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139話

 それから一週間。練度が上がった拓郎に刺激される形で他の生徒&教師陣も実力をメキメキとつけた。生徒達の中にはレベルが1つ上がる人も多数出て来た。教師陣はレベルこそ上がらないが、魔法に関する知識、そして魔法の運用の腕は確実に上達していた。もし教師陣が魔法が成長する年代であったのなら、確実に1レベルは上がっていただろう。


 そして本日は再びテストが行われる。強もバナナボートに生徒達は揺られ、ふり落とされる。その光景を拓郎は海岸沿いで眺めていた──この日のテストをもって、合宿の訓練は終了を宣言された。残り数値には自由に遊び、休むことで二学期に向けての訓練再開した時に万全の体調で迎えられるようにするためである。


「おー、今度も派手に取んだなー」「いや、そんな可愛い話じゃないだろ!?」


 拓郎の言葉に、生徒のひとりから突っ込みが入る。確かに飛んだ距離が10メートルを超えている以上、派手に飛んだなーなどと表現するのはちょっとかわいいでは済まない話ではある。だが、大半の生徒は着水する前に防御魔法を張っており、張れなかった人も魔女3人がさりげなくカバーしているため怪我人は一切出ていない。


「ちくしょー……また振り落とされた」「どうしても、あの角度から魔法が飛んでくると防ぎきれねえ。もっと訓練しないといけないって事か」「先生たち容赦ないけど、これが出来ないと先に行けないって事なんだよね」


 などと、次々とバナナボートから振り落とされて海水まみれになった生徒達が上がって来る。ぼやきつつも、自分自身の問題点を考え、今後はどういう訓練を積むべきかと言った事を口に出す事で考えをまとめようとしている。そんな彼らの後ろで、またまた宙を飛ぶ生徒達。そんな光景がテストが終わるまで繰り返された。


「はーい、皆お疲れ様。皆は真面目に頑張った事は私達がちゃんとわかっているからね。この後は、日本に帰るまでに体をしっかりと休めてできる限り魔法を使わず過ごしましょう。魔法を使わない、人に迷惑をかけないならできる限りの要望には応えるわ。スイカ割りや花火の用意もあるし、普通のマリンスポーツとしてのバナナボートやモーターボートの貸し出しもするわ!」


 このクレアの言葉で、合宿の残りの時間は目いっぱい遊び倒していい時間となる。当然そうなれば遊ばないという選択肢はない。ましてやここまで共に合宿w通じて仲良くなった生徒&教師陣である。壁などすでにないし、スイカ割りにビーチバレー、バナナボートに水泳など、全ての人が夏のスポーツや遊びに興じる。もちろん拓郎やクレアたち魔女も一緒だ。


「もう少し右!」「ちょっと回りすぎ、ちょっとだけ左!」「良いぞ、そのままゆっくりと前に進め!」「そこで止まれ! 後はしっかり前に棒を振り下ろすだけだ!」


 拓郎はスイカ割りに混じっていた。指示を受けて体を動かし、目の前にある筈のスイカめがけて棒を振り下ろすと──見事に棒がスイカに命中し、スイカを良い感じに割る事が出来た。


「ナイスだ拓郎! これでスイカが食える!」「スイカ割りなんて、って思ったが結構楽しいな」「仲間がいないとつまんない事だからね。でも今は合宿仲間がいるんだ、普段できないことを目一杯やっておかねえと損って奴よ?」


 割ったスイカを、グループになっている7名と共に食べる拓郎。そのスイカはこの夏一美味しかった。スイカの品質もあるが、何よりこうやって大勢と共に遊びながら食べるという状況がおいしさをより高めていたのだのだろう。他にも様々な遊びを共に楽しめば、日没なんかあっという間だ。


 夜は夜で派手なキャンプファイヤを行いながら食事をするという形となった。なお準備は全てクレアたち魔女3人が分担して行っていた。この日一日ぐらいは目いっぱい楽しんでおきなさいという魔女たちからの心遣いだった。バーベキューを食べ、サラダを食べ、思い思いに話を重ねる。


 そんな、今の時代では行う事が難しくなってしまった事を生徒達は教師、魔女を交えて目いっぱい堪能する。そんな楽しい時間はあっという間に過ぎて夜は更け、就寝の時間となる。こんな楽しい時間を残された時間、誰もが目いっぱい堪能した。時間はあっという間に流れ、8月30日を迎える。ついに日本に帰る時がやってきた。


 建てた家は今回は魔女たちが後片付けを行った。自分達が約一月住んでいた家が無くなったことで、寂しさを覚える生徒達は多かったがそれでも帰らなければいけない日がやってきたのだから仕方がない。次々とここに来るときにやってきた例のワンボックスカーに乗り込み座席に座る。


「最終点呼をするわよ、絶対置いてきぼりを出すわけにはいかないからしっかりとねー」


 クレアの言葉に従い、念入りに最終点呼が行われて──誰一人欠ける事も増える事もなく全員がいる事が確認された。クレア達も念入りにチェックを行い、乗り損ねている人間は誰もいないと確認する。


「じゃ、日本に向かって出発! しばらく寝ててねー」


 クレアの一言の後に、拓郎を含む生徒達と教師陣には強烈な眠気が襲ってくる。その眠気を、誰もが素直に受け入れて眠りについた──そして目を覚ます生徒が現れ始めるころ、ワンボックスカーは見慣れた日本の道路を走っていた。


「皆合宿お疲れ様。あと15分位で学園の前に到着するわ。学園に帰ったらまっすぐ家に帰ってしっかり休んでね? 寄り道は今日だけはしちゃだめよ、結構自覚していない疲れってのは残っているものだから。素直に帰ってしっかり休んで、明日一日のんびりと過ごして9月になったらまた会いましょう」


 クレアの言葉に生徒達は全員元気よく返答を返した。合宿は大変ではあったが、誰もが手ごたえを感じ取った上での帰還となるのだ。誰も彼もが笑顔を浮かべていた。


「終わっちゃったねー」「でも、参加できてよかったよ。合宿前と比べて大きく変わったって感じられるし」「俺達を2学期で見る事になる行けなかった連中がかわいそうだな。もういろいろ変わったってパッと見ただけで分かるだろうし」「心身ともに鍛えられたよね、先生たちも含めて」「そうですね、私達も軽く生まれ変わった気分ですよ。立った一月の合宿でこれほどまでに魔法だけでなく体も変わるとは」


 などという会話が交わされるうちに、ワンボックスカーは学園校門に到着する。少しだけ車を中に入れて、生徒達を下ろすクレア。下りた生徒達は背伸びをしたり、一か月ぶりに見る日本の風景に違和感を感じたりしていた。そんな中、教師のひとりが軽く手をたたいて視線を集める。


「では、今日はこれで解散です。今日はクレア先生が言っていた通りまっすぐ家に帰ってしっかり休んでくださいね。9月にお互い元気な姿を見せ合いましょう。お疲れさまでした!」「「「「お疲れさまでした!」」」」


 こうして正式に解散となり、それぞれがそれぞれの家に帰宅した。帰ってきた子供の姿を見て、親は驚きを隠せなかった。無理もない、体は引き締まり、表情は精悍さを増し、頼りになる人間のオーラとでも言うべきものをうっすらとではあったが発するようになっていたのだから。


 その兆候が特に強かったのは雄一の家だろう。雄一が家に帰ってきて出迎えた両親は、息子の雰囲気が合宿前と比べて別物になったことを強く感じ取っていた。そんな両親を見て、雄一は首をかしげる。


「どうした? 俺の顔に何かついているか?」


 この雄一の言葉に、返答したのは父親だ。


「いや、おまえ、良い顔つきになったな。合宿前と比べてかっこよく、大人になったな。それだけじゃないな、雰囲気も違う……相当厳しい訓練をしてきたんだなってのが良く分かるぞ」


 そうして家に上がった雄一は、合宿で何をやったのかを両親に語る。その内容に両親は驚かされっぱなしだったが、同時に自分達の息子がここまでここまで変わった事に対して納得もした。それだけの訓練をみっちりやってくれば、成長するのは当然であると。


「2学期になったらまた魔法レベルの鑑定をする機会が来るわけだが……レベル4になってるかもな」「レベル3になった時も驚きだったが、そんな発言を自然とするぐらいだ。充実した合宿だったんだな」「ああ、正直来年も行きたいぐらいだが……次の夏が来る前に時間切れになっちまうからどうしようもねえ。でも、それぐらい言ってよかったと言える内容だった」


 雄一の表情を見て、両親は充実した時間を過ごす事が出来たんだなとうれしくなった。充実した時間を送るという物は存外に難しい。しかし、自分の子供はその充実した時間をこうして過ごす事が出来る時間をくれた魔女の先生たちに対して内心で感謝の意を抱くのであった。

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