変わる城下町の事情
俺達が王都に滞在して1ヶ月。その間俺はシェルや仲間達と共に城下町へ頻繁に足を運んでいた。
どうもきどないとです。
ラドルア帝国にいた頃、帝都を見物できなかった事もあり、王都見物に勤しんでいます。
すっかり有名人になった俺達だけれども、シェルと同化していない姿はバレてないので騒ぎにはなっていない。
パレードで見た人だかりはすっかりなりを潜めている。
それでも繁盛している商店街ぐらいの賑わいは残していた。
変化したのは人の往来だけじゃなかった。
飯屋や酒場で出される料理が肉重視になりはじめたんだ。
具体的にはいままでパンやイモなどの穀物類が4つ付いてきたものが、三つ減って一つに。それを補うかのように肉料理が二品追加されているといった具合だ。
この季節独特のものなのかな?程度にしか考えてないが、あからさますぎる変化に少し心に引っかかっていた。
お肉大好きなシェルはたいして気にしてる様子はないのだけれども。
それと婚約者であるソフィアがここ最近忙しいらしい。ちょっと前までは城下町の散策にお忍びモードで同行していたのだが、今日も朝から家族たちと仕事をするみたいだ。
俺の知らない所でなにか起こってるのか?
そんな事を考えながらぶらぶらと城下町を散策する俺達。
不意にグリードが話始める。
「なぁナイトのにーちゃんよぉ、今晩時間あるかぁ? 」
どうやらお誘いの様だ。
「うーん、相変わらずソフィア……ソフィは忙しいみたいだし大丈夫だとは思うけど? 」
一応城下町なのでソフィアの名前をとっさにソフィに変えた。ソフィアは有名人すぎるからね、注意しないと。
「わりぃな。んで用件なんだけどよ、クレイグは当然としてもう一人にーちゃんに合わせたいヤツがいるんだよ」
「俺の知らない人? あんまり初対面は得意じゃないんだけどなぁ」
グリードは乗り気の無い俺の返答に、相変わらずの豪快な笑顔で答える。
「ガッハッハ、変わらず心配症だなナイトのにーちゃんはよぉ。安心しろって、面識はあるはずだぜぇ」
ふむ、初対面ではないのか。じゃあ誰だ? 海賊じーちゃんか?
「面識あるってまさか海賊じーちゃんか? 」
「違う違う。キャプテンじゃねーよ。ほら、王都に着いた時近衛隊の隊長が涙ながして嬢ちゃんに挨拶してたろ? あの隊長だ」
「あぁ、えーとたしかレオナルドさんだったっけ? 」
「そうそう。レオナルドがよぉ、どーしてもナイトのにーちゃんが振舞う料理が喰いてえってうるさくってよぉ」
うん?ちょっとまてグリード。なんでレオナルドさんが俺の出す料理を知っているんだ?
「おや? どうしてレオナルドさんが俺の出す料理を知ってるんだ? グリード……説明してくれるよね? 」
俺の言葉にヤベッ、やっちまったって顔して取り繕う素振りをみせたが、不器用なグリードが出来るはずもない。あっさり白状しやがった。
レオナルドさんが料理の件をしった経緯は、三日間おあずけくらったグリード・クレイグ両名が酒場でレオナルドさんに散々愚痴ったかららしい。
「俺達に非があるってのは重々承知だ。すまねぇナイトのにーちゃん! 」
「そんな謝らなくてもいいよ。ただ、あんまり周りへ話すのは今後控えて欲しいなぁ」
「あぁ、もちろんだ! 」
俺の言葉を聞いて一気に明るくなるグリード。この性格は正直うらやましい。
そう思いながら城下町の散策を続けた。
異世界の店ってのは本当に面白い。異世界物の小説に書いてあるよな品ぞろえだ。
加護付の武器や防具、回復薬や万能薬等色々とある。
あぁ、そうだ! 冒険者ギルドってあるのかな? 別に登録する気はないけど、ちょこっとだけ覗くのも悪くない。
「なぁグリード、この街に冒険者ギルドってあるのか? 」
「もちろんあるぜぇ、うん? なんだナイトのにーちゃん登録でもすんのかよ」
「いや、登録する気はないんだけど。どんな依頼とかあるのかなぁと、ただの興味本位だよ」
「あいかわらず変だよなぁ。あんなむさっくるしい場所に興味があるってよぉ。それともあれか? 気の強い女冒険者でもみつけにいくのか? ダッハッハ、ナイトのにーちゃんは気の強い女好きだもんなぁ! 」
グリードこいつ……たしかに気の強い女性は好みだけどもだ。
「なにってんだ、俺にはソフィがいる。さすがに配偶者がいるのに他所の女性をおっかける訳にはいかないだろ? 」
「? なにいってんだにーちゃん。甲斐性のある野郎はいくらでも娶るのは世界の常識じゃねーかよ」
なに? グリード、どういうことだ。
「グリード……さん、その話もっと詳しく」
「なんで急にさんづけなんだよ、まぁしょーがねぇか。なんだかんだナイトのにーちゃんは常識に疎いとこがあるからよぉ」
冒険者ギルドに向かう道すがら、俺はこの世界の常識、殊更貞操観念について教えてもらった。
どうやらこの世界、一夫多妻が当たり前のようだ。貴族はもちろんの事、農民や商人もらしい。
とにかく財力があって養える事が出来るのであれば問題はないらしい。
なんということだ……、そんな素晴らしい常識がこの世界にあるとは……。
「ただよぉ、不貞ってのは一応あるぜぇ。嫁達が認めてない相手と旦那が関係を持ったらダメだな」
なんだと……、上げておいて落とすかグリードよ。
「ちなみに不貞と認定されたらどーなるの? 」
「ん? 財産没収で婚姻破棄だ。最初に結婚した奥さんが主導権を持たねーと色々と厄介だしな。ほら、妻同士の醜い争いってやつよ。それを回避する為の条例って感じだなぁ」
リスクでかいな。うん、慎重に行動しよう。そうしよう。
「ダッハッハ、んな神妙な顔すんなよナイトのにーちゃんよぉ! お嬢の器はでけぇからよ、安心しろって! んな事よりギルドに着いたぜぇ」
場所は城下町の中央部、しっかりとした造りの大き目な建物がギルドの様だ。
「おぉー、結構でかいね。やっぱりあれか? 中に居酒屋があったり、依頼掲示板があるのか? 」
「なんでぇ、知ってんのかよ」
「いや、なんとなくそう思っただけだよ」
なるほど、小説によくある冒険者ギルドと思ってよさそうだ。
てことはテンプレ通りギルドの建物にはいったら絡まれるのかなぁ?まぁ、グリードいるし大丈夫だろう。
そう思いながら俺達は城下町の冒険者ギルドへ足を踏み入れたのだった。
◇
「おう、ちっと邪魔するぜぇ」
ギルドに入るなり、グリードが建物内に響く挨拶をする。
その声を聞くや、ギルドにいる冒険者及び職員は一斉に俺達へ視線を向けた。
そんなものお構いなしにグリードは受付のいるカウンターへ歩を進めた。
受付には数人の女性職員がいて、内一人は獣人の女の子の様って、うぉ。異世界初の獣人遭遇だ!
頭の上で耳がピコピコ動いてやがる、くっ。なかなか破壊力があるじゃないか。猫系か? それとも狼系か? カワイイマスコットキャラ過ぎるだろ!
そんなことを考えてると、件の獣人であろう女の子が挨拶をした。
「グリードさん! ようこそ冒険者ギルドへ! って、隣のお客様、私の頭になにか付いてますか? そんなにジロジロ見ないでください! 」
「あ、いや。そーじゃないんだが耳が……」
「ガッハッハ。さっそく唾つけてんのかよナイトのにーちゃんよぉ」
「ば、違。そんなんじゃねーって! 」
「ダッハッハ。おっといけねぇ、リリ、悪いんだけどよぉ少し依頼を見てていいかぁ? 」
リリと呼ばれた獣人の受付嬢はグリードの言葉に笑顔で答える。
「はい! 大丈夫ですよ。依頼はいつも通りこちらから見て左手にある掲示板に張ってありますのでごゆっくり見て下さい……あの、私の耳はあんまりジロジロ見ないでください隣のお客様」
「って事だ。依頼を見にいこうぜナイトのにーちゃん」
「お、おう」
俺達は受付嬢リリのジト目に晒されながら、依頼書が張ってある掲示板へと向かった。




