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繋がる事象 巡る疑問 陰る心

宿屋でグリードが目を覚ました後、俺達四人は宿賃を払いすぐに移動した。


目的地は城下町にあるグリードの屋敷だ。


屋敷と言っても貴族達とは違い、簡素な造りだという。


「ここだぜナイトのにーちゃん! 」


そういうグリードの視線に合わせて建物に目を向ける。重厚な二階建ての家だ。


おぉ、一階がガレージみたいな造りで武器防具が沢山ある。手入れも行き届いているみたいだ。


「お邪魔します」


そう言うと、グリードの案内で奥にある階段を昇り二階へ。


二階の様子はいたって簡素だ。板間にちょっとしたテーブルと数個の椅子。そして奥にベッドがあるのみだった。


城下町に沢山の飯屋があるし、寝る以外はほとんど外で済ますとの事。納得だ。


テーブルにはすでにクレイグ・レオナルドの両名が付いていて、俺達が来るのを待ってたみたいだ。


「遅いぞお前たち! 」


「うむ、我らはとうに着いて待っていた」


そんな二人にグリードが豪快な笑顔で謝罪する。


「がっはっは、遅れて悪い。速剣ミルザのやぼ用につきあわされてよぉ」


「ちょっとグリード、用事は昼過ぎには終わってたわよ!大体遅れたのはアンタ達が根競べしてたからじゃない! 」


「だっはっは、ちげぇねぇな」


そんなやり取りをしている二人にレオナルド・クレイグがそれぞれ声をかける。


「おぉ、冒険者ミルザじゃないか。ギルドは特に問題はないか? 」


「それより、早速晩餐を始めよう。私はこの時を待ちわびていたのだ」


「近衛隊長さんこんばんわ。今の所問題は無いわよ。あら、聖剣もいたのね」


なんだ、皆ミルザさんと顔見知りなのか。まぁCランク冒険者で異名持ち、さらにはあの実力だもんな。知らないほうがおかしいか。


挨拶を他所にグリードは席に付くと、俺に懇願しながらテーブルにつっぷした。


「ナイトのにーちゃんよぉ……さすがに全力でぶつかったからよぉ……喉もカラカラで腹もやべーよぉ」


わかったわかった、今すぐ用意してやっから。


にしても6人が囲うテーブルの大きさじゃねーな。二、三人が妥当だ。テーブルとイスも作り出すか。


「なぁグリード、このテーブルと椅子になにか思い入れあるか? 」


「あぁ? 特にねーよ。それより腹減った……」


「わかった。つかこのテーブルじゃ六人は無理だろ? だからこれ吸収して大き目のテーブルと椅子出すけどかまわないな? 」


「なんでもいいからよぉ……早くしてくれ……」


グリードは返事をしながら今度は天井に顔を向けた。


すかさず俺は元のテーブルを吸収すると、頑丈で大き目なテーブルと椅子を創り出した。


その光景にクレイグとグリード以外の二人は驚愕しているが、かわまず食事も用意しはじめる。


大き目のステーキが焼ける匂いが部屋一杯に広がる。今日のメニューは宣言通りステーキ&ハンバーグを用意した。それも高給和牛の霜降りステーキ500gとハンバーグ1kgの肉々セットだ。フワフワのパンと山盛りポテトフライも忘れずに。


そしてキンキンに冷えた復元仕様のジョッキを配る。シェルにはリンゴジュースな。


創り出した新しい椅子に座りなおしてもらい、準備は整った。


さぁ、またせたなグリード、そしてハラペコ剣士。


お初の二人には気に入ってもらえるか少々不安だが、まぁ大丈夫だろう。


「それじゃいただきますか」


「「「おぉ! 」」」


──いただきます



                  ◇



晩餐がはじまった瞬間、俺はグリードに目を向けた。どうだグリード、カラカラに乾いた喉を潤すエールの味は?それもキンキンに冷えた極上のエールだぞ。


──グビッグビッグビッ


グリードは飲むペースを止めない。ひたすらジョッキを傾ける。当然中身は復元するのでいくらでも飲めるのだ。


他の二人も同じくジョッキを傾ける。


グリードはある程度飲み続けると、ジョッキを置き下を向き始めた。


泣いていやがる……。だが、気持ちはわかるぞ。うまいよなぁ、疲れた後のエールは。


「うぅ……、ナイトのにーちゃんがいってた極上のエールってのは…‥うぅ……うめぇええええええ」


そんな言葉に他の三人もジョッキを置き、感想を述べた。


「本当だ……なんだこのエールは。信じられん、いくらでも飲めるぞ! 」


「これですよ隊長。これぞ、神々の晩餐に出てくる神のエール。でもおどろくのはまだ早いですよ? 料理も素晴らしいのです」


「今日はもう驚きすぎて言葉がでないわ……とにかくこの晩餐に入れてもらって幸運だったわ……」


それからシェルを含めて四人はバクバクと料理を平らげはじめた。


すでに感想を言う状態ではないようだ。感想を言う時間がもったいない、そんな感じで料理を食べ続けている。


「シェル、今日出したステーキはどうだ? 」


『おいしい! あい! 』


うむ、問題なさそうだ。


「皆はどうだ? 」


「「「「美味すぎる! 」」」」


「あぁ、良かった」


ぴったり同じ言葉をいいやがった。気分良すぎるだろお前ら。


ん?お代わりの心配はしなくて大丈夫かって? 当然料理の皿も復元仕様ですよ。さぁ、倒れるまで食べるがよい。


俺はポテトフライを摘まみながらエールを傾け、この賑やかな晩餐を楽しむのであった。



                  ◇



晩餐開始から二時間、漸く全員が満たされて一息いれはじめた。満足気な表情が全てを物語っている。


「ふー食った食った。ナイトのーちゃんよぉ、ごちそうさまだぜぇ」


幸せ一杯の笑顔で礼を言うグリード。


うむ。今日は頑張ったからな、満足してくれてよかったよ。


それに続いてレオナルドも礼を述べた。


「グリードとクレイグが言っていた通りの晩餐だった。まさに神々の晩餐だ! 」


ミルザも満足したみたいだ。言葉少なく感謝を口にしていた。


「今日貴方に出会えて本当によかった」


クレイグは相変わらず晩餐の呪文を唱えてる。満足してるみたいだしそっとしておこう。


あ、そうだ。今日の出来事で気になる事があったんだよな。



冒険者ギルドにて、大半が護衛任務と開拓地の治安維持依頼


ここ10年そんな事は無かったと言うグリードの言葉。


気になっていた城下町の食事事情の変化


全てがここ数日内に起こったと言う共通点。



まさか関連性があるのか?


俺は募らせた疑問を他の四人に聞いてみた。


回答は以下の通りである。



レオナルド曰く、ここ最近商隊が襲われる事案が多発、警備兵では足らず冒険者ギルドに要請をしたとの事。


ミルザ曰く、現在ジワジワと穀物の値段が高騰している。それが商隊襲撃の要因になっているのではないかとの返事。


グリード・クレイグ曰く、ソフィアが忙しい理由の一つに開拓地の整備を急いでる事、そして自分らは次の晩餐が楽しみだ、いつやるのか?と聞いてきた。



こいつら二人は食事しか重要じゃないのかよ!


穀物の不足か……たしかに飯処や居酒屋などのメニューが変わってきた事にも繋がるな。王国全体が不作なのか?それにしても今から開拓地の整備を急いだって間に合うのか?


どうにも腑に落ちない。ソフィアは何だかんだ聡明だし、その程度の事は分かるはずだよな。


ここ最近終日動いてるみたいだし、やはり問題が発生したとみるべきだろう。


しかしだ。仮に問題が発生したとして、夫になる俺に隠してまで解決しようとするのは何故だ?


心配かけたくないからか?


王国の事は王族のソフィアや家族が解決しなければならないと思ってるのか?


夫婦になって家族になるんじゃなかったのか? ……所詮他人だからか?



様々な疑問が頭を駆け巡り、俺の心にシクシクと何かが疼く。



とにかく今日は早めに城へ戻ろう。それからソフィアに話を聞く、全てはそこからだ。


早々にグリード達へ挨拶を済ませると、俺はシェルを連れて帰路に就く。


夜空の月は俺の心中を現すように雲がかかり、城下町を弱弱しく照らしていた。

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