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対人恐怖症な俺の異世界リハビリ生活  作者: 春眠桜
ヴィクトール王国編
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腹ペコ鬼人の本気

「んだこの依頼の内容はよぉ。どれもこれも商隊の護衛か開拓地の治安維持ばっかじゃねーかよぉ」


依頼内容を見てグリードがぼやく。


俺自身もっと異世界的な依頼内容を期待してたため、意外としか思わなかった。


「グリード、冒険者の依頼ってのは魔物退治とか秘宝探しとか無いの? 」


「あぁ、あるにはあるんだが今の状態は変だぜ。ここまでかたよった依頼なんぞここ十年みたことねーや」


ふむ、グリードが珍しがってるってのはよっぽどの事態なのか。


そんな時、一人の冒険者が声を掛けてきた。


「まぁグリードが驚くのもしょうがない。ここ2,3日前から依頼はこの有様なんだよ」


健康的に日焼けした女性冒険者が、親し気にグリードへ話しかける。


歳は二十四、五程の色気のある女性だ。顔も整っていて、胸もデカイ。


「おー、ミルザじゃねーか、久しぶりだな。んでよ、この有様ってどーゆーこった? 」


「あいかわらずせっかちだね。それより隣のお兄さんを紹介しなよ」


「おぉそーだな。こっちはナイトのにーちゃん、んで肩にのってんのはシェルの嬢ちゃんだ」


「ないとです」


『シェルだよ! あい! 』


俺達が挨拶すると、ミルザと呼ばれた冒険者が自己紹介をしてきた。


「アタシはミルザ。みての通り冒険者をやっている。階級はCランクだね、二人ともヨロシク」


Cランクとな。つまり階級はABCDって感じか。んで飛びぬけたやつがSランクって事ね。


「挨拶は済んだろ? さっさと教えてくれよミルザ」


間髪入れずグリードが説明を求めた。


「事情は色々とあるんだけど……あ、そうだ。グリード、あんたたち今暇? 」


「あぁ? 暇っちゃ暇だけどよぉ、それがどうした? 」


「見ての通り護衛任務が増えててね、低ランク冒険者は皆出払ってんの。そのしわ寄せであたしらCランク以上の冒険者は魔物討伐に回されてんのさ」


「おう、それで? 」


「魔物退治を手伝って欲しいかなぁって。しわよせ結構キツいのよ。きっちり情報提供するからさぁ、お願い! 」


なるほど、護衛任務急増のしわ寄せで困ってるのか。それにしても討伐内容が気になる。


「あぁ? めんどくせーよ。お前の仕事だろ? 自分の尻は自分でふきやがれ」


あからさまに嫌がるグリードを他所に、興味をもった俺が口を挟んだ。


「まぁまぁ、グリード、話だけでも聞こうじゃないか?どんな魔物を討伐するのか興味あるし」


「かぁー、ナイトのにーちゃんほんと変わってるよなぁ」


そんなやり取りを聞いて喜びはしゃぐミルザ。


「本当!? なら早速いきましょう! 三人で掛かればスグよ、スグ」


このミルザって人、ものすごいマイペースだな。話を聞くって言ってるのに、これから討伐に行くって変換されてるし。まぁ暇だしいいか。


そんなわけでミルザに引きずられる形で討伐に向かう事となった。




                   ◇




城下町から城門を抜け、街道を南下する俺達。


さすがに何が討伐対象なのか聞かないわけにはいかないので、聞いてみるか。


「あのー、ミルザさん。討伐対象の魔物って何ですか? 」


「んーと、この先の町はずれにある森にゴブリンが巣をつくったらしくてね、それの撃滅。んで、そのまま南下してってエルフの森の境にある山脈まで出向いて、ワーウルフの群れとリザードドラゴン数体を討伐する予定かな? 」


は?


めっちゃくちゃ多いし、移動距離も半端ない。とても今日中じゃ終わらないでしょそれ?


話を聞いてさすがに怒ったグリードは、怒鳴り声を上げてミルザに迫る。


「おい、いい加減にしろ! いくら暇っつったって限度があるだろが。お前の予定を普通にこなしたら一週間はかかるじゃねーか! 」


「えぇー、いいじゃん別にぃ。どうせ酒ばっかり飲んでるだけでしょ? たまには付き合いなさいよぉ」


まいったな。話だけでも聞こうって切っ掛けつくったのは俺だし、グリードには迷惑かけらんないからなぁ。


しゃーない、さっさと片付けるか。


「あー、わかりました。グリードと俺達は夜に予定があるんで、それまでに片付けちゃいましょう」


そんな言葉に何言ってんの? 的な顔をしてミルザが喋る。


「あのさぁ、いくらなんでも今日中に、しかも夜までに片付くわけないでしょ」


そんなミルザを他所にグリードはやや真剣な表情を取りながら俺に確認してきた。


「ナイトのにーちゃんよぉ、ミルザいるのに力を使っていいのか? 」


「今回は俺の好奇心が招いた結果だし、さっさと片付けて乾杯しよう」


「おぉ! ナイトのにーちゃんがそういうなら俺ぁ頑張るぜぇ! 」


こんな俺達に呆れた顔をして言葉を発するミルザ。


「アンタ達本気なの? 」


「「本気です・本気だ」」


『あい! 』


と言う事で、俺はシェルと同化し騎士化する。


その姿に一瞬現を抜かしたミルザだが、ある事を思い出して声をあげた。


「あ、アンタ、ソフィア殿下の隣にいた騎士様……か? 」


ソフィアの凱旋パレードをミルザは思い出していた。


ミルザは当日人が少なく、眺めの良い秘密の場所から凱旋パレードを見ていた。


無論英雄ソフィアとそのフィアンセの姿を見に。


だがミルザは衝撃を受ける事になった。


凱旋パレードでソフィアの隣に居た凛々しく美麗な白き騎士の存在。


輝く笑顔で手を振っていた騎士の姿に一目で心を奪われてしまったのだ。


その騎士が今眼前に居る。ミルザは動揺をひたすら隠そうとして必死になった。


『ミルザさん。時間が惜しいので指示通り動いてもらっていいですか? 』


すでにミルザは反論する気はなかった。


「はい……」


『今から目の前に門が出ますんで、行きたい場所を想像して触ってもらえます? 』


「はい……」


門をくぐり、俺達はゴブリンの巣がある森へたどり着く。


『グリード、右側の固まってるヤツらはまかせるよ』


「おぉよ! 」


集団で固まっていたゴブリン達を得物の大槌で次々と屠るグリード。


『ミルザは俺達が倒したゴブリンの討伐部位の回収を急いで! 』


「は、はい! 」


そして俺はグリードが屠っている以外のゴブリン達を残らず縊り殺した。


俺200体、グリード50体の計250体か。結構いたなぁ。


それらの討伐部位をCランクらしい素早い動きで回収していくミルザ。


完了するまで三十分だった。


『よし、次ワーウルフいくぞ』


俺の指示で次の討伐場所へと移動する。なぜかミルザはぼーっとしながら行動してるけど大丈夫か?


『結構素早いな。よし、グリードとミルザはここで休憩してて。後で討伐部位の回収はやってもらうけど』


「わかったぜぇ」


「えぇ!? 一人でワーウルフの群を討伐するつもりなの!? 」


「ミルザ、ナイトのにーちゃんがあぁ言ってんだ。文句たれるな」


「わ、わかったわ」


言い合う二人を他所に、俺はワーウルフの群を探し発見すると、【光白錐貝】を発動。


散らばる群が次々と貫かれる。全部で五十体のワーウルフの死体を、触手で絡みつけて回収した俺は急いで二人の元へ。


『全部で五十体だ。急いで討伐部位の回収を頼む』


グリードとミルザは次々と討伐部位を回収していく。ミルザは異常なこの状況に口をはさんではこなかった。


『よし、最後だな。リザードドラゴンの場所にいくぞ』


そして俺達はリザードドラゴンの居る崖下に着いた。


『結構大きいんだな、リザードドラゴンて』


そんな感想を述べる俺に対し、グリードは笑って返事をした。


「なにいってんだよナイトのにーちゃんよぉ。こないだぶっ潰した海竜に比べたら雑魚もいいとこじゃねーか! 」


「海竜!? 」


海竜の名前を聞いたミルザは信じられないといった表情を見せる。だが、それ以上の事はしなかった。


これまでの行動が海竜でも倒せるのでは?と思わせるには十分だったからだ。


『よーし、グリード。討伐競争な? 俺に勝ったら特別な晩餐を用意してあげる』


俺の言葉を聞くや、グリードは鬼人の如く暴れまわった。


リザードドラゴンの頭を潰しては次の得物へと休むことなく屠っていく。


「どりゃぁああああああ! はぁはぁ……ナイトのにーちゃん、約束……守れよ」


あっと言う間に十数体のリザードドラゴンを倒したグリードは、約束を守れと言葉にすると大の字になって寝転んだ。


俺はあきれながらも、笑ってしまった。本当に食いしん坊だな!よーし、ならば今夜はスペシャルステーキ&ハンバーグディナーだ!


そう思いつつミルザに部位回収を頼むと、俺はサンドイッチセットを用意する。


日はまだ高く昇っていた。



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