終焉の始まり (オワリノハジマリ)
初の投稿ですので少しでも楽しめるような作品を描けて行けたらなと思っておりますので宜しくお願いします。
~プロローグ~
見たこともない光景が今、目前に広がっている……これは映画なのだろうか? それとも映画の世界に放り込まれた?
いや、これは夢かもしれない――そうだ! きっと夢だ、なら早くこの物語をお終いにして醒めてしまおう。
死んだ人間が蘇り、生者を喰らう。
腕に噛みつき、足に噛みつき、首筋にも牙の如くかつてソレも人間であったろう者共が群がり肉を引き裂き鮮血がほとばしる。
悲鳴をあげるが……その声は虚しくも死んだ者に居場所を教えるメッセージの様に作用している。
――それはまるで『終焉』――。
その様を学校の屋上から見下ろしていた。
「こ、これは一体何の冗談なんだ」
少年はポツリと一人小さく呟く
「屋上に来たのは間違いだったかもしれない……ここにアレが来てしまえば俺もアレの様になるんだよね……」
「一体、何がどうなっているってんだよ!?」
~5時間前~
「なぁ、きさらぎぃ~」
「な、なんだよ峰島」
「暇だかんさー放課後また、屋上でコーヒーでも飲もうぜー!」
ボサボサ頭で気品の欠片すら垣間見る隙間もないほどにだらだらした雰囲気にお調子者です! と言わんばかりの軽い口調が目立つ……。
かれこれ長い付き合いになるコイツなのだが……今日も今日とて、相変わらずマイペースな奴だ。
「分かったよ、んじゃいつもの買っておいてな峰島」
「うっし! まかせとけ」
「って言ってもまだ放課後まで5時間近くあるんだけどな……」
「うげ! 余計なこと言うなよ! 折角未来の楽しみに逃避してたのによ~」
「きさらぎぃ~ぜってーお前は要らんこと言うよな~」
「ばーか、無駄口叩いてないでとっとと次の授業準備いくぞ!」
「おう! 何処までもついてくぜ相棒!」
~終焉の始まり30分前~
「なぁ、きさらぎぃ」
「なんだよ」
「屋上からだと見えにくいけど、あの女の子さっきから足引き摺ってるっぽくないか?」
「確かに見えなくもないけど気にすることか?」
「わりっ、おれっちあの娘助けて来るわすぐ戻る!」
「あっ! お……ってまぁ、いいか」
そして、峰島がその"娘"を助けている風な姿を僕は緩やかな時と共に見ていた。
非常に平和極まりない日常、普通の高校生を全うしている。
意外とお節介焼きな我が友人ではあるが、恐らく下心はあるのだろうなと常々思う。
が、何故か今回は異様に引っ掛かる……第六感? 直感? なんと言えばいいだろうか。
屋上からではあるが、彼女に変化があるのが伺えた。
突如として体をゆらりゆらりと左右に揺らし始めた。
足を痛めている人物が立ったまま体を左右に振るだろうか……?
ましてや体を揺らすのであれば重心は怪我をしているであろう足にも負担となるのではないか――。
「ん~……何か引っ掛かるよなぁ〜」
屋上から普通に眺めているだけだ。普段ならその程度の変化などに違和感を覚えもしないはずだが……。
最初は足を引き摺っていたにも関わらず、突然にして動きの変化を起こした彼女にどうしても本能的にではあるのだが危険だと感じたのだ。
具体的に何が危険で、どう言った観点から? と、詰問されると流石に細かくは説明はできない……が。
すかさず僕は峰島に電話をかける、この押さえようのない胸騒ぎを伝えるために。
「おーい峰島、喉乾いてるしはーやーくー! コーヒー買ってこいよなぁ〜もう待てん!」
「いや、おま……屋上からこの峰島さんの勇姿をだなぁ……」
「むーりー!」
自分たちの性格は言うなれば正反対だが……なんだかんだで友達想いの峰島は俺のワガママを優先してくれる筈だ。
「あー、もう!……わーった、わーったよ! すぐにそちらに向かいますよーだ!」
そして、峰島は素直にその場から離れるのだった。
峰島が退いた後に5人組の女子が心配そうに集まった時だ……戦慄が走る。
今まで見たこともない量の鮮血が舞っていた……きっと首筋にでも噛みついたのだろうか……。
瞬く間に残り4人は散り散りに逃げ惑う――。
「は? な、何が起きてるんだ?」
屋上にまで響き渡る悲鳴は悪循環となり野次馬達を寄せるトリガーとなる。たちまち異常なその光景に無駄な好奇心を持った生徒達は群がり始める。
そして、連鎖は続く――先ほどまで倒れていた女子はムクリと立ち上がり野次馬の1人にすがり付き――。
新たな鮮血が宙に舞う、 更にまた1人また1人と負傷者が立ち上がり肉を求める様にのたうち回る。
「な、なんだ――これ」
誰かに語る訳でもなく、自然とそんな言葉が漏れ出ていた。
呆気に取られていると豪快な音を立てて屋上のドアが開け放たれ、思わずビクリ! と、身体が小さく悲鳴を上げた。
「な、なんだよぅ! そんなにビビるなよー」
「と、所でさぁー……峰島が立ち去ったすぐ後に凄いことになってんだけど、この光景をどう見るべきだと思う?」
思わず、変な口調になった僕をケタケタと峰島は笑いながら近寄ってくる。
そして、峰島も屋上からの光景を見て現状の異常さに気がついたようだ。
「なぁ、これからどうする? 峰島」
焦る筈の状態にも関わらず、自然とそんなことを言っていた。
「いや、どうするもなにも……これマジなわけ?うそ……だろ? まるで、ゾンビじゃ……」
流石に、血しぶきが舞う現状+負傷者が蘇る? 様な現象が今起きているのだ。そのネーミングはきっとピッタリだ。
最悪なことに――
「とりあえず、生存者で結集して学校から抜け出すか何か考えるぞ! ボサッとすんな峰島!」
馬鹿げたことを呟こうとした峰島の言葉をすかさず妨害するのだった。万が一にしても、そんなことはありえないのだから、ゾンビと断定させる言葉をこれ以上言わせるわけにはいかない。
「えっ……あっ、おう」
「現段階なら校舎内まではアイツらは侵入してない! 侵入するまでに――ってもう1人は校舎内に侵入しやがったか」
「とにかく時間がない! 早く仲間を勧誘するぞ! こんな糞みたいな日常に野郎二人でどうこうするなんて無理だろ?」
「あっ、そうだな! よ、よし、んじゃあ飛ばしていこうぜ! きさらぎぃ~」
引きつった笑顔と震え混じりの声で峰島はなんとか現状を保っている。
正直言って自分が何故ここまで冷静に対応できるのかなんて分からない。
でも、実際にこんなことになってしまうと焦りよりも冷静に行動を起こすことを僕は考えるみたいだ。
「はらぁくくれよ……」
「ったりめーだ! ついてくぜ!」
なにもかもが狂った……まさに終焉だ。
しかし、生存者にとっては始まりと言えるのかも知れない、生存者同士で集まり連携しなければすぐに生ける人々の肉を引き裂き喰らう者へと変貌してしまうだろう。
さて、勧誘をしていこう……それこそこのぶっ壊れた日常から少しでも日常を蘇らせる為に。
~終焉の始まり(オワリノハジマリ) END To be continued
表現力や仲間同士の兼ね合いなど色々な部分で不恰好ではありますが最初の一発目としてプロローグを書きました。不慣れではありますが定期的に更新できればと思っています。
それではまた、次の話にてお会い致しましょう!!