆ける。


すでに人や馬では追いつけない速度になり、それでもフェルが当然の様に付いてくる。


俺は楽しかった。力を加減せず、心のままに振舞っている今の時が。


自分が異世界に来て力を手にしてから常に加減をしてきた。


今の環境はそれがない。随分と楽な気持ちだった。


異世界に来て当初、森を移動するにもアコの力を利用しなければ速度をだして移動できなかった。だが、今ではその必要も無くなっている。


森の木々を楽々かわしながら、速度を速められるのだ。


「グォン! グォン! 」


そしてその速度についてこれる家族が出来た。最高に楽しいぞこれ!


ご機嫌になりつつ、森をかけ続ける。先には森の切れ目が光を刺して目に入ってきた。



                  ◇



森を抜けた後、フェルを伴って領主の館前にある旅館へ向かった。


旅館内からガヤガヤと楽し気な声がしている。


「アルフ、戻ったぞー」


「グォン! 」


旅館に入るなり、俺とフェルは大きい声でアルフレードを呼ぶ。


その声にドーファの領民達は一斉に気付き、笑顔で迎えてくれた。



──おかえりナイト!



領民達はすっかり英気を養い、顔色も当初とは別人になっていた。



おぉ、随分と親し気に呼ばれたぞ。でも悪い気はしない。


そこにアルフが駆け足で向かってきた。


「おい、ナイト。心配させるんじゃない! 」


アルフよ、君は私の保護者かね?


「あぁ、悪い悪い。でもまぁ魔物の件は全部終わったからいいじゃないか」


「は? 」


何を言ってるのか分からないアルフは、困惑した顔をそのままに確認してくる。


「何いってんだ? 魔物の件は終わった? 」


「うん、終わった。信じてない? だったら領主の館に帰ってみなよ、証拠の一部を置いてきたから」


アルフはそういわれると、足早に館へ向かって行った。


俺達はそれを遠巻きに眺めていた。そう、アルフのリアクションを見る為に。



──数分後



「ぎゃぁああああああああああああああああ」



おし! ビックリ作戦成功だ! アルフ、ナイスリアクション!


その後、顔を真っ赤に激怒したアルフが、オーク数珠を振り回して追いかけて来たのは言うまでもない。




                  ◇




魔物討伐の報告をアルフから説明してもらってから皆で昼食を取りつつ、今後の予定を決めた。


領民の半数を開墾に従事してもらい、もう半数を領民達の家等建築にまわってもらった。


その際、森の木々や腐葉土を利用してもらう事も忘れてはいない。


肝心な俺の作業は、今朝考えた通り塩害対策に従事することになった。


しっかし皆良い顔をする様になったよ本当に。動きもきびきびしてるし、なにより遣り甲斐を持って作業してる感じが素晴らしい。


衣食足りてなんとやらだね。


「んじゃ、俺達の持ち場に行こうかフェル! 」


「グォン! 」


そんな俺達に待ったがかかる。そう、アルフだ。


「ちょっとまてナイト! 俺は何をすればいいんだ?皆と一緒に作業についていいのか? 」


おいおい、アルフは領主だろ。どんだけ現場主義なんだよ。


「おいアルフ。一応ドーファの領主をやってるのだろ? 」


「あぁ、そうだ」


「なら解ってるよな? 予想される畑の規模、それに伴う収穫量の把握。それからここドーファで名産品として何を売り出していくのか、考える事は山程あるぞ。それが終わったら──」


「わわっかった。一辺に言わないでくれ! とりあえず畑の規模と収穫量の計算をしてみる。それ以外はお前らが帰ってきてからだ! 」


「へーい。がんばってねー。そうそう、アルフんとこのメイドさん居たでしょ? 」


「おう、レティシアがどうした? 」


「そうそうレティシアさん。後でレティシアさんにアルフの仕事ぶりを報告してもらうから、代理権限で」


これでさぼれまい。ニヤっと笑う俺に対し、アルフはまた吠える。


「お前、こんな時に代理権限使うなんてずるいぞぉおおおお──」


俺達は遥か後方で響くアルフの断末魔を聞きながら、目的地の海まで走っていった。




                   ◇




「海だぁああああああああ! 」


「グォーン! 」


久しぶりの海にテンションあがりまくりな俺事きどないとです。どうもです。


そのテンションと同じく初めてみる海に興奮気味のフェル。さっそく砂浜を駆け巡っていた。


しっかし綺麗な海だよここの海は。透き通った海水は綺麗な青空を反射してエメラルドな感じだ。


うん、まてよ? ここをリゾートにすればメッチャ儲かるんじゃね?


水着って文化も無いし、ここドーファから売り出せば結構な利益につながるよね?


いやいやまてまて、今は食料自給率の上昇が先決だ。


そう思いなおした俺は浜辺から丘に戻ると、海風が途切れる場所まで移動し立派な樫の木を植樹していった。


そう、防風林だ。


さぁ植えるぞ、俺は今植林王となった! わっはっは!


フェルは俺の様子を伺いつつ、邪魔にならないように砂浜をかけ続けている。良い子だよお前。


──


───


────


太陽が水平線に消えかかる夕方、ようやく俺は植樹を終えた。隙を見せない四重の防風林が完成した。


勿論植えた土地の改善もばっちりだ。100年たっても土地が痩せる事はないだろう。


とりあえず塩害対策は完了っと!


「フェルー、帰るぞー! 」


「グォン! グォン! 」


明日は開墾する土地の改良と、水源整備だな。


今日の晩御飯は何にしようかな?今日頑張ったもんな、よし、焼肉パーティーを開こう!


予定を巡らし、俺達は領主の館へ向かった。



                   ◇



「えー……それでは、森の魔物の全駆除及び、塩害対策の木の植樹完了。そしてあらたに仲間になったフェル君の歓迎を含めまして──」


「乾杯」


──乾杯!



食堂では俺が用意したモリモリ焼肉セットで、ジュウジュウと肉が焼ける臭いが広がっていた。


飲み物はキンキンエールか果物ジュースを用意。


ご飯とパンを選べる気遣いも忘れずにしてある。


二百人規模の焼肉ってすげー光景だな。煙対策として天井全体を換気扇仕様にしといてよかったわ。


換気扇なかったら煙で大変な事になってたよ、本当。


とりあえずこの旅館は領民の家や商店が建ち終わるまで開放するつもりだ。


俺達のテーブルには、領主のアルフとレティシアが居る。


二人共楽しそうに焼肉を焼き、タレに付けて頬張っている。


「んんーおいひぃ! 」


レティシアさんが悲鳴に近い声をあげながら若さ故の食欲を見せつけていく。


「ナイト、本当にお前が来てくれてよかった。本当によかった……」


エールをグビグビ飲みながら泣くんじゃないアルフ。泣いてもレティシアから報告は受けるからな?


「グォン! 」


おー、フェルお前焼肉のタレもいけるのか。ほぼ人と同じ扱いでいいなこれ。



こうして楽しい焼肉パーティーは深夜遅くまで続くのであった。

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